12月に入ってからアメリカのシカゴ地区を始めとする中西部地域では、嵐を伴った大雪にみまわれ空の便の乱れを始め陸上交通が大混乱をしていますが、ロッキー山脈を抱えるデンバー地区では、朝晩は気温が低下して肌寒く感じられるものの日中は温暖で夏を思わせる様な陽気が続いており、この12月13日(月)にはデンバー地区で日中の最高気温が華氏70度(摂氏21度)となり1994年以来の記録となりました、

観測が始まって以来この時期での記録では、1921年に短時間だったのですが華氏72度(摂氏22度)と言う記録が残っております。また、例年デンバー地区では9月に入ると1回か2回はかなりまとまった量の降雪があるのですが、今年はどうしたことか、地面が一面に白くなる程度の雪がこれまでに3回程見られたものの12月中旬となるのに雨も降らない事から異常な程の乾燥状態となっています。

過去の12月の記録としては、1881年には雨や雪が全く降らなかったという記録が有り、また、1905年には12月中で僅かの降雪があっただけと言う記録が残っています。今迄の記録の総平均として、デンバー地区では12月中で約8.7インチ(22cm)の降雪が通常と言う事になっています。

一方、今シーズンのロッキー山脈中には9月中旬からは豊富な降雪量に恵まれ、特に高地に在るLovelandやArapahoe Basinの両方のスキー場は、それぞれ10月24日(日)、25日(月)からオープンして、コロラドの最もポピュラーで人気のあるVailスキー場も既に11月19日(金)に開いて多くのスキー客を集めています。

毎年恒例のワールドカップスキー選手権大会のレースがトップを切って開かれるCopper Mountainスキー場では今シーズンも既に行われて、地元の女子ダウンヒル競技チャンピオンのLinsey Von選手も出場して第6位という初戦としてはまあまあの成績を残しました。

HDTVプログラムを巡る衛星、ケーブル、電話事業各社の競合

現在全米でのTV放送メディアによるサービスを受けている総視聴者数はほぼ1億軒に達しているとされており、ほとんどその市場は飽和状態となって来ており今後の拡大成長は見込めなくなって来ているとされています。

こうした状況下にあって、各メディアが今後も継続して事業として成長して行く為には次の3つの道が残されている事になります。

  • 各メディア間での視聴者占有率を伸ばす。
  • 放送プログラムの質や内容を高めて高い料金でも視聴者が喜んで視聴するプログラムサービスを行う。
  • ビデオTVプログラムのサービスの他にデジタル電話やインターネット接続サービスの顧客拡大を計る。

しかしながら、ケーブルTV及び高速電話サービスの2者はサービスプロバイダーと視聴者間の双方向サービスが可能なメディアですが、衛星TVはサービスプロバイダーからサブスクライバーへ向かっての一方向サービスであり、かって衛星TV業界の大手2社のDirecTV社とDish Networkとが各サブスクライバーより衛星に向かってのアップロードサービスを実施してケーブルTVに対抗しようとしましたが、双方向ブロードバンドサービスが容易なケーブルTVに勝つ事は出来ず成功しませんでした。

その後、衛星TV2社はそのサービスのペイTV受信の為にペイプログラム料金の回収やサブスクライバーのチャンネル選択状況の把握、そして送信システムのグレードアップなどに伴うセットトップボックス内のプログラム変更などの目的の為に各衛星TV放送のセットトップボックスは電話回線に通常接続される事から、電話会社と提携してインターネット信号のダウンロードは衛星からの信号で行い。アップロードを電話回線で行う、というサービスを実施しようとしましたが、アメリカ内での法律が改正されて電話会社のTVプログラム配信事業が可能となり、一方ケーブルTV会社での電話サービスも同時に許される事となって、衛星TVが狙っていたアップロードに電話回線を使用すると言った事はTVプログラム配信事業で競合する電話会社の事業上での協力が必要と言う事となって、うまく行きませんでした。


そのような事情から衛星TV放送はTVプログラムの配信事業について専念せざるを得なくなって、それに特化したケーブルTV事業との競合する強力な視聴者獲得戦略を積極的に展開して今迄に大きな成果を上げて来ました。

以上の様なTVプログラム配信メディア業界の背景から、コロラドでは今年の年初より衛星TV、ケーブルTV、そして光ファイバーラインで高速ビデオサービスが可能となった電話会社の各ペイTVプログラムメディア間でのHDTVプログラムのチャンネル数及びその視聴料金を争点とした視聴者獲得競争が激しく行われて来ました。

