日本ビクターは2009年1月、業務用機器のブランド名をJVCに統一するとともに、初のメモリーカードカメラレコーダーのハンディタイプGY-HM100を発表した。2009 NAB Showに合わせて、コンパクトショルダータイプのGY-HM700を発表し、2機種構成のラインアップになった。いずれもSDHCカードスロットを持ち、QuickTimeファイルフォーマットかMP4ファイルフォーマットで記録できる。さらに、GY-HM700では、昨年のInter BEE 2008で発表したSxSメモリーレコーダーKA-MR100Gを併用することで、SDHCカード、SxSカードのどちらにも記録できるカメラシステムとなった。GY-HM100の発売から4カ月、GY-HM700の発売から2カ月が過ぎた現在、もう一度コンセプトと特徴を整理するべく、日本ビクター八王子工場を訪ねた。

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Mac用だけではない業務用カメラGY-HMシリーズ

Inter BEE 2008で久しぶりにHDVカメラレコーダーの出展を行った日本ビクターだったが、そのブースにはSxSメモリーレコーダーKA-MR100Gが置かれるととともに、GY-HM100のプロトタイプモデルのモックアップが「機能詳細は近日発表予定」として参考出展されていた。日本ビクターのデジタルイメージング事業部イメージング統括部クリエーション技術部で、メモリーカードカメラ発売に向けた製品コンセプトを検討してきた船本真吾氏は、(1)1080iへの対応、(2)ノンリニア編集との親和性、(3)記録メディアの3つをコンセプトに挙げ、次のように話した。

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クリエーション技術部 船本真吾氏

「これまでは720pで製品展開をしてきましたが、日本での展開を考慮すれば1080iにする必要がありました。さらに、収録後に必要となる編集はノンリニア編集が中心となっていることから、ノンリニア編集システムで早期に対応出来ないということでは、そこでカメラの価値が決まってしまうと言っても過言ではありません。それであれば、ノンリニア編集で使用されるファイルフォーマットで記録できるカメラを作ろうと考えました。メディアについては、お客様から『ビクターがメディアチェンジをする時は何のメディアを採用するのか』とずいぶん問い合わせをいただきました。当社の取り組みとして、『Affordable(アフォーダブル=手頃な)』というものがありますので、簡単に、どこでも手に入れやすく業務用途が可能なものをと考えSDHCカードを採用しました。またハイエンドのお客様には高信頼性/高速転送というニーズに合い、PCとの親和性が高いSxSメモリーカードをSONYさんとのアライアンスで採用しました」

GY-HM100の発表時に、アップルのFinal Cut Proで扱いやすいQuickTimeファイルフォーマットを採用したと発表したこともあって、Mac用の業務用カメラとしての訴求は行なえましたが、反面Windowsユーザー様への訴求が弱くなってしまったと船本氏は言う。

「当社の業務用ユーザーの編集環境は、Final Cut Proが多数を占めていることから、まずFinal Cut Proとの親和性を考えました。しかし、編集環境はWinもあります。そこで、テープレスカムコーダーにおける次世代のスタンダードとして、多くの分野で採用が進んでいますMP4ファイルフォーマットを搭載し、このフォーマットで記録すれば、Final Cut ProはもちろんアドビのPremiere Pro、トムソン・カノープスのEDIUS、アビットのMedia Composerなどでも、ネイティブなファイルベースの編集が可能になります」

「.mp4」とは異なる「MP4ファイルフォーマット」

GY-HMシリーズの特徴に、ファイルフォーマットをQuickTime for Final Cut ProかMP4かを選択できることが挙げられる。Mac/Winいずれの環境でも編集できるように配慮したことは上で述べたが、「MP4ファイルフォーマット」という表記が誤解を生み出してしまっていることは否めない。これは、QuickTimeファイルフォーマットで使用されるISO標準MPEG4記録方式が「.mp4」拡張子を使用していることに因るものだが、.mp4ファイルとMP4ファイルフォーマットは全く別物なのだ。

「MP4ファイルフォーマットは、映像をMPEG-2 Long GOPで、音声をリニアPCM 2ch 48kHz/16bitで記録する方式で SxSに記録されたMP4ファイルは、XDCAM EXで採用されているファイル形式と互換があります。ノンリニア編集システムからはソニーXDCAM EXのファイルとして認識されます。AVC/H.264とは異なるフォーマットです。」(船本氏)

日本ビクターとしても表記が紛らわしいという認識はあるようだが、XDCAM EXファイルフォーマットは、ソニーが商標を持ちライセンスを行っていることもあり、そのままビクターが表記することは出来ないようだ。最近の民生用動画デジタルカメラでは.mp4ファイル(MPEG4やAVC/H.264)でQuickTime記録するものもあるが、MP4ファイルフォーマットは業務用のXDCAM EX記録方式でありまったく異なる物と認識しておこう。

