いよいよカナダの南西の端にある町バンクーバーでの冬期オリンピックが2月12日(金)の開会式から2月28日(日)の閉会式迄の間、開催されます。

このバンクーバーオリンピックに於いて、その空の安全を護る為にコロラドのCororado Springsの町の近くに在るシャイアンマウンテンのNORAD (North American Aerospace Defense Command :北米防空司令部)ではカナダ政府よりの依頼を受けてオリンピックの開催期間中のバンクーバー空域の警戒監視に当たる事になっています。

今回の特別監視計画はこの冬期オリンピックが2週間半という長期にわたる為、2007年からカナダ軍及びコロラドスプリングスに在るピーターソン空軍基地に配置されている北米空域防衛指令本部、そしてNORADの3者間で検討準備が行われて来ており、いよいよその活動実施時期が迫って来ました。

NORADはかって冷戦時にソ連からの大陸間ミサイルや航空機による攻撃を防ぐ為に設置された施設で大規模なレーダー監視網を使っての防空監視システムの本部が攻撃を受けても破壊される事の無い様に山にトンネルを掘って山の中央部に設備されています。

今回は特にオリンピックを目標とするテロリストによる空からの攻撃を回避する事を目的としていますが、 NORADのレーダー監視の他 、バンクーバー空域の上空には期間中カナダ空軍とアメリカ空軍の早期警戒機による監視が行われ、空中給油によって連続して飛行が実施される予定です。華やかな冬の祭典の空からの陰の立役者となります。

バンクーバー冬期オリンピックのコロラドからの代表選手

アメリカではオリンピック出場選手の選考は、その代表選考試合の一発勝負で決められますが、女子シングルフィギュアスケートの代表選手には、Colorado Springsの町のに在るシャイアンマウンテイン高校の4年生Rachael Flatt選手(17才)がワシントン州Spokaneで1月23日(土)に行われた選考会で1位となってオリンピック出場を決めました。(コロラドでは小学校が5年制、中学校が3年制で高校は4年制、いわゆる5-3-4制です。)

最初のショートプログラムでは日本人の両親を持つ長洲未来選手が1位、前回2006年冬期オリンピックでの銀メダリストであったSasha Cohen選手が2位、そしてRachael Flatt選手は3位に付けていたのですが、フリープログラムで逆転の好スコアーで総合首位となり、2位となった長洲選手とともにオリンピックへ出場する事となりました。

Cohen選手が演技中に転倒して4位となってしまった事が思わぬ番狂わせを生じています。アメリカチームの冬期オリンピックが始まって以来、女子シングルフィギュアスケートでの出場選手枠では今迄3名でしたが、1924年と今回が2名に制限されています。

Flatt選手は学校ではStraight A(日本流に云えばオール5)の優等生で、 彼女は2008年のWorld Junior Championshipで優勝して、その後昨年の全米女子フィギュアスケート大会でタイトルを得た直後から、かつて1976年オーストリーのリリハンメル冬季オリンピックでの金メダリストDorothy Hamillコーチについて練習して来ましたが、Hamillコーチは「彼女は集中力に優れており、その運動能力とともに安定したスケーターだ。」と言っており、今迄の大きな試合で失敗を犯した事が有りません。

今度のバンクーバー冬期オリンピックでは日本の浅田、安藤、鈴木の各日本選手や韓国の金選手、そしてアメリカのもう一人の代表長洲選手たちとFlatt選手がその技を競い合う事となります。

また、女子のスキー滑降部門では、今シーズンのWorld Cupで世界各地のスキー場を転戦してチャンピオンとなっているコロラドのスキーリゾートタウンVail出身のLindsey Vonn選手(25才)がバンクーバーオリンピックではアルペンの滑降とSuper Gの2種目に出場します。

Vonn選手はオリンピック前の各World Cupレースでは今シーズン26レースに出場して9レースで首位となっており、今回のオリンピックでの最有力金メダル候補となっています。2002年の冬季オリンピックで活躍したThomas Vonn選手とその後結婚して現在その旦那がVonn選手のサポーター兼トレーナーとして付き添ってWorld Cupで各地を転戦しています。