コロラドでペイTVプログラムの配信サービスを行っている主要各社は下記の様になっていて、それぞれの今年6月30日現在のビデオプログラムの全米での総視聴者数は次の通りとなっています。

衛星TV放送 DirecTV 1880万軒
衛星TV放送 DishNetwork 1430万軒
ケーブルTV放送 Comcast 2320万軒
電話会社 Qwest 不明
電話会社Qwest社のHighland Ranch Cybercenterの建物
デンバーのダウンタウンに本社ビルを持っている地方電話会社の大手Qwest社のCyberCenterと呼称している建物で、 建物にはQwestの看板すら何処にも見当たらず、内部はかなり広大な建物ですが、どうなっているのか中を外から覗く事は出来ません。DishNetworkの本社の在るLittletonの町より更にかなり南へ下がったHighland Ranchの町に在ります。

このうち電話会社のQwest社は電話事業では規模の大きな会社ですが、先にケーブルTV事業との電話およびTVプログラム配信の相互乗り入れが法律改正で可能となった時にその光ファイバー回線の敷設投資に遅れてTVプログラム配信事業への参入に躊躇していた事から、最近になってからやっと事業参入をした、と言う事で多額な資金を投下したと思える新聞折り込み広告やTVコマーシャルなどでの積極的な視聴者獲得キャンペーンを展開して来ましたが、いまだ成功しているとは言えません。


そうこうしている間にQwest社のCenturyTel社による買収の話が持ち上がって、同社の抱える多額な負債とともに新たな視聴顧客獲得に水を差す形となっています。


こうした現状でのHDTVプログラム配信の顧客獲得競争は事実上衛星TV2社DirecTV, DishNetworkおよびケーブルTVのComcastの3社間で争われて来ました。ここ2年間ほどの間におけるこれら3社の視聴者推移について見てみますと下記の様になっています。


期 間 DishNetwork DirecTV Comcast
2009年第1四半期 -94,000 +460,000 -78,000
2009年第2四半期 +26,000 +224,000 -214,000
2009年第3四半期 +241,000 +136,000 -132,000
2009年第4四半期 +249,000 +119,000 -199,000
2010年第1四半期 +237,000 +100,000 -82,000
2010年第2四半期 -19,000 +100,000 -265,000
上記6四半期の通計 +640,000 +1,139,000 -970,000

と言う事でComcast社の一人負け、DirecTV社の一人勝ちの感がしますが、特に注目する点はDishNetwork社の実績で、これまでその視聴者数は上昇の一途をたどってここ迄来ましたが、2009年の第1四半期ではじめての減少を経験し、その後強力な視聴者獲得戦略を展開して挽回を計りましたが、2010年第2四半期で再度減少となっています。

衛星TV放送のDirecTV社Inverness事業所の入り口看板
デンバーの南の国道25号線とCentennial空港の滑走路とに挟まれた場所にInvernessゴルフ場が在って、それを周回している道路の両側にいろいろなハイテク企業の建家が並んでいます。いわばハイテクパークと言う感じですが、その一角にDirecTvの事業所があってその入り口に看板が立っています。看板の向こう側は広い駐車場で、その向こうには屋根付きの3階建ての駐車場となっています。
DirecTV社Inverness事業所の建物
DirecTV社のコロラドのInverness事業所の建物です。この建物の左側には大型の衛星通信用のパラボラアンテナが多数設置されています。また、この建物の裏側にコロラド州を南北に走っている幹線道路の国道25号線が在ります。このInvernessハイテクパークの中でもこのDirecTvのビルが際立って大きくまた立派な建築となっています。

最近のTVセットや映画プログラムをめぐる事情

年末商戦期の最初の山であるThanksgiving Dayも既に終わって、後はクリスマスに向かって気ぜわしくなって来ている最近のコンスーマーエレクトロニクスの市場ですが、この最近の状況を示すいくつかの最近の出来事を以下に紹介して、2011年の方向を占う上での参考として頂きたいと思います。

(1)アメリカ最大の家電チェーンストアーBestBuy店の事情から

BestBuy店の今年の第3四半期(7月から9月)の業績が最近発表され、その利益面で予想されていたのより大幅な減収となった事から、直ちにその株価取引に反映されて、同社の株価が15%近く一気に低下しています。

