憧れの「フィルムルック」

筆者は学生時代に写真と映画を勉強したのだが、大学入学以前には自分で8ミリフィルムで短編を撮ったりもしていた。最初に8ミリで撮った短編は、フィルムの事を何もわからずモノクロフィルムで撮影したのを覚えている。その後、大学では8ミリカラーフィルムを多く使うようになった。どのカラーフィルムを使って(といってもKodakしかなかったが)どの照明もしくは太陽光下でフィルター等で色に変化を付けて色合いに多少の変化をつけていた。

デジタルでの撮影、編集が行われるようになって久しい現在でも、映像制作者はこの「フィルムルック」に憧れを持つ人が多い。「フィルムルック」とは1秒間に24コマで撮影することが基本のフィルムカメラが出す独特のブレ感というか、シャープ過ぎない映像と、特定のフィルムで撮影した時の色合いを言う事が多い。

筆者としてはシャープな映像はHDテレビ等の普及で一般的に受け入れられ、クライアントも含め、シャープでないとフォーカスが合っていないのではないか?と勘違いしてしまうほど、フィルムのシャープでない映像は特別な場合を除き求められていないと思っているが、色合いは無限と言っていいほどに組み合わせがあるし、撮影した現場の実際の色合いが一番良いのではなくて、その映像、そのシーンによって制作者がベストと考えるものがよく、制限はないので「フィルムルック」とはフィルム独自の色合いのことだと思っている。この色合いを制限なく作り出しやすく、かつ映像が荒くならないようにするためにRAWやLogで撮影できるカメラが比較的安価で登場してきている。

筆者は演出担当で撮影部のような大型カメラや照明機材を持ちたいとは思っていないため、ミラーレスカメラに外付けマイクを付けるだけでカメラ周りを極力軽く抑え、三脚も小さなもので対応できるようにしている。低予算で納品まで時間をかけられない仕事も多いのでRAWやLogで撮ることはなくMP4のいわゆる撮って出しで撮影して編集での負担軽減をしている。

もちろん、RAWで撮影すればポストでの優位性は理解しているが、取り扱いやすさとクオリティを天秤にかけた場合、撮って出しにして撮影、編集をしている。「フィルムルック」は欲しいがRAWやLogで撮影、編集するのはストレージ容量や編集マシンのパワー等を考えると使いたくないのだ。実際、筆者の周りでは、映画の撮影など時間がある程度かけられるものか、CMなどポスプロの高性能マシンで一挙に短時間で仕上げる作品でないとRAWやLogで撮影している人を見かけない。

右半分にFujifilm F64Dを適用

「フィルムルック」を出すために筆者は編集ソフトに追加のプラグインソフトを使っている。この手のソフトは何種類もあるが、基本的には同じでKodakや富士フイルムのフィルムストックの色情報が入っている設定が数種類あって、それを撮影した素材に適用することで、簡易的ではあるが、そのフィルムストックの色合いを再現し「フィルムルック」に仕上げてくれる。

右半分にKodak 5207を適用

フィルムストック以外にも様々な設定が何種類もあって、それぞれドラマティックな色合いを簡単につくりだしてくれる。常用しているこれらのソフトをより効果的に使うために、筆者は撮影時にできるだけナチュラルな色合い(ダイナミックレンジの広い設定とされる)のカメラ設定で撮影している。そのシーンが「朝」や「夕方」であればカメラの色温度を若干変えて青やオレンジを少し強くする程度で、ホワイトバランスをオートで撮る事は無い。

右半分にソフト独自の設定を適用

このナチュラルに撮影する設定等はインターネット上で各カメラの設定と色合いが確認できる。時間があればRAWやLogの勉強をしたいと強く思っているのだが、仕事内容によっては今回のような撮影が多いのが筆者の現状である。

WRITER PROFILE

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。