今回から2回にわたってVegasProの実践的な使い方についてお話します。VegasProを使用して仕事ができるんだという実感を抱けるような具体的な説明ができたらと考えています。

苦言から始まるVegas愛

今回は、あえてVegasからの苦言からはじめます! VegasProでどんな物を作っているのか?テープ、DVD、ブルーレイ、WMV(ウインドウズ・メディア・ビデオ)など様々なフォーマットで納品をおこないます。Final Cut Pro(FCP)やAvidなどはテープ書き出しの環境が揃っているので、そのままデータを持ち込んで完パケができます。VegasProの場合でもHDcamへの書き出しはHDcamデッキをPCに繋いで書き出す事ができます。しかしながらこのシステムを組んでいる業者は日本にまずありません。

ちなみに私もデッキをVegasProを使用し、PCと繋いで試したのですが不安定…。という理由からVegasProからテープに書き出しは断念しました。しかし、私の場合、そこは百歩譲ってFCPへデータを移し、テープへの書き出します。HD素材においてはAVIの非圧縮ならFCPは読み込んでくれます。これをProRes422に変換しテープへ書き出します。この間、数時間のロスと経費がかかります。

そんな無駄なことをしてまでもVegasProをなぜ選択するのだ?と皆さんは思うかもしれません。VegasProを使い続けるには理由があります。納品までの作業工程において一番時間を割かれるのはやはり、どういった構成で作り上げようかと考えるクリエイティブな時間です。その効率を考えた場合、VegasProのクリエティブ性を優先して、テープ書き出しなどクリエイティブ要素の必要がない作業は、その数時間を休憩時間だと考えています。これはある種、強引かもしれません。しかしクリエイティブに割く時間が快適に過ごせる事ができれば問題がないのです。

ProResデータとVegasProの相性

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ここでProResデータとVegasProの相性について触れておきましょう。アップル社のProRes422は非常に汎用性の高いデータです。ではVegasProでは書き出せるのでしょうか?答えはNOです。残念ながらWindowsでProResデータを書き出すことはできません。ただし読み込みは可能です。VegasProのタイムラインには、ProRes422を載せることができます。編集上の動きもスムーズです。同じようにキャノンEOS5Dのデータも可能です。こちらはメモリに負荷がかかるのでOSが64bit版をお勧めします。

では、納品においてVegasProの優位性はあるのでしょうか?これまで8年間もVegasProを使ってきました。手がけた作品もジャンルもVP・CM・テレビ番組・映画など多岐にわたります。その殆どがテープ納品でした。VPなど企業ビデオの場合はDVD納品が多く、逆にこの辺でVegasProに助けられた部分もあります。「DVD Architect Pro」というソフトも付属されているためDVDデータ作成が簡単に実現できます。また、各種映像データの書き出しも豊富でWMVなどの圧縮は軽くて、非常にきれいでした。この点では助けられた部分が多いです。納品先の企業はその殆どがWindowsを使用しています。そのためWMVならクライアントとのチェックや修正の戻しなどをやる場合にスムーズに作業ができます。

これできるんじゃないかな?と思った事はほとんど実現可能

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作品のクオリティーを私個人の感覚で整理します。作品を見るお客やクライアント等の視聴者が作品の良し悪しを判断する場合、まず基本はその作品の内容。これは構成や台本から順ずるもので、作品内容についての編集テクニック。今回は、編集テクニック上のノウハウとしてお話します。

例えば、音楽プロモーションビデオ。PVの世界では視覚的センスを上げるために、今まで視聴者が見たこともない映像作りが優先されています。映像業界的にいうと”CGエフェクトのプラグイン合戦”であるともいえます。こういった作品つくりをする映像クリエーターはPC上で映像を完成させる上で、殆どがMacで作業し、基本ソフトとして、ノンリニア編集でFCPを使用します。そしてCGエフェクトはAdobe After Effects、さらにMayaなどの3DCGソフトウェアを駆使して映像を完成させます。これら全てを使いこなして完パケまで持っていてるディレクターは最強です。私も何人か知っています。うらやましい限りですが、われらがVegasProでもそれらはすべて実現可能です!CGエフェクトや3Dソフトから主にQTのアニメーション圧縮で書き出したものをタイムラインに乗せてノンリニア編集ソフトで成立するのです。VegasProの場合HDサイズのQTアニメーション圧縮ですらレンダリング無しでタイムラインに載せることができ、動きもスムーズです。

さらに、タイムラインに乗せてある映像に対して、CGソフトで作ったアルファチャンネル付き素材を載せてCGを合成することも可能です。やり方はタイムライン上の素材を右クリックして、プロパティーを開き、メディアのタブを選択。この画面の下の方にあるアルファチャンネルを選択すると綺麗にアルファが抜けます。また、Vegas Proでもアルファチャンネル付き素材を書き出すことができます。

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ショルダーをアニメーションにしてループする等の素材加工に便利です。VegasProの場合はAVIの非圧縮のみアルファチャンネル付き素材が可能のなので、レンダリング時にWindows for video (AVI)を選択。このレンダリング時に非圧縮を選ぶとアルファーチャンネルの枠がチェックできます。

素材がない黒い部分がアルファチャンネルとなり、タイムライン上では黒の部分が綺麗に抜けるのです。このテクニックはマニュアルにも載っていません。このおかげで映像クオリティーは飛躍的にアップしました。ノンリニア編集ソフトとして、ここまでできればプロのニーズに対応できるソフトであるということを証明できたと思います。ただ映像素材をつなぎテロップを載せ、トラジッションにワイプ等を入れて完成する作品はアマチュアでもできます。そういった意味で今回は加工を中心にしたVegasProのノウハウを解説しました。

定番であるBoris、Sapphireなどのサーパーティーのエフェクトプラグインも、Vegas Pro 8辺りから対応し始め、VegasPro上で様々なエフェクトを操作できるようになっています。私の場合、お試し版で何度かテストしましたがOS32bit版のマシンだったのでメモリーの付加が多すぎ操作性はいまいちでした、OS64bit版では試していませんが上手く順応していることを願います。

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ちなみにVegasProでも標準でエフェクトプラグインが多く付随しています。Vegas Pro 9から標準でシャイン等の光系のエフェクトが追加され重宝しています。次回の後編は具体的に私が実践しているテレビ番組制作。SONYのXDCAM EXを使った撮影、納品までのノウハウについてお話したいと思います。

WRITER PROFILE

坪井昭久

坪井昭久

映像ディレクター。代表作はDNP(大日本印刷)コンセプト映像、よしもとディレクターズ100など。3D映像のノンリニア編集講師などを勤める。