同社のこの利益面の低下は低価格TVセットおよびラップトップコンピューターの売り上げが大幅に下がった事に起因しており、それを補うはずであった、より高価格の3D-TVセットやインターネット接続TVセットの売り上げがそこまで及ばなかった事が影響したとされています。BestBuy店は今までその主要競争相手であったCircuitCity店が昨年破産して業界から撤退をして以来かなり有利な商売を展開して来ましたが、現在ではその市場はamazon.comの様なオンラインショップとデイスカウントショップのWalMartやTargetなどとの間に挟み撃ちとなって来てその業要が圧迫され始めています。

こうした状況に対応するためにBestBuy店ではローエンドのTVセットを低価格でその売り上げ台数で稼ぐ,と言う方向から一流ブランドのTVセットをその低価格で勝負する戦略をとって来ています。こうした戦略ではその目玉商品である3DTVセットやインターネット接続TVセットなどの売り上げ台数面では市場がそれほど拡大しておらず、同店が期待していた程の伸びを見せなかった、と言う事です。

一方、Tabletコンピューターやスマートフォンといった携帯商品に消費者マインドが移っており、それらの商品が多く購入されている事も影響しているとされています。

業界の市場調査会社のNPD Group社の調査によると、今年の1月から11月迄のTVセットの業界総売上台数は昨年同期に比べて2%の伸びとなっているものの、TVセットによる売上げ金額面では8%の低下となっており、全体的にフラットパネルTVセットの購入面では、既に購入家庭の主体は購入してしまっている状況で、現在は消費者の購買は安価なTVセットへと集まっている状態であるとしており、コンシューマーエレクトロニクス商品全体の販売面ではその主体はポータブル型の各商品カテゴリーへ集まっている状況とされています。

(2)郵便を利用したDVDレンタルで急成長して来たNetflix社の新展開

アメリカの郵便制度を活用するDVD映画ディスクのレンタル事業でその業績を大きく伸ばして来たNetflix社は、その創業から早くも10年以上が経過していますが、最近同社ではその事業の新プランを発表して、同社の主体の 映画ビデオの再販事業をインターネットによるストリーミングのみに全面依存する様に移行するとしています。

一方、旧来からの方法でのビデオレンタルの全米最大のチェーンストアーであったBlockbuster社が破産して現在会社更生法の適用管理下にあることはご承知の通りですが、時代の変化への適応力と言うか、時代の流れへの対応力と言う面での企業の運営が試されている様に感じます。

Netflix社がビデオレンタル業界に現れて以来Blockbuster社でも新たなレンタルシステムの導入を試したり、オンラインレンタルシステムを始めたりと、その時代の流れを捉えようとして来ました。また、全米チェーンの業績不振の店を多く閉鎖するなどの体質改善策も実施して来ていますが、Netflix社に比べて大きな舵取りが行えなかった、という感じがします。

Netflix社では今回の新事業プランの発表に当たり、同社の会員の人達は既にDVDでのパッケージメディアよりもインターネットを介してのビデオストリームで映画を観る様になって来ているとしており、そして、これらの顧客を満足させて行く為に同社でのこの第4四半期に於けるビデオストリームのライセンスを得る為に同社が支払う費用金額はDVDを仕入れ購入するのに同社が支払う費用金額を越える、としています。

同社の事業計画では、ユーザーが1枚のDVDを1回レンタルするのに比べてインターネットを介して映画やTVショーなどのストリームを利用するのに要する費用は月額にして9.99ドル、たったの1ドルの増価で行える様になっており、現在の利用会員は来る1月の勘定書でその変化を知る事となるが、これから加入する会員はその場からその費用価格を知る事が出来る、としており、ストリーミングのみの利用の費用はプログラム選択は無制限で月額7.99ドルとなるとしています。

ちなみにNetflix社の今回の発表資料によると、少なくとも15分以上のストリーミングビデオを利用している同社の会員数は同社がこのシステムを始めた2009年第2四半期での全体の37%であったのから、直線的にその後増加して、2010年第3四半期では全体の66%に達しているとしています。今回のNetflix社の今年第3四半期の業績は売り上げ金額が5億5320万ドルで、昨年同期に比べて31%の上昇となり、利益面では3800万ドルと昨年同期の26%アップを記録しています。

(3)利益急増の衛星TV放送DishNetwork社の第3四半期の決算から
衛星放送のDishNetwork社Littleton本社の建物デンバー
デンバーの南の端に在るLittletonの町に在る衛星TV放送でDirecTVと業界を2分しているDishNetwork社の本社です。この建物は以前ショッピングモールだったのですが、しばらく閉鎖となっていたのを当時Echostarと言う社名で始まった同社がここへ居を構えました。ショッピングモールと言う事でその前面は広大な駐車場となっており現在もそのまま駐車場として使っています。

