[ファイルベース収録カメラ最新案内]特別編 キヤノンXF305によるクロマキー合成トライアル
2010-05-21 掲載
前回のキヤノンXF305によるレビューを行いたい。今回は、クロマキー合成だ。 ビデオ画像を合成する方法としては色をキーにしたクロマキーと輝度をキーにしたルミナンスキーがあるが、いずれも元になる映像信号の精度できれいに合成できるか否かが決定されるといってよいだろう。
このため、SD時代のスタジオなどでは、カメラからのRGB信号を元にキー信号を生成するRGBクロマキーが一般的で、一旦VTRなどに記録した映像を使う場合アナログコンポジット信号からキー信号を生成するラインクロマキーとはその仕上がりに歴然とした差があった。
また、キー信号の生成方法やキー信号のエッジをどう処理するかも最終的な合成画面では重要な要素となっており、そうした専用のシステムとして古くからUltimatteが使われている。
ノンリニアでもUltimatteは健在で、Avid、Discreet、Adobe、Appleといった編集ソフト用のプラグインとしてUltimatte AdvantEdge/UltimatteRTが販売されている。通常のノンリニア編集システムにもクロマキーやルミナンスキーが行えるようになっているが、現在でも綺麗に合成を行う必要がある現場では、専用のプラグインなどを駆使しているのが現状だ。
今回、XF305で撮影した画像を元に合成を行うにあたって、一般的なノンリニア編集システムのクロマキー機能を使わずにUltimatteとROBUSKEYというプラグインを使用した。
クロマキー合成
クロマキーはブルーまたはグリーンのバックとの色の境界線で画像を切り抜くわけだが、このとき切り抜く境界線が曖昧だと綺麗に合成することができない。重要な要素は解像度と色数ということになるだろうが、ビデオの場合通常量子化ビット数は8bit(合成の専用システムでは8bit以上で処理することが多い)なので、綺麗な合成を行うには解像度が重要ということになる。
一般に解像度というと輝度またはGchのことだが、クロマキーの場合は色の解像度を考慮する必要がある。これは、ファイルフォーマットによって異なり、HDVやAVCHDは規格上輝度信号の4分の1しかない。XF305はHDVやAVCHDの2倍あり、クロマキー合成を行う上で、かなり有利といえる。さらに、走査線ごとにRBが反転しないので、境界線の精度も高いといえる。
クロマキーというと以前はブルーバックが多かったが最近ではグリーンバックを使うことが多くなってきた。フェーストーンに対して補色関係にある色で、原理的に抜きやすい色といえばRGBの内GかBということで決められた色だろうが、RGBクロマキーのように合成を行う場合常にカメラで撮影してリアルタイムで合成を行う訳にはいかないので、いったん記録したもので合成を行うためにブルーからグリーンになったようだ。
というのは、1インチVTRのようにコンポジットの信号を直接記録する方式からベータカムのようにコンポーネント記録を行うVTRが出現したころから、4:2:2で記録するようになってきたからと言えるだろう。4:2:2記録はデジタルVTRやファイルベース記録でも普及しており、HDの場合輝度信号のほとんどがG成分であることから、グリーンバックにした方がクロマキー合成を行うのに有利だからだ。
XF305の記録フォーマットは、表のようになっているが、今回4:2:2と4:2:0の比較のために50Mbpsと35Mbps、25Mbpsで記録した。フレームレートはいずれも60iで1920×1080に統一したかったが25Mbpsのみ1440×1080となっている。
まずは撮影した映像から、左から50Mbps/4:2:2/60i/1920×1080、35Mbps/4:2:0/60i/1920×1080、25Mbps/4:2:0/60i/1440×1080である。25Mbpsとの差は歴然だが、35Mbpsと50Mbpsは良く見ないとその差は読み取れない。
フォアグラウンドの映像は上記の3点を用意したが、25Mbpsはバックグラウンドと解像度が合わなかったので、実際にクロマキー合成を行ったのは、50Mbpsと35MbpsでUltimatteとROBUSKEYを使って合成を行った。
| バッググラウンドに使った画像は2種類で、いずれも60i/1920×1080。フォアグラウンドの映像はグリーンのバックに花をあしらったものを用意。クロマキー用に50Mbps/4:2:2/60i/1920×1080と35Mbps/4:2:0/60i/1920×1080を使用した |
ROBUSKEYで合成

ROBUSKEYで合成したオリジナル画像
ROBUSKEY。上が50Mbps/4:2:2/60i/1920×1080、下35Mbps/4:2:0/60i/1920×1080
Ultimatteで合成
Ultimatteで合成したオリジナル画像
