txt:土持幸三 構成:編集部

フィーカスをどこに合わせるのか?

動かない人物であれば、あまりフォーカスに気をかけなくてよい

筆者は低予算の短編動画をミラーレス一眼で撮影することが多い。基本的には脚本・演出が筆者の仕事だが、最近の低予算の流れもあって、場合によっては一人で撮影しながら演出することもある。やはりカメラを扱いながらの演出は気がまわらないこともあるが、撮影に関して言えば、カメラが優秀になったおかげで、暗所での撮影や色温度、ホワイトバランスなどを必要以上に気にしなけばならないことはなくなった。

しかし、動画における動く人物へのフォーカス合わせだけはまだ人間にかなわないと感じている。高級なカメラとレンズの組み合わせではある程度、顔認識、瞳認識などオートフォーカスで人物を追尾をしてくれて、そのクオリティも上がっているのだが、安価なカメラではそれらの機能はまだまだ現場では使えないレベルだ。そこでフォローフォーカス等を使って手動でフォーカスを合わせる手段もあるが、フォーカスマンなどがいないうえ、カメラ周りが重く、大きくなることで三脚も大型になり、小さく軽いミラーレスの強みが弱まるので、被写界深度をうまく使ってフォーカスを合わせる手間を減らし、かつオートフォーカスも使いこなす事が肝心だと考えている。

どこにフォーカスを合わせるか選択肢は無数

どこにフォーカスを合わせるか?フォーカスが合っている所に見ている人の目線はいくので、登場人物の中で誰に合わせるか、もしくは他の物体にフォーカスを合わせるのか、選択肢が無数に出てくる。筆者は、ラックフォーカス、手前から奥の人物へなど、フォーカスを合わせる人物を変えることをあまり好まないので、このような時、レンズと絞りの関係から変化する被写界深度をある程度頭に入れて撮影にのぞむ。

被写界深度によってフォーカスの合う範囲が決まるので、最初に人物の位置を決め、演技の動きを確認したあと、顔認証も使いオートフォーカスで人物に、複数の場合には中間点などにオートフォーカスを使って素早く合わせる。マニュアルだと画面を拡大したりしてフォーカスが合っているかの確認が必要で、あまりにも手間がかかるので、その部分はオートフォーカスを信じることにしているし、今のところ大きな失敗は無い。

また、自分のよく使うレンズの絞りに応じての被写界深度を把握しているので、人物がある程度動いてもフォーカスに必要以上に気を使わずに済む。もちろん、被写界深度やフォーカスの事だけを考えてレンズや絞りを決めることはないが、それらにあまり気をかけないで演出に気を集中したいというのが筆者の意図だ。

写真(1):2人の中間点でフォーカスを合わせる

例えば写真(1)のように2人が縦に並んで座っている場合、2人の中間点付近にフォーカスを合わせておくと、2人の上半身が前後左右に多少動いても被写界深度内で芝居がおこなわれるのであれば、フォーカスは2人にあったままでボケることはない。ただ、俳優がリハーサルより本番で大きく動き、予定の被写界深度を超え、フォーカスがズレて撮りなおすことはある。

リハーサルと動きが違う場合もある

今のところ被写界深度が明確にわかるような表示を画面でしてくれるカメラが無いように思う。現状はマニュアル操作に切り替えた場合、フォーカスが合っている部分に色がついている程度で被写界深度を見るという点ではいまひとつだ。

あと10年、もしかしたら数年で安価なカメラでも顔認識、瞳認識などの技術がさらに進んで、動画でも常にオートフォーカスで動く人物を撮影することができると思う。レンズの絞りを開放で、もの凄く狭い被写界深度で撮影し続けたりすることが可能となったり、映像の創り方がさらに変化するのではないかと期待している。写真で紹介した短編映画は10月6日と7日、渋谷ユーロライブで行われる第4回ネットシネマフェスティバルにて公開される。

WRITER PROFILE

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。