長野オリンピックでの女子Super Gで金メダリストPiccaboo Street選手もコロラドのVailをベースとして活動していましたが、コロラドのスキー場はアメリカのスピードレーススキーの優秀選手の多くを過去生み出して来ています。

同じ滑降、Super Gの男子では以前のトリノオリンピックに出場し、ソルトレークシティーオリンピックでは、滑降、Super Gでそれぞれ銀メダルを獲得しているBode Miller選手はコロラドの各スキー場を本拠地として活躍しており、2008年のWorld Cupで活躍してコロラドでは良く知られている選手ですが、2009年のWorld Cupでは不振に終わっています。

今回のバンクーバーでは彼の出身地ニューハンプシャー州Franconiaからの登録で出場しますが、現在32才という年齢から今回の冬期オリンピック出場が事実上、彼の最後のレースとなるものと見られています。以前から精神的にアップダウンの激しい選手ですので、今回一発勝負で好成績を残すかもしれません。

また、男子スケートのショートトラック競技ではコロラドスプリングスの町に在るアメリカオリンピック協会のトレーニング施設で長期間滞在して練習を積んで過去2回の冬期オリンピックでは2個の金メダルを含む合計5個のメダルを獲得している日系人選手のアポロアントン大野選手(27才)がコロラドでは良く知られていますが、今回のバンクーバーへはワシントン州シアトルの登録で冬期オリンピック3回目の出場をします。

ご参考迄に、今度のバンクーバー冬季オリンピックに出場するコロラドの選手たちを以下にリストアップします。日本選手の活躍場面をTV等の番組でご覧になる時にちょっと気をつけてコロラドの選手たちの健闘も眺めて頂ければ、と思います。

コロラドから冬期オリンピックに出場する選手
種目 男子/女子 選手名 出身地
Alpine Skiing 男子 Jake Zamnsky Aspen
Alpine Skiing 女子 Alice McKennis Glenwood Springs
Alpine Skiing 女子 Sarah Schieper Vail
Alpine Skiing 女子 Lindsey Vonn Vail
Biathlon 女子 Lanny Barnes Durango
Cross-Country 男子 Simi Hamilton Aspen
Figure Skating 男子 Jeremy Abbott Aspen
Figure Skating 女子 Rachael Flatt Colorado Springs
Freestyle Skiing 男子(Aerials) Ryan St.Onge Winter Park
Freestyle Skiing 男子(Ski Cross) Casey Puckett Aspen
Freestyle Skiing 女子(Moguls) Michelle Roark Denver
Ice Hockey 男子 Paul Stastny Colorado
Nordic Combined 男子 Johnny Spillane Steamboat Springs
Nordic Combined 男子 Taylor Fletcher Steamboat Springs
Skelton 女子 Katie Uhlaenderr Breckenridge
Snoeboarding 男子(Half Pipe) Gretchen Bleiler Aspen

スーパーボールの実況中継を画像信号圧縮無しで伝送するSuper HD Bowl Game

Level 3 Communications社の入り口の看板サイン
アメリカ本土の主要都市間を光ファイバーによる高速通信回線のネットワークを構築しているLevel 3 社の本社はデンバーから北西へボールダーの町へ伸びている国道ハイウエイ36号線の途中の町Broomfieldに設けられたInterlockenハイテクパークの西の端の小高い丘の上に在ります。

Interlockenハイテクパークにはかってはミニコンピューターベースのビジネス及びエンジニアリング高性能コンピューターシステムのソフトウエアーで一世を風靡したサンマイクロシステム社の一大キャンパスを始め多くのハイテク企業が集まっています。

また、至近距離にはJefferson County空港も在ってビジネス用の小型、中型の多くの航空機が離発着しています。また、森林火災発生時の消化水タンカー飛行機の中心基地となっており、一旦森林火災が発生するとここから飛び立って空からの散水消化が行われます。

