PRONEWS

  • imgABOUT
  • imgTWI
  • imgFB
  • imgYTU

トップ > コラム > ふるいちやすし > [東京Petit-Cine協会]Vol.83 進化する映像の世界で「高画質」を見極めるということ

News

[東京Petit-Cine協会]Vol.83 進化する映像の世界で「高画質」を見極めるということ

2017-05-12 掲載

txt:ふるいちやすし 構成:編集部

沖縄国際映画祭に参加

昨年夏、アメリカ・ワイオミング州で撮影監督を務めたドキュメンタリー作品「TETON~山の声」(浜野安宏監督・出演)が、沖縄国際映画祭に特別参加作品として選ばれ、上映と舞台挨拶に行ってきた。沖縄国際映画祭は昨年の「歴史の時間」(ふるいちやすし:作・監督、遠藤かおる、二宮芽生:主演)に続き、二年連続の参加となるが、今年は撮影監督という立場なので派手なセレモニーなどは遠慮させていただいた。

今年も沖縄の各所で大きな盛り上がりを見せているようで、つくづくいい映画祭だと思う。那覇市の隣の、浦添市てだこホールで行われた「TETON~山の声」の上映で、私も舞台挨拶に立たせていただいたが、興味深かったのは、上映後に行われた座談会。国立公園であり、世界遺産への登録も近いとされている沖縄本島北部のやんばるの森の今後をテーマに、地元の専門家がパネリストとして参加していた。

それぞれの立場から問題提起をしていたが、自然愛好家や学者筋の方々からは保護、観光による地域活性を目指す方々は開発と、それぞれ真逆とも思われる意見が出た。この「TETON~山の声」という作品の中で浜野安宏氏が訴えているのは、保護された自然の中へ、人がドンドン入っていこうというなかなか難しいラインだが、時間と人数の関係もあり、議論というところまではいかなかったのが少し残念だった。

もう一つ残念だったのは、地元での人材育成という観点が語られなかったことだ。確かに観光が栄えればそれなりに産業も雇用も生まれるに違いない。だがやはり映画人としては、これだけの素晴らしいロケーションに恵まれた沖縄から、沖縄のクリエイターが育ってほしいし、作品もドンドン産んでほしいのだ。

ちょうど「TETON~山の声」を撮影していた時に出会い、作品にも少し出演してもらった写真家のDavid Brookover氏を思い出した。彼はワイオミングの大自然にほど近い町にギャラリーを構え、素晴らしい作品を産み出している。彼の撮る野生動物も風景も、やはりそこに住み続けていなければ決して撮ることのできないものばかりだ。

それらは決して観光写真というレベルのものではなく、アーティストとして撮影はもちろんのこと、和紙を使った独特のプリントまで、彼独自の世界観を持ち、特にカメラも4″x5″の大判フィルムカメラを多用し、よそ者には到底真似できない活動を続けている。彼の環境と活動スタイルを見ていると、東京にいて、短い旅でしか美しいものを撮ることができない自分に嫌気がさしてしまう。美しい環境の中に身を置き、そこでなくては撮れないような作品作り。そういうハイレベルな「沖縄映画」というものを見てみたいものだ。

人材は必ずいる。沖縄出身の俳優たちが東京でトップクラスの活躍をしているのは周知の事実だし、ミュージシャンを中心に、沖縄に戻り、そこで活動していこうという気運も高まっている。素晴らしいロケーションと人材が揃っているなら、あとは彼らの意識と製作環境とそれを後押しする行政や地元の人々の意識だけだ。これはほかの地方都市にも言えることかもしれないが、今回のような機会にそれがテーマに上がらないのは映画人としてとても残念だ。ただ、こういう映画をきっかけに人が集まり、身近なテーマについて話し合うことは素晴らしいことで、今後も映画の一つの役割として意識したい。

JVC GY-LS300CHがファームウェアアップデートでまた進化する!

