txt:岡英史 構成:編集部

ブランドが育つということ

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Libecから大きな製品が出てきた。大きいと言っても製品そのものの質量のことではない。ターニングポイントとしてその存在感がでかいということだ。平和精機というよりもいまやLibecと言うブランドがしっくりくる同社。色々と満足できる製品をリリースしているLibecだが、何か物足りなく感じるのは筆者だけじゃないはず。せっかく小型軽量の良い三脚とヘッドがあるのだからもう少しコンパクトになっても良いんじゃないだろうか?そうだ一脚を是非作ってもらいたい!と思っていたところにこんなリリースが!今回は、Libec新製品を2つを紹介したい。

自立運用設計のビデオ用モノポッド「HFMP」

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この高さでも安定感があるのが最大のウリ。最大で約2m、最小で約70cm強

昨年のIBCで発表され、各方面から注目された。ただ昨年のInterBEEまでは正確な事は解らなかった。そしてInterBEEデビュー初日からこの一脚目当てに長蛇の列が三脚メーカーに並ぶという珍事を見ることが出来た。それだけこの製品に期待している方が多いと言うことだ。

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ヘッド部分はALXシリーズと同じくサイドから脱着可能

βバージョンではあるが、実戦も含めて使用してみたが、やはり期待通りに良い感じだ。ただしそれはマンフロット等のビデオモノポッド的な使い方を期待してはいけない。これは一脚と言いながらあくまでも三脚の代わりと言う認識で使うのが正しい。意識的には狭くて三脚を広げられないような場所でもFIXの映像が欲しい、そんな時にはまさにピッタリ!しかし小回り良く小さくまとめるにはいささか不向きかもしれない。それは絶対的な安定性と引き替えに手放したコンパクトさなのでしょうがない事だ。

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業務用ハンドヘルドサイズのカメラなら全く問題なくオペレート可能

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キャリーサイズは中型三脚と長さはほぼ同じ位

しかしそれを除けば一脚を扱い慣れていない方でもとまどい無く使える。何よりも他メーカーのモノポッドと違って一脚を意識することなく振り回すことが出来る。これは既にビデオモノポッドを使ってる方なら一発で理解して頂けるはずだ。またセッティングの速さも特筆出来る。全て畳んだ状態から脚の部分は自身の足を使って蹴り出してセットアップが出来る。更に足のロック&フリーもそのレバーを足で踏み込むだけなのでカメラを被写体にホールドしたままFIXからフリーに移行が出来る。

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フリーとロックは足で簡単に出来る

脚の伸縮は3段で、カメラ高で約75~200cmの高さまで調整が可能。Libecらしくその加工精度は他社のどのモノポッドよりも良い。とは言えHFMPは一脚と言うよりもビデオモノポッドと思った方が良く、スチルでの使用よりもムービーでの使用が使い易い。ある程度大きさ(質量)のあるカメラを載せた方がしっくり来る。最低でもEOS 7D Mark IIに24-105/f4+外部マイク程度の重さがあった方が良い。逆にミラーレスカメラ単体では少々軽すぎて違和感があるかも知れない。ヘッド部分は3/8inchネジなので一般的なフラットヘッドを持つビデオ雲台なら好みの物を装着出来るが、今回装着されているTH-Xのヘッドが相性・バランス共に一番ベストな組合せだ。

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この高さまで伸ばすことが出来る

小型カメラ用三脚「TH-X」

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小型三脚ではあるが三段フルに伸ばせば、大概のカメラマンならハイアングルになる

HFMPより先行して既に販売しているTH-Xだが、この三脚システムも中々良い。ALX H2セットと比べると一回り小型化されたシステムは軽量化(約3.1kg)もあり、十分にモバイル的な運用も可能なサイズになった。

小型化するにあたり、色々な部分を簡略化とダウンサイジングしており、ボール径は一般的な75mmから65mmと更に小型化された。このサイズは従来の製品であったTHシリーズ(現ディスコン)と同サイズになる。業務用の三脚ではあまりメジャーではないが、フィールドスコープ系の三脚にあるサイズだ。逆に考えればこのサイズでようやく業務用途に耐えられる三脚が出来たと言っても良い。

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プレートの前後量も全く問題ないレベルだ

もちろんプレートは前後移動出来るのでカメラバランスを取るのも簡単だ。既にHFMPでも書いたがプレートはサイドからの脱着式、勿論DUAL HEADなのでスライダーにもそのまま装着することが可能だ。また、このヘッドの大きな特徴としてスライドプレートがマンフロットのプレートと互換性がある事だ。この為、既にマンフロット系の三脚を持っている方ならプレートはそのまま脚の部分だけを交換することが出来る。つまりブライダル等で圧倒的なシェアを持っているマンフロットのモノポッドを持っている方ならカメラセッティングはそのままに、一脚から三脚に載せ替えて運用も可能と言うことだ。とはいえ、従来のLibecプレートとは互換性が無くなってしまうデメリットもある。

