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[鍋潤太郎のハリウッドVFX最前線]Vol.79 ハリウッドのVFX現場で生まれたプラグイン「skin work」発案者、山際一吉氏に聞く

2017-04-18 掲載

取材&写真:鍋 潤太郎
画像:ハリウッドのチャイニーズ・シアター。「ハリウッド」を象徴する歴史的映画館である

はじめに

Adobe After Effectsのプラグインとして昨年10月に発売された肌の修正プラグイン「skin work」。このプラグインは、ハリウッドで活躍する日本人Flameアーティストの山際一吉氏によって発案、開発されたというユニークなツールである。そこで今回は、山際一吉氏にインタビューを行い、このプラグインが開発された経緯や今後の展開などについて、お話を伺ってみた。

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山際一吉/Kazuyoshi Yamagiwa
(Lola Visual Effects所属)

プロフィール
東京都出身。2003年に東海大学工学部光画像工学科を卒業後、株式会社スタジオスリーエイトにて映像業界のキャリアをスタート。株式会社デジタルエッグにてFlameアーティストとしてキャリアを重ねた後、2009年にロサンゼルスのLola Visual Effectsに入社。「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」「ヒューゴの不思議な発明」「ソーシャル・ネットワーク」「クラウドアトラス」「ザ・ウォーカー」などの映画作品に携わる。

2013年に日本に帰国し、フォートンを経てフリーランスに。NHKにて「生命大躍進」「精霊の守り人」等の制作に参加。2016年4月に再渡米し、Lola Visual Effectsに復帰。現在はSenior Flame Compositorとして活躍中。

http://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2017/04/nabejun_78_cap10_1.jpg skin workのユーザー・インターフェイスから
※画像をクリックすると拡大します
http://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2017/04/nabejun_78_cap10_2b.jpg skin workのユーザー・インターフェイスから
※画像をクリックすると拡大します
――このプラグインは山際さんご自身のアイデアがベースになっているそうですが、これには何かキッカケがあったのでしょうか?

山際氏:これまでFlameアーティストとして、アメリカ及び日本で様々な作品に携わってきました。作業をする中で「いかに作業時間を節約し、ハイクオリティーなものを制作するか」ということを常に念頭に置いています。現在オートデスクのFlameを使用してVFX制作を行っていますが、Flameはノードベースのソフトウェアですので、段取り良くノードを構成していくことがとても重要です。

最近では、4Kなど高解像度の作品が増えてきており「使用するノード数をいかに少なく、効率良くレンダリングを行うか」ということを、より一層考える機会が多くなってきました。こうした制作現場での経験の中で「簡易化したノードを、プラグインとして開発した方が効率的ではないか」と考え、それがプラグインskin workのアイデアに結実しました。

そこで、ビジネスパートナーでもある友人のFlameアーティストと共同で、このプラグインを実現させるべく、リサーチを開始しました。しかし私達はプログラマーではなく、あくまでもFlameアーティストです。開発そのものに関する技術的な部分は全くの未知数でしたので、様々な方にアドバイスを頂き、クラウドソーシングでプログラマーの方を探し、自分達がやりたいことをお伝えしました。そして手始めに、ユーザー数の多いAfter Effectsのプラグインとして開発を進めることになりました。

――開発にあたっては、どのような点に重点を置かれましたか?

山際氏:Photoshop等の静止画の画像処理技術でも、肌を修正する機能自体は存在していますし、最近ではiPhoneのアプリでも、同様の機能が比較的一般的になりつつあります。

ここで私達が着目したのは、これを動画の中で高いクオリティで実現するという点です。これまで、映像の中で「肌の修正」作業を多数手掛けてきましたが、以前はSDサイズだったものが、最近ではハイビジョンやスーパーハイビジョン等、サイズが大きくなりました。これによって写真並みの高解像度なクオリティが要求される時代に突入しました。アーティストによって肌修正のセットアップやアプローチは異なるものですが、私達なりに長年培った技術を集約し、経験を存分に生かした「肌の質感を残すビューティーワーク」のプラグインに応用しようというのが根底にあります。

Flameアーティストとしての過去の経験から、効率良く肌の補正をしていく方法はある程度熟知しています。その作業工程を、可能な限り少なく、2~3ステップ程度の簡単な操作で実現出来、なおかつレンダリング・スピードも重視したプラグインを目指し、開発を進めました。

直観的に使えるよう、パラメーター数を最低限に抑えている。パラメーターを上から順番に調整していけば、満足いく結果が出せるようにデザインされている
――このプラグインの特色は?