さて、この作品は以前にも書いたようにJVC GY-LS300CH(以下:LS300)で撮影したが、そのLS300がまたまた大盤振る舞いなファームウェアの無料アップデートをしてくれる。正式リリースは5月後半だが、一足先にパイロット版のファームウェアを搭載したLS300が届いたので沖縄にも持参することにした。前回のアップデートでは外部レコーダーを利用して4K/120pというハイスピード撮影が可能になるものだったが、今回は本体のみで150Mbps/4:2:2の4K収録が可能になる。前回も驚いたのだが、これを無料のアップデートでやってしまうのだからLS300の潜在能力は素晴らしいの一言に尽きる。

私個人としては、ハイスピード撮影などのカメラの表現力と編集環境の投資を理由に、HD撮影に留まっていたのだが、そろそろ4Kでの作品製作も視野に入れておかなくてはならない。まだ再生環境として4Kを求められることは多くはないが、もちろんアーカイブとしてはできるだけ高画質で残しておきたい気持ちはある。

だからと言って、表現力とお金を犠牲にしてまでは…。というのが本心なのだが、いずれそのタイミングは訪れるだろう。今回の4K 4:2:2がそのきっかけになるのかは、もう少しテストをしてみないと分からないが、いずれにしても次々に進化する映像の世界の中で、クリエイターそれぞれが自分に必要な「高画質」を見極めなければならないだろう。

4Kがどこでどうして必要なのか?その先の8Kとは?HDR、Log、10bit?そもそも4:2:0と4:2:2の違いってどこで出るのか?合成やエフェクト、カラーグレーティングの時なのか?その編集環境はどのくらいのスペックを要求するのか?などなど。ことごとくお金と時間に関わってくる。無用の高画質化で製作機会や表現力が減ってしまうようなことがあってはならない。そんな疑問を解消すべく、今回の沖縄ではいろいろなテスト撮影も行った。これからじっくり検証して、年貢の納め時を見計らっていこうと思っている。


WRITER PROFILE

ふるいちやすし 自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。


[ Writer : ふるいちやすし ]
[ DATE : 2017-05-12 ]
[ TAG : ]

関連のコラム一覧

[東京Petit-Cine協会]Vol.82 ロンドン・フィルムメーカー国際映画祭

txt:ふるいちやすし 構成:編集部 いざ、ロンドンでの映画祭に臨む 前回のアジア国際映画祭に続いて、ロンドン・フィルムメーカー国際映画祭(Internatio... 続きを読む

[東京Petit-Cine協会]Vol.81 映画祭とは素晴らしい出会いとアピールの場

txt:ふるいちやすし 撮影:田部文厚 構成:編集部 アジア国際映画祭に招聘される 今後アジア各地で催される、アジア国際映画祭の第一回が2017年2月1日~3日... 続きを読む

[東京Petit-Cine協会]Vol.80 映画を作った意味を証明するということ

txt:ふるいちやすし 構成:編集部 「千年の糸姫」動く しばらく進展のなかった私の映画「千年の糸姫」(二宮芽生主演)に年末から一気に動きが出た。まずはロンドン... 続きを読む

[東京Petit-Cine協会]Vol.79 日本映画、そして世界へ出て行くこと

txt:ふるいちやすし 構成:編集部 日本映画の閉塞感と未来とは 今年も様々な映画が話題となり、興行成績がどうだとか観客動員の記録がこうだとか、ワイドショーは囃... 続きを読む

[東京Petit-Cine協会]Vol.78 ロシアで完成した映画「レミニセンティア」井上雅貴監督に聴く

txt:ふるいちやすし 構成:編集部 ロシアで紡がれたある一つの美しい作品 本当に久しぶりに心から“美しい”と思える映画を観た。「レミニセンティア」井上雅貴(い... 続きを読む