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TH-Xが小型ヘッドを搭載したからと言って、耐荷重も小さいかと言えばそんなことはない。現状のALX H2と同じ4kgとなっており、旧ALX-Hより1kg多くなっている。つまりGY-HM660やHXR-NX5R等の業務用ハンドヘルドカメラでも十分にオペレートが可能と言う事になる。その荷重に関してはメーカーHPのチャートを見ればどのカメラが搭載可能か解るはずだ。

ALX-Hとの比較

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手持ちのALX-Hと簡単に比較してみたが、ヘッドまわりは確実に一回り小さい事が解る。脚の部分に関しては大して違いはなく最大に伸ばしてもその差は10cmも無い。しかしスプレッターの部分は開脚度を調整出来ないので絶対的な安定性には注意が必要かも知れない。とは言えこの三脚に中型のENGカメラを載せると言う事はまずあり得ないので、この部分はデメリットには感じない。しかし広げる事で多少の高さ調整が出来る事を考えると、この省略はコストダウンとはいえ少々残念だ。

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スライダーとの組合せ

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三脚との組合せは一般的だが、一脚でも大型のHFMPなら一脚との組合せも実用的だ

Libecと言えばスライダーもラインナップが豊富で、その動きの良さには定評がある。今回組み合わせたのは40cmのS4をセットアップした。TH-Xの受けが65mmでS4が75mmなのでどの位収まるのか試したところ、実用範囲内で全く問題なく装着が可能だった。可動範囲も75mm同士ほどは動かないが、十分に調整範囲内に収まるはずだ。この組合せはワンマンオッペレート時にはコンパクトな感じが丁度良い。もちろんデュアルヘッドを持つ雲台なのでスライダーには何の苦労もなく取り付けが可能だ。逆にS8の様な長めのスライダーは三脚のスプレッターが広がらず安定性に欠けるので1台で使うのは止めた方が良い。

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S4には75mmボールが付属されてるが、TH-Xの65mmに搭載してもこの程度の調整稼働が可能

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TH-Xでこの位片側にオフセットしても問題ないのは当然として、HFMPでも同様な事が出来るのが面白い。但しカメラ重量とのバランスも含めて実験的な物

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HFMPとの相性は見た目以上に良い。但しTH-Xの様にオペレートは単純ではない。どうしても脚の部分の設置感が少ないので片手で本体をしっかり固定し、もう片方でスライダーの台座を掴む感じで操作が必要になる。こうなるとS4との組合せの半分くらいしか性能を使い切れないが、それでもしっかりとスライダーらしい映像を撮る事が出来る。他のモノポッドだと流石にココまでは安定して撮れない。

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この様にスライダーの端を何かの固定物に当てるだけでその安定感は別物になる

モノポッドとスライダーの組合せは、この様にスライダーの片側を何かの固定物に載せてオペレートすることで、脚の部分を自身の足で踏んでおけば確実にベース部分を固定できるため、スライダーワークが三脚に載せたときと同じ感覚で出来る。特にLibec S4を使うならばスライダーから出ている脚が色々な方向にセッティング出来るため、載せる相手側が平坦で無くてもOKだ。爪を引っかけるような感じでもセット出来るのでその汎用性は大きい。実際にこの様なスタイルで収録したが素材的には何も問題はなかった。

総評

TH-Xの耐荷重(カウンターウエイト)は4kgなのであまり軽いカメラだと逆に使いづらい。DSLRの軽いレンズを付けたシステムだと、ヘッド部分をALX-H(耐荷重3kg)に交換した方がより良い場合もある。しかしそれを双方持っているとは限らないので、その場合はカメラの上にLEDライトやモニターを付けて重心位置を上げればウエイトを増したのと同じ効果が得られるので試して欲しい。

また、TH-XとHFMP双方とも標準でバッグが付属されており、HFMP付属のバッグの上方部分にはスポンジの緩衝材が入っている。HFMPの販売はそろそろカウントダウンに入っている。TH-Xは既に販売しているので、出来れば限定で脚部分の2本セット(雲台は1台)というのを作って貰いたい。多分HFMPを使えばそのヘッド部分の良さが確実に解るので専用の脚が欲しくなるが、65mm受けの脚は中々無い。そこで脚のみの単品販売や、最初からセット販売があるとユーザーとしても助かる。

このTH-Xヘッドはマンフロットのプレートと互換性があると書いたが、実験したところマンフロットプレートとTH-Xプレートは完全に互換性があり、どちらがどちらにも確実に取り付けが出来るのを確認出来た。実はTH-Xのプレートの方がネジの可動範囲が広いので、このプレートを使ってマンフロットのベースに取り付けるとバランスを取るのがスムーズになるというメリットもあった事を付け加えておく。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。