ATOMOSブースの見どころやSHOGUNについて語るATOMOS株式会社 社長、戒能正純氏

(※個人の役職名は取材当時の名称。2017年8月末、戒能氏はATOMOS株式会社 代表取締役社長を退任)

いよいよSHOGUNが見参する!

今年のInterBEEの見どころを振り返ると、ATOMOSの4K収録対応ポータブルレコーダー「SHOGUN」の展示が大変大きなトピックだったのではないだろうか。今、スチルカメラ業界で話題のソニーα7SとSHOGUNを組み合わせれば4Kの収録が実現できるとあって、ATOMOSブースに展示されていたSHOGUNのデモ機の周りには多くの人が集まって注目をしていた。そこで話題の製品をリリースし続けているATOMOSの日本法人の代表、戒能正純氏にInterBEEの会場でATOMOSブースの展示のポイントやSHOGUNの魅力などについて話を聞いてみた。

池上通信機のHDK-5500とSAMURAI BLADEの組み合わせに注目

――今年のATOMOSブースは昨年のInterBEEから2倍以上広くなっているのには驚きました。そこに展示会場で一番カメラの台数があるブースと思うほどたくさんのカメラとレコーダーが組み合わされて展示されていますね。

戒能氏:ブースの展示テーブルには、24台のカメラとATOMOSレコーダーの組み合わせを展示しています。話題になっている最新のカメラは、ほぼ全てそろっていると言って良いと思います。さらに、ブース内にはREDのEPICと池上通信機のカメラも1台ずつ展示していて、全部で26台になります。

――池上通信機のカメラとの組み合わせは珍しい展示ですね。

戒能氏:池上通信機の高感度カメラHDK-5500とSAMURAI BLADEの組み合わせは今注目の組み合わせです。池上通信機というとスタジオカメラのイメージが強いのですが、HDK-5500からSAMURAI BLADEで認識できるレックトリガーをSDI上に出力できるようになりました。これにより、池上通信機のカメラでRECボタンを押すとSAMURAI BLADEで同期して映像収録することができます。HDK-5500は、その高感度性能から外で使いたいという要望が多いと伺っています。そこで、VバッテリーとSAMURAI BLADEがあればフィールドでも使えるようになるというわけです。

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池上通信機のHDK-5500とSAMURAI BLADEの組み合わせのデモが行われていた。B4レンズのレックボタンを押すと連動してSAMURAI BLADEが記録する様子が見られた

戒能氏:もう1つは、以前からアピールしている組み合わせなのですが、REDのEPICとSAMURAI BLADEとの組み合わせです。REDの場合は、レックトリガーに加え、RED RAWで収録するファイル名もSDIに乗っていて、RED RAWのファイル名と同じファイル名でProResの記録ができます。つまり、タイムコードだけでなく、ファイル名も同一で記録できるのです。本線のRED RAWとProResの違いは、拡張子が.r3dか.movだけという状態です。収録後はProResでオフライン編集をして、最終的にはRED RAWに切り替えてフィニッシングということができます。

また、実際の現場では、RED RAWだと撮影した直後にプレビューしたり再生させるのが難しいので、同時にATOMOSレコーダーでProRes収録して、すぐにProRes再生をしてクライアントさんに確認頂くといった再生機としても使えます。フルHDのProResでも充分画質が良いので、クライアントがOKを出したものを、その場でProResファイルをコピーしてお渡しするケースも多いみたいです。

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REDのEPICとSAMURAI BLADEとの組み合わせのデモ。ファイル名が連動するというのが特徴だ

――今年のブースの展示のトピックはなんといってもSHOGUNだと思うのですが、SHOGUNの発売日はいつぐらいになりそうですか?

戒能氏:ブースに展示されているSHOGUNはベータ版のファームウェアです。起動をしてモニタリングはできますが、まだ収録はできない状態です。ただ、工場の生産は開始していて、間もなく工場から出荷を開始する予定になっています。ファームウェアがフィックスすれば、最初の便が12月半ばには日本にも届くのではないかと思われます。

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発売が待ち遠しいSHOGUNとα7Sを組み合わせた展示も行われていた

――ソニーのL型バッテリーを装着し、カメラやSHOGUNへの電源供給を行うことができるPOWER STATIONという新製品も展示されましたね。

戒能氏:NINJA BLADEやSAMURAI BLADEなどの既存のATOMOS製レコーダーは、バッテリーを2つ搭載でき、交互に消費、交換することで連続稼働させることができましたが、SHOGUNではバッテリーは1台しか搭載できません。POWER STATIONは、SHOGUNの電源供給を補完する拡張バッテリーとしての機能に加え、同時にカメラへの電源供給も実現しました。

