土持幸三の映像制作101

txt:土持幸三 構成:編集部

どうやればプロのような映像が撮れますか?

映像ワークショップなどで「どうやればプロのような映像が撮れますか?」という究極の質問をされることがある。明確な答えなどないのはわかっているが、「三脚を使うこと」と答えるようにしている。三脚を使う事によって安定した映像が撮影できるからだ。少なくとも三脚を使えば手持ちカメラで撮った、見ているだけで酔ってしまいそうな映像はありえない。初心者でも三脚を使わない人は意外と多い。

三脚と映像は切っても切れない歴史を共有してきたと言ってよい。初期の写真の時代から、感度が悪く長時間露光が必要だったフィルム等の感材と、巨大で重いカメラを支えるために三脚が必要だったからだ。時代が進み、カメラは小さくなり三脚も小さくなった。しかも昨今はジンバルやスタビライザーが日進月歩で進化し、ステディカムのような大掛かりで専用のオペレーターが必要だったものも、場合によっては誰でも扱えて安定した映像が撮れ、なおかつ個人で購入可能なものも登場してきた。

しかし、いくらジンバル等が進化しても、きちんと正しく使用した三脚で撮影した映像の安定性にはかなわない。なぜこんな事を言うのか不思議に思われるかもしれないが、最近プロも含めて三脚を使用したがらない人が随分増えた、と感じているからである。

上で書いたようにジンバルやスタビライザーの進化もあるが、ビデオカメラ自体に手振れ補正が付き、それもまた進化して手持ちでもブレが少なくなったこと、そして何より携帯電話で写真や動画を撮影する機会が増えた事も理由としてあげられるのではないかと思う。前回書いた生田緑地での「こども映像教室」でも子供達は三脚を使いたがらなかった。基本的な事を学んで欲しいので、特別な理由がない限り三脚を使って撮影してもらっているが、ついつい手持ちで撮影しようとしてしまう。三脚のせいではないが、子供達が撮影する映像もアップが多い。どうも携帯電話で撮影する機会が多いのとYouTuberの映像を憧れて見ているのも原因ではないかと思っている。

「生田緑地こども映画教室制作」作品の一つ
A班「せいれいと石になった子どもたち」

三脚を選択する方法を聞かれることもあるので、説明しておく。例外もあるが三脚は脚と雲台の組み合わせがあって、雲台には大まかにスチル用とビデオ用がある。廉価な三脚はこの脚と雲台が一体化されているものが多く、高価なものは脚と雲台の組み合わせが変えられるようになっている。ビデオ用の脚はさらにボール径というビデオ雲台を載せる部分に大小が合って、径が大きな雲台を載せ、大型のビデオカメラに対応できるようになっている。スチル用雲台は縦に使う事が可能になっていて3WAY雲台や自由雲台などがある。

160517_tsuchimochi_002

スチル用の自由雲台

三脚を選ぶとき、まずは載せるカメラ・レンズを合わせた重さを知らなければならない。三脚の商品説明で「最大搭載重量」と書いてある部分が何キロになっているか、それによってその三脚が何キロまでのものを載せた状態で正常に動かすことが出来るかがわかる。ビデオ雲台の最大の利点であるパンやティルトはこの数字以内の重さでスムーズに動くようになっている。またパンやティルトが思い通りのスムーズさで動くということが値段にはねかえってくる。こればっかりは体験してみないとわからないが、高価なものは本当にスムーズに動いてスッと止まる。正直言って一万円以下のビデオ三脚でスムーズにパンやティルトを行う事は僕にとっては至難の業だ。

160517_tsuchimochi_001

カメラの重さによって三脚を選ぶ

ただ、廉価な三脚であってもキチンと最大搭載重量内であれば充分に使える。要するに、できるだけパンやティルトを使わず三脚を固定して撮影すればよい。この状態での撮影であれば、よほどの悪条件でない限り高価な三脚と廉価な三脚の違いはないと言えるし、ましては視聴者には三脚の違いは全くわからないハズだ。カメラを構えても、すぐ脚を蹴飛ばしてしまうので子供達に三脚の使い方を学んでもらうのは至難の業だが皆さんも是非、三脚の良さを再確認してみてはいかがだろうか。

WRITER PROFILE

土持幸三

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。