Ultimatte。上が50Mbps/4:2:2/60i/1920×1080、下が35Mbps/4:2:0/60i/1920×1080
UltimatteとROBUSKEYでは、ROBUSKEYのほうが50Mbpsと35Mbpsの差が少ないように見えるのはROBUSKEYがグリーンバック合成に最適化されているからだろうか。Ultimatteの方は境界線部分が50Mbpの方が良いのが見て取れる。いずれにしてもその差は画面を相当拡大しないとなかなか判別できないが、これはグリーンバックを使った事とクロマキー用の専用ソフトを使っているからだと思う。
ちなみに、60i/1920×1080では1フィールドあたり1080の半分の走査線(垂直解像度)となるので、静止画にした場合差がでないのかと思い30p/1920×1080 でも同様にテストしてみたが、結果は60iとほとんど変わらなかったので、掲載は一般的な60iのみとした。このあたりは圧縮フォーマットを採用しているという事情もあるのかもしれない。
もっと明確に差が出るものと想像していたが、それほどでもなかったのは意外であった。ノンリニア編集ソフトのクロマキー機能を使えば、もっと明確に差が出たかもしれないが、ソフトのメーカーによる差もあるので、今回専用ソフトを使用した。
最後に、当たり前のことだがクロマキー撮影を行う場合、バックに使う背景紙やライティング、フォアグラウンドにバックがかぶらないようにするなど、注意が必要なものだが、最近の専用ソフトはある意味非常に優秀で、かなりラフに撮影してもなんとかしてくれる部分もあるようだ。もちろんクロマキー用にきちんと撮影すれば、本領を発揮してくれるわけで、今回はこうした条件が明確な差がでなかった要因の一つになっているのかもしれない。
SpecialThanks to:
ROBUSKEY
株式会社システム計画研究所
http://www.isp.co.jp/
Ultimatte AdvantEdge
フロンティアエンタープライゼズ株式会社
http://www.digitalvideo.jp/
背景紙
VERI GREEN13252
アナミ海外
http://www.anamikaigai.co.jp/pages/6_bd.html
チャート
Image Engineering社
http://image-engineering.jp/
[ Writer : 稲田出 ]
[ DATE : 2010-05-21 ]
[ TAG : Canon XF305 ファイルベース収録カメラ最新案内 ]
関連のコラム一覧
|
|
[新・ファイルベース収録カメラ最新案内]Vol.01 カメラ新時代のキヤノンの回答が浮かび上がるXF105新時代に向けてキヤノンが送り出す異彩を放つカメラとは? カメラメーカーがこぞってビデオを扱い始めた80年代、メーカーは、VHSやベータのデッキを電機メーカーからOEM供給していた。 .... 続きを読む |
|
|
[Canon EXPO Tokyo 2010]1.2億画素CMOSセンサーが魅せる未来のカタチ東京港区のグランドプリンスホテル新高輪において、キヤノンが5年ごとに開催しているCanon EXPO Tokyo 2010が11月10日から12日の3日間開催された。会場はホテル内 .... 続きを読む |
|
|
[ファイルベース収録カメラ最新案内]特別編 ソニーNEX-VG10レビュー変わりゆくカメラの仕様と分類 デジタル一眼による動画撮影は、最近のトレンドとなっているが、そもそもの始まりは、DOFアダプターであったり、RED ONEだったといえよう。これらは、 .... 続きを読む |
|
|
[ファイルベース収録カメラ最新案内]特別編 ソニーPMW-320小型ビデオカメラは民生機並みのサイクルとバリエーションで次々と新製品が発売され、肩乗せタイプのカメラの領域までもカバーしつつある。特に業務用のカメラは小型ビデオカメラの普及が著しく .... 続きを読む |
|
|
[キヤノン プロフェッショナルムービー体感会2010]デジタル一眼、そしてXF300/XF305盛り上がるキヤノン製品去る6月3、4日の両日、東京都港区港南のキヤノンSタワーにおいてキヤノン プロフェッショナルムービー体感会2010が開催された。このイベントは、6月下旬に発売となるビデオカメラXF .... 続きを読む |
|
|
[ファイルベース収録カメラ最新案内]番外編 ~メリット、デメリットとAVCHD運用の実態~AVCHDの存在をどう考えるか?訊いてみた AVCHDロゴ。AVCHD(Advanced Video Codec High Definition)は2006年5月にパナソニックとソ .... 続きを読む |
- [ファイルベース収録カメラ最新案内]特別編 キヤノンXF300/305 (2010-05-17)