この建物の中には送信プログラムのプログラミング室やモニタリング室もあって、ここから同社では国道25号線を遥か彼方の北に上ったワイオミング州とコロラド州の州境に近いワイオミング州の町Cheyenneにアップリンク送信所を持っていてここから送信しています。

コロラドに本社を持つ衛星TV放送のDishNetwrk社の今年第3四半期の業績が発表になって、売上げは32億1000万ドルと前年同期に比べて11%の増加でしたが、利益面では2億4500万ドルと前年同期が8100万ドルであったのが3倍以上の大幅な上昇となっています。一方、DishNetworkの視聴者数の方では、この第3四半期では第2四半期に続いて2万9000軒を失っており、その総数は1430万軒となっています。同社では、今迄の競合相手の衛星TV放送会社DirecTVを追撃する戦略として新規加入者に対する視聴料金の割引やローエンドプログラムで数を稼ぐといった方向をとって来ましたが、今年の前半よりその方針を切り替えてハイエンド顧客を対象として焦点を当てる方向に転換しています。

昨年が34万6000軒の視聴者数の獲得をしていたのに比べて大きく変化しましたので、その為に視聴者数の大幅減少を見ていますが、売り上げ面ではそれでもわずかな伸びを示し、特に利益面では市場分析家たちの事前の予想を大幅に越える金額を稼ぎだしています。


DishNetwork社への入り口の道路脇に求人広告板
DishNetwork社へ入る交差点の角にこの様な求人広告の立て看板が出ていました。「顧客対応の代行者を求む。今募集中です。一時間当たり11ドルのボーナス給与を払います。」としてあります。現在コロラド州は失業者率が8.6%と高くこのような看板が出ると直ちに多くの人が応募すると言う環境にあります。

この交差点の反対側はArapahoe Community Collegeのキャンパスとなっていて、その校舎の一角には在留日本人の子供達の為に毎中土曜日に開かれている日本語学校の教室が1棟あって、毎週土曜日には日本人の子供達やそれを送迎している親達が大勢集まって来ます。

一方、DishNetwork社が現在行っているDVRを使用するダウンロードサービスがTiVo社からその所有特許を侵害しているとの訴えで裁判となっており、その公判が始まっていますので、その成り行きが注目されています。

また、同社では最近「TV Everywhere」と言う呼称での視聴者がライブプログラムやそれを録画したTVプログラムをスマートフォンやラップトップコンピューター、そしてTabletコンピューターなどでアクセスする事が出来ると言うサービスを開始しています。

このサービスを受ける為には視聴者は99ドル売りのSling社製のアダプターとDVR、またはSling組み込みのDVRを接続必要があり、視聴者は無料の「Dish remote-access Program」をダウンロードして使用します。そして、このサービスを受けるには、それ以外の月額料金は必要としません。


(4)衛星TV放送のトップ会社DirecTVの決算の様子

DirecTV社はこの第4四半期も引き続きケーブルTV各社から切り替える視聴者を多く獲得してその数の増加を継続しています。

先の第3四半期ではDirecTV社は全米で17万4000軒の新視聴者を獲得していますが、この第4四半期に於いても約20万軒の増加となるとしています。

一方、ケーブルTV各社では総計で今年の第3四半期には74万1000軒の視聴者数を減らしており、DirecTVへの切り替えに視聴者は何を魅力に感じているのか知りたいところですが、同社では同社の独占放送番組、とりわけプロフットボールの中継番組「NFL Sunday Ticket」やHDプログラムの数々、そしてDVRでの録画サービスなどが視聴者に魅力を提供しているとしてとしており、特に同社の1回限りの有料視聴サービスの価格が安価な事が、経済不況の続いているアメリカの視聴者に受けているものと思われ、それによる同社の収入が大幅に増加しているとしています。同社では「DirecTVは今年2010年は今迄でその売り上げ金額及び視聴者獲得数で最も良い年となる。」としており、2013年には年間300億ドルの売上げを達成する計画であると言っています。そして同社の現在の総視聴者数は約2700万軒ですが、2013年には3000万軒にする計画目標であるとしています。