2月6日にマイアミのSun Lifeスタジアムで行われるプロアメリカンフットボールの今シーズンを締めくくる「Super Bowl」の試合を実況中継するCBSではデンバーの北のBloomfieldの町に在る全米高速光ファイバー幹線ネットワークの運用会社 Level 3 Communications社のネットワークを使って会場からの試合中継の画像信号を圧縮をかけずに直接CBSのニューヨークに在るスタジオへ伝送して高画質のHDTV信号をサービスする実験を行う事になっています。

通常ですと、スタジアムで撮影されたカメラ信号は外で待機している中継車で 100Mbps 程の信号に圧縮されてスタジオへ伝送されるのですが、今回のテストでは、カメラ信号は中継車へ送られてからそのままLevel 3社へ送られ、約1.5Gbpsのレートでスタジオへ伝送されることになっています。

更にCBSスタジオから全米各地の放送局へLevel 3社の回線を使用して、そのままのハイレートで伝送され、以下は通常と同じデジタルTVの圧縮信号となって視聴者へ放送される事となっています。

こうした、信号の伸張/圧縮の過程を経ずに信号伝送を行う事によって、かなりの画質改善されたHDTV信号が視聴者へ届けられると期待されていますが、各放送局からの放送される過程ではATSCのデジタルTV規格に基づいた信号圧縮が行われますので、一般の視聴者にどの程度その効果が認められるか興味が持たれています。

Level 3 Communications社の社屋
大きな4階建ての社屋が5棟それぞれ連結されています。建物を取り巻いてその周囲は広大な駐車場となっており、写真中央の建物が正面玄関口となっている建物です。駐車場の一番端から広角レンズで撮影したのですが、建物全部を収める事が出来ませんでした。

今回のCBSによるスーパーボールの中継放送信号は、CBS傘下の各地の地上波放送局の他に衛星放送やケーブルTVの各放送局にも配給されますので、全米の非常に多くの視聴者たちが観戦する事となります。

Level 3 Communications社は通称「バックボーン」と呼ばれている高速通信回線の全米にまたがる幹線ネットワークを光ファイバーで提供している大手の1社で、特に全米の各有名大学のキャンパス間をつなぐ高速インターネット網の推進機関である「Internet 2」へそのサービスを提供していることで有名です。コロラドのデンバーの北に在るBloomfieldの町に本社を置いて全米に約6000名の従業員で運用しています。


Level 3 社への入り口から東方を眺めたInterlockenハイテクパークの夕方の景色
このハイテクパークには各ハイテク企業の社屋の他にかなり大規模なタウンハウス群やアパート、そして高級住宅などの住居群も隣接して建てられています。写真の右の端に蒸気が揚がっているの辺りがJefferson County空港です。

デンバー地区及び5大湖の南のOhaio Valleyと呼ばれている地域に在るCleveland、Indianapolis、Louisville、Cincinnati、Columbusなどの町を繋ぐ高速回線サービスを行っていたIGC Communications社を先に買収してその主要都市間でのネットワークの強化を計って来ており、デンバーに在るQwest社とともにアメリカでの主要通信バックボーン会社となっています。


Comcast社がアナログフォーマットの40チャンネルを送信取りやめ

ケーブルTVの最大手Comcast 社では、旧来からのベーシックケーブルチャンネルの放送を除く、現在行っている40チャンネル分のアナログ方式の放送を停止して、そのチャンネル分をデジタル方式の放送に切り替える準備を進めています。このアナログ40チャンネルのサービス停止により、このサービスを受けていた視聴者はデジタルサービスへの変更を行う事になり、現在使用しているTVセットに新しくアダプターを接続して視聴する事となります。

Comcast社では、この新しいデジタルセットトップボックス及び2台迄のアダプターを視聴者に無料で供給するとしており、それ以上の新アダプターの供給は月額1.99ドルの料金が必要となるとしています。また、Comcast社がLowest Tier (Basic Cable) と呼んでいる旧来からのアナログチャンネルについては従来通り変更無く継続サービスされます。

今回の変更は特定の地域では3月より行われ、順次変更を進めて、今年の末までには全サービス地域の変更が完了する予定となっています。

今迄のアナログチャンネルの1チャンネル分の帯域で基準デジタルチャンネルは15チャンネル放送する事が出来て、HDTVチャンネルの場合は3チャンネルまでのサービスが行えますので、Comcast社としては大幅なチャンネル数の拡大とHDサービスを行える様になり、今迄衛星放送TVと競って来たデジタルチャンネルについてのサービスで視聴者獲得競争で大変有利な展開が出来る様になると予想されます。