山際氏:ひとことで言うと、独自技術によって「肌のキメを残しつつ、レタッチを実現した」プラグインと言えます。エッジ検出機能により、目や鼻、口などの輪郭をキープしつつ、肌のみを滑らかにすることが可能です。特に、肌のシミやムラを消すのに優れています。肌だけではなく、髪を柔らかい表現にしたい時などにも力を発揮します。

独自開発したエッジ検出機能により目や鼻、口などの輪郭をキープすることが可能

山際氏:現行バージョンのskin workでは、ホクロやニキビを薄くすることは出来ても、完全に消すことが出来ないという課題が残っています。この部分についても現在開発を進めており、アルゴリズム自体はほぼ完成しています。時期バージョンでは、肌のキメを残したまま、ホクロやニキビを消せる機能の追加を予定しています。

skin work独自の技術で、肌理(きめ)を残したレタッチを実現している。高解像度画像でも使用可能
左:Before、右:After
左:Before、右:After
――skin workを日本国内で販売されておられますが、代理店などが存在するのでしょうか?

山際氏:(株)フラッシュバックジャパンから購入が可能です。

※色深度は8bit/10bit/16bit、解像度は8Kにも対応
※対応アプリケーション:Adobe After Effects CC 2014/CC 2015/CC 2015.3/CC 2017
対応OS:Windows 7/8/10またはMac OS 10.9/10.10/10.11となっている
――これまでの導入実績は?

山際氏:おかげさまで日本国内の著名制作会社様、ポストプロダクション様などにご購入頂く実績を残すことが出来ました。また、数多くの個人のアーティストの方にもご購入頂いております。

最近では、元Prologue Films(ロサンゼルス)の佐藤隆之氏から「デフォルトでかなり綺麗になるので驚きました。色味が大きくシフトすることもなく、不自然感もなく自然な印象が保たれています。髪の毛の質感が、とても綺麗になったことにも驚きました」という評価を頂いております。

また、格内俊輔氏(VFXスーパーバイザー)、小林正悟氏(オンラインエディター)、タカハシケンジ氏(VFXアーティスト)、藤本ツトム氏(ビジュアル・プロデューサー)、村田晴氏(デジタルエッグ/オンラインエディター)、山本雅博氏(代官山スタジオ/レタッチャー)などの第一線でご活躍されておられる方々からも高い評価を頂くことが出来ました。

公式サイトで上記にある各氏のユーザー・レビューがご覧頂ける
――今後の展開予定を差し支えのない範囲でお聞かせください。

山際氏:Adobe After Effectsに限らず、Adobe Premiere、オートディスクのFlame、FoundryのNukeなどのソフトウェアのプラグインも開発していく予定です。また、新機能の追加やレンダリングスピードの向上など、様々な側面から仕様の充実を図って行きたいと考えています。また、iPhoneのアプリ開発も視野に入れています。

おわりに

ハリウッドの制作現場のテクニックやアイデアが商品化された例には、NukeやShotgunそしてCineSyncなどがあるが、これが日本人の手によってプライグイン化された例は、まだ少ないのではないだろうか。その意味では、このskin workは稀有な存在であると共に、明るい未来を感じさせられる一品であろう。

筆者もいつか、レンダラー開発とか、例えば映像がリアルタイムで音楽にシンクロする滝廉ダラー、俳優の動きに自動追従する三國連ダラーなどを開発して億万長者になってみたいなぁ…などと妄想を膨らませ半笑いになっている、今日この頃である(おあとがよろしいようで)。

読者プレゼントのお知らせ

PRONEWS読者様限定キャンペーンと致しまして、試用版を使用して頂き2017年5月10日までにskin workのご感想を送って頂いた方の中から抽選で、1名様にライセンスを無料プレゼント致します!詳細および応募方法はコチラ

肌質だけを追求したプラグイン「Skin Work」公式サイト


WRITER PROFILE

鍋潤太郎 ロサンゼルスを拠点とするVFXジャーナリスト。


[ Writer : 鍋潤太郎 ]
[ DATE : 2017-04-18 ]
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