WRITER PROFILE

ふるいちやすし 自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。


Writer

編集部
PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。
小寺信良
業界で噂の新製品を、AV WatchやITmediaのコラムでもおなじみの小寺信良氏がレポート。
raitank
アートディレクター。あまたの海外ソースを読み漁ってHDSLRを独学。国内と海外の情報流通の温度差にモーレツな疑問を感じ、最新の情報を自ら日本語で発信するblogを運営中。
ふるいちやすし
自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。
岡英史
バイクレース及びF3レース参戦など、映像とはかけ離れた経歴を持つ異色ビデオカメラマン
江夏由洋
兄弟で株式会社マリモレコーズを設立し、ノンリニアにおける映像技術、映像制作を中心に、最新技術を取り入れたワークフローを提案している。
手塚一佳
CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。
山本久之
映像エンジニア。フリーランスで映像設備のシステムインテグレーションと、ノンリニア編集に携わる。
鍋潤太郎
ロサンゼルスを拠点とするVFXジャーナリスト。
江口靖二
江口靖二事務所主宰。現在デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。
安藤幸央
無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPH ASIAやCESなど海外の注目イベントを紹介。
高野光太郎
Cosaelu株式会社 代表取締役 / 映像ディレクター ミュージックビデオ、番組オープニングタイトル、CM、劇場映画、全てをデスクトップで制作。
ヒマナイヌ
頓知を駆使した創造企業
オースミ ユーカ
映像ディレクター。企画、脚本から演出までジャンルを問わず活動。
林和哉
映像プロデューサー/ディレクター。入口から出口まで全てのポジションを守備範囲にしている。最新技術が好物で、各種セミナー活動も豊富。
土持幸三
1970年生。鹿児島県出身。俳優を経て渡米。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。
茂出木謙太朗
株式会社キッズプレート代表。「楽しいInternetコンテンツ」をテーマに活動。現在VRの可能性をまさぐり中。CG-ARTS協会会員
猿田守一
企業用ビデオ、CM、ブライダル、各種ステージ記録など撮影から編集まで地域に根ざした映像制作活動やCATV局などへの技術協力なども行っている。
松本敦
映像クリエイター。企業VPからスポーツイベント撮影まで幅広く手がける。アクションカムやドローンなどの特殊ガジェット好き。
鈴木佑介
日本大学芸術学部 映画学科"演技"コース卒の映像作家。 専門分野は「人を描く」事 。 広告の仕事と個人ブランドでのウェディングがメイン。 セミナー講師・映像コンサルタントとしても活動中。
柳下隆之
写真家アシスタント、現像所勤務を経て、撮影機材全般を扱う輸入販売代理店で17年余り勤務の後に、撮影業界に転身。一眼カメラによる撮影を得意し、代理店時代に手がけたSteadicamや、スタビライザー系の撮影が大好物。
奥本宏幸
大阪を拠点にしているフリーランスの映像ディレクター。演出・編集・モーショングラフィックをバランス良くこなす。フィンランドサウナが好きです。
井上晃
映像制作会社「有限会社マキシメデイア」代表、制作プロデューサー&キャメラマン。Facebookグループ「ATEM Tech Labo」、「Grass Valley EDIUS ユーザーグループ」を主催して、ATEMやEDIUSの布教に、日々勤しんでおるでよ。
黒田伴比古
報道・ドキュメンタリーエディターでありながら、放送機器に造詣が深く、放送局のシステム構築などにも携わるマルチプレーヤー。
石川幸宏
映像専門雑誌DVJ編集長を経て、リアルイベントを中心とした「DVJ BUZZ TV」編成局長として活躍中。
ヒラタモトヨシ
ファッションとテクノロジーを繋ぎイノヴェーションを生み出す事をライフワークとし、WEB/ライブメディア/高精細映像表現を追求。
須藤高宏
東京・国分寺市に於いて録音スタジオ「マイクロサウンド」を運営し各種録音編集に携わる傍ら最近では各種イベント配信音声を担当。
猪蔵
いつも腹ペコ。世の中の面白いことを常に探っている在野の雑誌編集者。
ベン マツナガ
未来シネマ/ディレクター。ハリウッドでの大型映像制作、短編時代劇の自主映画制作を経て、現在は、映像を通じて人と人をつなぐことをテーマに様々な映像制作に取り組んでいる
金田浩樹
映画・テレビの映像制作を中心に、USTやニコ生等、ライブメディア各分野を横断して活動中。ジャンルや固定概念にとらわれない構成力と発想に定評あり。
ViewingLab
未来の映像体験を考える有志の研究会。映画配給会社、映像作家、TV局員と会員は多岐に渡る
稲田出
映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチルカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。
山下香欧
米国ベンチャー企業のコンサルタントやフリーランスライターとして、業界出版雑誌に市場動向やイベントのレポートを投稿。
萩原正喜
米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。
坪井昭久
映像ディレクター。代表作はDNP(大日本印刷)コンセプト映像、よしもとディレクターズ100など。3D映像のノンリニア編集講師などを勤める。
林永子
2005年よりサロンイベント「スナック永子」を開催。通称「永子ママ」
岡田智博
クリエイティブクラスター代表。メディアアートと先端デザインを用いたコンテンツ開発を手がけるスーパー裏方。
しらいあきひこ
カメラメーカー、ゲーム開発などの経験を持つ工学博士が最先端のVR技術を紹介。
秋山謙一
映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動中。
今間俊博
アナログ時代の事例を通じ、教育関連の最新動向を探る。
伊藤裕美
オフィスH(あっしゅ)代表。下北沢トリウッドでアニメーション特集上映を毎年主催している。
UserReport
業界で話題の商品を実際に使ってみてどう感じたかを、各方面の様々な方々にレポートしていただきました。
System5 Labs
SYSTEM5スタッフが販売会社ならではの視点で執筆します。

トップ > コラム > ふるいちやすし > [東京Petit-Cine協会]Vol.83 進化する映像の世界で「高画質」を見極めるということ