Comcast社では、地上波TV放送のデジタル移行により全米の各家庭の約半数が既にHDTVセットで観ている様になって来ているので、今回の変更は問題なく顧客に受け入れられ、同社のHDサービスの強化に繋がる、とみています。

デジタルへ変更となる現在のアナログフォーマットの40チャンネルとしては、MTV、USA、ESPN、HGTV、MSNBC、Food Network、EI、Golf Channelなどの主要プログラムチャンネルを含んでおり、変更の無いBasic Cable チャンネルとしてはLocal放送局からのプログラム、QVC、Discovery、C-SPANなどが含まれています。

Comcast社ではケーブルモデムのリース料金を値上げ

先のこのレポートで報告しましたが、Comcast社では昨年後半からコロラドの高速インターネットのサブスクライバーに対して、そのデータ転送レートを「New Power Boost」と言うサービス呼称で、それぞれほぼ2倍の高速なものに引き上げるというサービスを料金は据え置きで行いました。

今回同社ではComcastのモデムをリースして使用している顧客に対して、その月額代を2ドル値上げするとして、今年の1月から実施しました。 同社の殆どのサブスクライバーは同社のモデムをリースして使用しており、毎月の請求書に一緒に記載されて来ていますが、これにより1月からのリース代金が3ドルから5ドルに変わっています。

Comcast社では今回の値上げは、データーレートのアップグレードにまつわるもので、今後も継続して次世代の装置や技術を顧客に提供して行く事になるとしており、これによって機能の強化された先進のインターネットサービスがうけられる、としています。

そして、このリース代は今後の2年間に167%となる予定であると云っています。また、サブスクライバーはモデムを同社からリースする他に町の小売店でも購入する事も出来る、としています。

Comcast社は現在全米に2360万軒のケーブルTVのサブスクライバーを所有しており、コロラド州内のその総サブスクライバー数は84万軒となっています。また、同社のインターネットサブスクライバー数は1590万軒で、もしその2/3のサブスクライバーがモデムをリースしているとすれば、月額2ドルの今回の値上げは同社に2億5000万ドル以上の年間収入をもたらす事となります。

Comcast社のブランド名がXFinityと変わる

Comcast社では、同社のTV、インターネット、電話の各サービス名称を現在使っているComcastから「XFinity」と変更し、今年2月12日から実施すると発表しています。

会社名としては、そのままComcast Communicationsとして変わりませんが、広告や全米で総数2万4000台にのぼるサービストラック、そして従業員のユニフォームなどのマークが変更となって、今後「XFinity」ロゴマークの普及をはかる事にして行きます。

今回のXFinityマークはバンクーバー冬季オリンピックでの広告を皮切りに本社の在るフィラデルフィアを始め全米の10都市からその使用がスタートすることになっています。

現在Comcast社ではTV全米ネットワーク会社の一つNBC Universal社の買収準備を行っていますが、これを機会にそのロゴマークも一新して将来の発展を期そうと言う事かと思われます。

あとがき

先にこのレポートで報告したケーブルTVの最大手のComcastがTV全米ネットワーク会社NBC Universalの経営権を握る株式の買収を行う件で、現在アメリカ連邦議会での公聴会が開かれていますが、その場で同社のケーブルTV、インターネット、電話の各サービスの名称ロゴをComcastからXFinityに変えるという公式発表が行われ、併せて同社の昨年第4四半期の業績が発表されています。

それによりますと、Comcast社の昨年第4四半期の総売上は前年同期に比べて2.9%上昇して、90億6000万ドルとなり、利益は同社がケーブルTVのClearwire社へ新たに投資した6億ドルを含めて9億5500万ドルと前年同期の4億1200万ドルから2倍以上の額となっています。経済不調の中にあって、元気印のComcast社です。

WRITER PROFILE

萩原正喜

萩原正喜

米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。