土持幸三の映像制作101

txt:土持幸三 構成:編集部

出演から編集まで行う壮大な映像授業

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貸し出す前に再度カメラの使い方を確認

前回のコラムで書いた、僕が通う川崎市の小学校創立60周年記念式典に向けて、2年にわたり地域の方々に小学校創立当時の様子や街の移り変わり、未来への展望を小学校5年生がグループをつくり、出演、撮影、編集をするという、壮大な授業が行われたので、今回はその時の様子を書きたい。

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パン屋さんでインタビュー

撮影は放課後撮影のグループも含め約2日間、初日は丸一日映像授業ということで、各クラス9つほどあるグループが午前中4ヶ所、午後4ヶ所、放課後1ヶ所のインタビュー現場に向かい撮影を行った。インタビュー現場はインタビュイーの自宅やお店、学校だったりと様々で移動に時間がかかる場所もあった。

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机の上には20台以上のカメラが並ぶ

前回、各現場に2台のカメラを1セットとして据え置くことにしたと書いたが、1台はマイクケーブルが届く距離まで出演者に近づく必要があることと、確実に撮影することが求められるため、3台のカメラを1セットとして各現場に据え置き、クラスが違うグループが、その据え置いたカメラを使い、同じインタビュイーに、なるべく他のグループとは違う質問をしていく。JVCケンウッドさんのご厚意で、普段よりも多い20台近くのカメラをお借りした。それでも足りなかったので僕も自前のカメラを4台、マイク4本と三脚を持ち込んだ。

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先生を相手にインタビューの練習

インタビュイー1人に対して3グループがインタビューするので、初日に撮影に行かない子供たちは、僕や先生相手にインタビューの練習を行った。質問は考えて紙に書いているのだが、それを単純に質問していくだけでは、インタビューとは言えないので、相手が答えた内容に対してさらに質問していくなど、子供にしてみれば非常に高度なインタビューに先生方も重きを置いていたようで、インタビュアーの子供達は真剣に練習をしていた。質問をすると同時にマイクを相手に向けないといけないが、その動作が緊張のためかなかなかできず、話している人とマイクの向きが別になり微笑ましくて、ついつい笑ってしまった。

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撮影した映像をみんなでチェック

インタビュー撮影は意外と順調に進んだようだった。僕は初日、インタビューに行かない子供達の指導を行っていたので、現場には先生とボランティアの方々が付き添って撮影に臨んだのだが、練習の成果もあり概ね順調だったらしい。早く帰ってきたグループの映像を子供達と一緒に観たが、きちんと受け答えができて、音もきれいに入っていた。

少々難があったのはインタビュー現場に行く前の前振り。これは各グループが自由に考えて良かったので、奇想天外なストーリーも多く、学校に遅刻しそうで一生懸命走っていたら、いつの間にかインタビュイーのお店に入ってしまったとか、タイムスリップ、ニュース番組風や定番の同ポジ撮影による瞬間移動など、個性が強く出るシーンが多かった。

インタビューより緊張感が放たれるためか、カメラを乱暴にパンやチルトさせたり逆光だったり、音が小さかったりという問題が多く、グループ内で盛り上がり撮影したものだからあまり言わないようにしているが、後でこっそり再撮影しているグループは必ず毎年でてくる。

今年からこの小学校はパソコン室のパソコン16台に動画編集ソフトVegas Proを導入してくださった。今までムービーメーカーを使用してきたので、比べると編集の選択肢は増え、特に音の修正能力は格段に上がるのでとてもありがたい。子供達のパソコン操作能力は学校によって差があるが、必ずしも年齢は関係ないと感じる。先日伺った中学校よりも、この小学校の子供達の方が操作に馴れているのではないかと感じた。自分達で企画し、学校から飛び出し、出演、撮影、編集までこなす現代の小学生は、なんと頼もしいものだと感じ入る映像授業となった。

WRITER PROFILE

土持幸三

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。