また、DeirecTV社はラテンアメリカの中南米地域では現在最大のペイTVサービス会社であり、その地域での売上げが同社の市場占有率の上昇による売上げ面で同地域で3位という売上げ増加となっていると言及しています。

Castle Rockの町のメイン看板の山頂に聳える岩塊
DirecTVの衛星へのアップリンク送信所を撮影する為に、デンバーの町から約25マイル(40km)国道25号線を南下してCastle Rockの町へやってきました。この町は写真先方に見える山の上に残った岩の大きな塊が丁度お城の様にそびえ立っている事からこの様な町の名前が付けられました。

大昔はこの地域は海の底だったと言う事で岩は石灰岩ですが、このような形体の小さな山がコロラドには数多く観る事が出来ます。 しかしながら、この様に大きな岩が聳えたっているのはこのCastle Rockが一番です。
DirecTVのアップリンク送信所への入り口近くの岩塊
Castle Rockの町から更に南東へ車を走らせますと、DirecTVの衛星へのアップリンク送信所の入り口の道路へ差し掛かります。この道路の分岐点近くにはこの様な小高い丘のてっぺんが岩の塊で覆われている光景が観られます。多分この様な構造の大型にしたのがCastle Rockなのだと思われます。長年の間に周囲の土砂部分が押し流されて削り取られたのだと思います。

DirecTVアップリンク送信所の入り口の表示板
送信所へとたどる道路の分岐点です。ここから更に車で暫く走ったところに送信所が在ります。道ばたにDirecTVの看板が立っていて「雇用関係の連絡は電話でーーーー番へ問い合わせて下さい。訪問者は事前の予約が必要です。」と記されています。
DirecTVアップリンク送信所の入り口の警告版
分岐点から少し入ると「ここは私有地です。監視カメラでチェックしています。」という警告版が経っていました。これ以上入って行くと問題が発生しそうなので、送信所の撮影はあきらめて引き返すことにしました。
(5)ケーブルTVトップ会社Comcast でインターネットTVのテスト運用を開始

ケーブルTVで全米トップのComcast社では、今年始めより「Xfinity」と言う呼称でケーブルシステムの特長を活かすビデオTVプログラム、高速インターネット、デジタル音声電話の3つのサービスを束ねた市場への売込み攻勢をかけて来ています。新しい顧客獲得面では高速インターネット及びデジタル音声電話の面ではかなりの実績を上げてその成果が実を結んでいますが、本命のビデオTVプログラムの視聴者数面では月ごとに垂れ流し的にその数を減らして来ています。

そんな中にあって、最近大きな課題となって来ているインターネットとビデオTVサービスの融合と言う面で、Comcast社によるテスト市場運用が開始されています。

これは同社のジョージア州のAugustaなどでの限定された環境での試験運用で、現在のところセットトップボックスとDVRとを組み合わせて更にインターネットへのアクセスが可能となっているシステムをユーザーサイドで使用して行うもので、ユーザーはそのTVセットを通してWebに流れるビデオプログラムを検索して観るもので、ライブ番組とDVRに記録された番組をオンデマンドで楽しむ事が出来る様になっています。

このテストサービスを受けようとする人には「Spectrum」と言う呼称で、また参加者は自由にWeb検索を行いながら同社の特別接続によるTVショー番組などへのコメント参加も可能となっているのだと言っています。この市場テストはまだその規模は非常に小さいものですが、全米最大のTVプログラムの配信会社がそのテスト運用を始めたと言う事で、既に始まっている「Roku」とか「Apple TV」などのサービスシステムを使ってインターネットとTVビデオを融合させる事はユーザーにとって非常に便利なシステムに発展するという事で注目されています。

一方、こうした新規のサービスは新市場の開拓にはなりますが、一方で今迄のシステムの顧客を失うリスクを含んでおり、現在迄のところ先行しているGoogle、Microsoft、Appleといった各社のサービスが現行のケーブルTVや衛星TVへの浸食をするまでになっていませんが、長引くアメリカ経済の不調の影響などで、より安価な料金で容易に楽しめる可能性のあるこうしたサービスがいずれ席巻するのではないか、という危惧をケーブルTV業界では持ち始めていると言えそうです。

こうした前記の様な各社はケーブルTV各社の様にその配信インフラストラクチャーを手持ちしていないので、その多額な運用設備投資とコンテンツの購入費用に現在のところ苦しんでいますが、現在こうしたビデオプログラムの配信に積極的な例えばNetflix社などと手を組んで進めてくる事が予想され、目前に迫った事態と言えそうです。