カードスロット:GY-HM700(左)、GY-HM100(右)

ところで、GY-HM700でKA-MR100Gを使用しているユーザーはワールドワイドで約35%、日本で約27%という状況だ。ワールドワイドで多少高めの数字になっているが、これは海外市場でセット販売をしていることが表れているようで、おおむね3~4人に1人はSxSカード記録も併用しているようだ。さて、MP4ファイルフォーマットで記録するときには注意が必要だ。GY-HM700では、SPモードで19Mbpsの720p記録が可能となっている。このビットレートでの720p記録はSxSカードに記録可能な規格として存在しているが、ソニー製品では採用されていないので再生できないという。JVC・ソニー混在で使用する必要がある場合には注意したい。

動作確認済みカードであれば、メーカー混在でも利用可能

SDHCカードは、最低書き込みスピードが保証されたメディア規格であることも、記録メディアとして採用した理由だという。

「市場にあるすべてのカードを検証することはできません。現在、パナソニック、サンディスク、東芝の3社のSDHCカードについては動作確認をしております。この3社であればメーカーを混在させても問題は生じません。メディア容量いっぱいまで大量に収録した場合やメディアをまたぐ場合などについても充分に検証していますので、安心して使って欲しいです」(船本氏)

ファームウェアアップデートでSDHC Class10カードにも対応。写真はサンディスク製

動作確認メーカーのSDHCカードを使用して、カメラ側でフォーマットし、動画記録だけに利用していれば、まず問題なく動作するという。しかし、PCでファイルを読み書きして不可視ファイルなどが書き込まれると、細かいフラグメンテーション(断片化)が発生してしまうので、実際に記録できる時間は短くなる。これを回避するには、カメラ側でメディアを再フォーマットする必要があるそうだ。

なお、最近発売されたClass10カードにも、カメラ本体のファームウェアバージョンアップをすることにより対応が可能のようだ。

2009年9月14日追記:Class10対応のアップデートソフトウェアはWebからダウンロードできる。
GY-HM100用アップデートソフトウェアのダウンロードはこちら
GY-HM700用アップデートソフトウェアのダウンロードはこちら
GY-HM100は2009年9月14日から、GY-HM700は2009年9月10日からバージョンアップ対応版の出荷が開始されている。

1/3型コンパクトショルダー市場の拡大を目指す

プロAVソリューション統括部商品企画の常田貴夫氏

ビジネスソリューション事業部プロAVソリューション統括部商品企画の常田貴夫氏によると、今回『JVC』にブランドを統一したことは、再度、国内製品販売戦略へのメリットとともに、開発面においてもメリットが大きかったようだ。民生用に比べて業界規模が限られる業務用機器において、2つのブランドで製品を作るよりも1つのブランドで展開できることは、製品開発コストを抑えるとともに、チューニング部分に注力できるということでもある。

クリエーション技術部の木戸武氏

デジタルイメージング事業部イメージング統括部クリエーション技術部の木戸武氏は、「従来のHDV製品を開発する段階で、目隠しでもスイッチ形状で機能を分かるようにしたり作りこんできましたので、今回のGY-HM700でも、従来のHDV製品の使い勝手を踏襲しています。新たな取り組みとしては、ビューファインダー、液晶モニターを開発しました。従来の液晶モニターは3.5型だったのですが、今回は4.3型WVGA解像度のものにし、ビューファインダーもLCOS(反射型液晶パネル)を使用したWVGA解像度のものへと変更しました。これによりフォーカシングの確認がしやすくなりました。液晶モニターとビューファインダーでの色見の違いをなくすようにかなりチューニングも行っています」と語った。

クリエーション技術部の後町修氏

同技術部の後町修氏は、ハンディタイプのGY-HM100は、GY-HM700の姉妹機としていかにコンパクトで高画質な業務用カメラレコーダーに仕上げるかという取り組みでもあったと明かした。

「当初はフォーカス、ズーム、アイリスをレンズ部分に集中させるように検討したのですが、前方が長くなり手持ちバランスが悪くなることから、アイリスを後方へと移動させています。高画質という部分にはこだわり、1/4型CCDでありながらもHDの解像感や色再現といった部分に注力して開発しました」

1/3型センサーを使用したコンパクトショルダータイプのカメラは、最近になって他社からも登場してきたが、2/3型に比べるとレンズラインアップは少ない。日本ビクターは1/2型レンズや2/3型レンズ用マウントコンバーターを用意することで、市場にある豊富なバヨネットレンズも活用できるようにしている。木戸氏は、「他社からも1/3型センサーのレンズ交換方式カメラが登場したことで、今後レンズラインアップが増えるのではないかと歓迎しています。当社は、今後も1/3型コンパクトショルダータイプの開発を継続して、市場拡大を図っていきます」と話した。

液晶モニター:GY-HM700(左)、GY-HM100(右)

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