ソニー(α7S)、パナソニック(GH4)、キヤノン(EOS 5D Mark III)、ニコン(D800)各社のバッテリー形状をしたダミーカプラーを同梱しており、これらのカメラもバッテリー交換による連続駆動を実現します。ですので特にSHOGUN専用というわけではなく、カメラの拡張バッテリーとして使用できるもので、撮りっぱなしにするような撮影に最適の商品です。三脚からカメラボディを外して、バッテリー交換という手間を省いて簡単に使い続けることができるようになるというのも特徴だと思います。IBCで初めて展示しましたが、国内では初展示ですね。来年の1月ぐらいに発売を予定しています。

SAMURAI BLADEやNINJA BLADEにもファームウェアのアップで拡大フォーカス機能を追加搭載する予定あり

――ATOMOS初代のレコーダー製品「NINJA」が発売されてから4年が経過しようとしています。ユーザーからの反響でもっとも多いカメラとレコーダーの組み合わせなど、どのあたりが多かったでしょうか?

戒能氏:まずATOMOSが最初にリリースしたレコーダー「NINJA」のビデオ入力はHDMIでした。HDMIでProRes記録できる機材というのは当時凄く珍しくて、そこで大変な反響を呼びました。そして、2013年4月30日に公開されたキヤノンのEOS 5D Mark IIIのファームウェアのアップグレードでクリーンなHDMIが出力できるようにになった際に、NINJAシリーズが一気に注目を集めました。

それまではキヤノンのカメラのHDMI出力にはメニューが載ったり、枠に黒が乗ってしまったりして外部収録用としては使えませんでした。それが、クリーンアウトが出るようになり、続けてレックトリガー、タイムコードも出る様になり、どんどん外部収録機との相性が良くなり、ATOMOSの製品と組み合わせて使うユーザーさんが一気に増えました。

そして2014年になり、ソニーのα7Sが登場。こちらは最初からHDMIにタイムコードとレックトリガーが搭載されています。話が昔に戻りますが、元々HDMI上にタイムコードを載せるアイデアを最初に実現したのはソニーで、2011年に登場したNEX-FS100などのNXCAMが最初でした。この当時は初代NINJA側が対応できていませんでしたが、NINJA2以降は全て対応しています。

そして、今回のInterBEEの開催初日にパナソニックからGH4のファームウェアがアップデートの計画を発表しました。12月にリリースされる新ファームウェアでは、レックトリガーとタイムコードがHDMI上に乗るように改善されるそうです。こちらも注目ですね。

――ATOMOSの製品はレコーダーというカテゴリですが、モニタとしても評価されていますね。

戒能氏:IPS液晶を搭載し、搭載モニタの品質を向上させたSAMURAI BLADEが発売されたのが昨年の夏。同じ液晶を搭載したNINJA BLADEが発売されたのは今年の4月ですが、まだモニタとしても使えるという市場認知はまだ少ないようです。

ですので、InterBEEのような展示会では是非「パネルを見てほしい」と思っています。かなり視野角も広く、明るくて、色も正しい。「モニタとしても使えるよ」ということをアピールをしています。SHOGUNには拡大フォーカス機能が搭載される予定ですが、実はSAMURAI BLADEやNINJA BLADEにも拡大フォーカス機能を載せる計画があります。たぶん、来年ぐらいにファームウェアのバージョンアップでの対応になると思うのですが、現行BLADEユーザーの皆様も楽しみにして頂けたらと思います。

――近日中にSHOGUNのリリースが控えています。今一度、SHOGUNのアピールをお願いします。

戒能氏:映像の収録はカメラボディ内部のメディアに記録するのが普通で、ATOMOS製の外付けレコーダーを使うのは、「Apple ProResで記録したい」というポストプロダクションを意識したプロの方が使うものでした。それがGH4やα7Sの登場で大きく変わろうとしています。GH4で10bitで撮りたいと思ったら外付けのレコーダーが絶対必要です。α7Sで4Kを収録するなら、こちらも外付けレコーダーが必須です。

SHOGUNは、カメラ単体ではできない収録を実現する、お客様にとって必須のレコーダーとして認知される初めてのケースだと思います。今まで弊社の製品を知らなかった人も、ぜひ知っていただきたいですし、これまでのお客さんにもモニタ機能などを含めてより性能が上がってきますので、ぜひSHOGUNが発売されましたらお手にとって試していただければと思います。そういう機会も増やしたいと思ってもいますので、ご期待ください。

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。