ケーブルTV以外のTVプログラム配信業者としても例えばVerizon社の「Fios TV」ではYouTube、Facebook、Twitterのアプリケーションを現在既に提供していますし、AT&T社のU-verseではTVのスポーツ番組や電話のイエローページなどの機能にそうしたいわゆるSocial Mediaとの接続を計るテストを実施中です。

また、同業のケーブルTVの大手であるTime Warner Cable社でも少なくとも2011年中にはセットトップボックスを介さないでインターネットTVへ直接接続出来てビデオサービスが受けられるシステムの配布を準備していると公式に発言しています。これに対してComcast社では現在新しいセットトップボックスを開発中で、その開発コードネームは「Parker」と呼称されており現在の各TVチャンネルやオンデマンドビデオへの接続は現状のまま行えて、尚かつインターネットへの接続にコンピューターを使用出来る様にするものとなっていると言われています。

一方、現在Comcast社が進めているTVコンテンツ供給面での大手のNBC-Universal社の買収に関して、その法的判断を行うアメリカ法務省やFCCではそのコンテンツの新規のオンライン各社にとどこうってしまう事を危惧しており、この買収には消極的との見方が出ており、この取引はこの年内中にも取りやめになる可能性があると言われていますので注目です。

(6)Land Line電話事業主体から総合ブロードバンドサービス会社へと転換を計るQwest社の第3四半期決算

デンバーに本社を置きアメリカ中西部及び西部山岳の13州をカバーしている地方電話会社の大手Qwest社の今年第3四半期の業績が発表となり、売上げ面では9000万ドルの赤字を計上しています。

同社の主力事業である電話のLand Lineサービスについては、依然としてその利用者数の減少が続いている一方同社がその拡大に力を入れているブロードバンドサービスの方はハイスピードインターネットの利用者数がこの第3四半期で約4万軒の増加を示して確実なステップでの事業拡大をたどっているようです。

同社のLand Lineの総アクセスライン数は昨年同期に比べて約10%下がって910万ラインとなっていますが、今年の第1、第2四半期に於いても同様にそれぞれ11%ずつの減少となっていました。同社ではこの第3四半期には約700名の従業員削減を実施して、マーケテイング経費を大幅に削減しており、昨年同期に比べて約5%減の24億ドルの運営経費で賄う様になっています。Qwest社のこの第3四半期を終えてのバランスシートでは約13億ドルの負債を抱えて、手持ち資金としては2億ドル所有と言う報告となっています。

まだまだしばらく非常に困難な状態が継続する状況ですが、懸案のQwest社とCenturyLink社の吸収合併は来年の第1四半期中には決定する見込みで、先のこのレポートで紹介しましたデンバーの中心街の52階のビルに在るQwest本社ビルからの移転については、2012年の夏にそのリース期間が切れますが、現在のところまだ同社ではどうするかについての決定は為されていません。

以上、主力各メディアサービス事業会社の第3四半期の業績を中心に見て来ましたが、いずれにしても、2011年はこうしたビデオTVプログラム配信業界にとって高速インターネットとの接続による新規サービスを避けて通れない年となる事は確実の様相ですので、ユーザーサイドとしては大きくそのサービス環境が変化するとともにその各社間の激戦を観られる年となりそうです。

あとがき

映画のハリウッド情報を伝えるWeb Siteの「Hollywood.com」によりますと、アメリカでは夏が映画館の繁盛するシーズンですが、ハリウッドの各映画会社のこの夏の映画館への入場券収入が公表され、全米でのBox Officeの総売上は43億5000万ドルとなり過去の夏の売り上げの新記録となっています。

この数字は昨年の夏に比べて約1億ドルの増収ですが、これは映画館への入場客数が増加した為ではなく、入場券の価格がアップした事に起因しています。

この夏には約5億5200万枚の映画館入場券が販売されましたが、この数字は昨年の夏に比べて約2.6%低下しており、2005年以来最低の売り上げ枚数となっています。

また、今年の夏のトップヒット映画はデイズニー社の「Toy Story 3」でしたが、この入場券の売り上げは4億880万ドルを示したとしています。

TVプログラム配信メディアだけでなく、アメリカでは早くより映画館での入場者数も飽和状態となって来ており、映画の質や話題性などを高める努力がハリウッドの各スタジオでなされて、入場券が少し高くても多くの観客が訪れる様な方向になっていると言えそうです。

WRITER PROFILE

萩原正喜

萩原正喜

米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。