- [Point of View]Vol.24 キヤノンが放つファイルベースカメラXF300/XF305とは? (2010-04-08)
- [ファイルベース収録カメラ最新案内]特別編 NXCAM(HXR-NX5J)を再検証! (2010-03-31)
- [GadgetFinder]Shoot.02 新しいヒントを教えてくれるビデオスナップとは? iVIS (2009-10-20)
- [What's UP HD!]Vol.03 映像革命は、ビデオではなくデジタル一眼カメラから始まる (2009-10-09)
最新のコラム一覧
- [raitank fountain]Vol.03 EOS C300インプレッション番外編〜"普段使い"のC300 (2012-02-03)
- [コロラド紀行]Vol.69 アメリカの郵便制度の台所事情 (2012-02-03)
- [DigitalGang!]Shoot.01 GoPro HD HERO2に思いを馳せる! (2012-02-01)
- [Do it]今求められるDIT(デジタル・イメージング・テクニシャン)とは? (2012-01-25)
- [岡英史のNewFinder]Vol.17 街のビデオ屋的3D制作2 ~JVCケンウッドのGY-HMZ1に注目! (2012-01-24)
関連のニュース記事
- キヤノン、"CINEMA EOS SYSTEM"を発表。4K動画記録対応DSLRも開発中 (2011-11-04)
- キヤノン CINEMA EOS SYSTEM発表会 USTREAM生中継 (2011-11-04)
- いよいよ来週11月3日、キヤノンの"歴史的発表" (2011-10-28)
- キヤノン、デジタル一眼レフカメラ最上位モデル「EOS-1D X」を発売。イントラフレーム記録のフルHD動画撮影に対応 (2011-10-19)
- キヤノン、世界最大級の超高感度CMOSセンサーを用いた天体観測についての記者説明会を開催 (2011-09-22)
- キヤノン、35mmフルサイズCMOSセンサーの約40倍の大きさを実現した超高感度CMOSセンサーを応用し、10等級相当の流星の広視野動画撮像に成功 (2011-09-16)
- 池上通信機、「Ikegami ファイルベースアプリケーション2011 展示・商談会」を開催 (2011-02-10)
- キヤノン、業務用ムービー機材を体感できる展示会を開催 (2010-05-17)
- イデアインターナショナル、プロフェッショナル映像クリエイター向けハンズオン・セミナーを開催 (2010-02-24)
- キヤノンの開発中業務用ビデオカメラで4:2:2 MPEG-2 フルHDをサポート (2010-02-02)
WRITER PROFILE
稲田出
(いなだ いずる)映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチールカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。
稲田出 のコラム一覧
Writer
|
編集部(99) PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートです。 |
|
稲田出(27) 映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチールカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。 |
|
石川幸宏(35) 映像専門雑誌DVJ編集長を経て、リアルイベントを中心とした「DVJ BUZZ TV」編成局長として活躍中。 |
|
小寺信良(23) 業界で噂の新製品を、AV WatchやITmediaのコラムでもおなじみの小寺信良氏がレポートする動画連載。 |
|
raitank(5) あまたの海外ソースを読み漁ってHDSLRを独学。海外から仕入れた情報を日本語で発信するグラフィックデザイナー/アートディレクター。 |
|
ふるいちやすし(44) 自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。 |
|
岡英史(19) バイクレース及びF3レース参戦など、映像とはかけ離れた経歴を持つ異色ビデオカメラマン |
|
手塚一佳(44) CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。 |
|
江夏由洋(13) 兄弟で株式会社マリモレコーズを設立し、ノンリニアにおける映像技術、映像制作を中心に、最新技術を取り入れたワークフローを提案している。 |
|
山本久之(26) 映像エンジニア。フリーランスで映像設備のシステムインテグレーションと、ノンリニア編集に携わる。 |
|
林永子(26) 2005年よりサロンイベント「スナック永子」を開催。通称「永子ママ」 |
|
鍋潤太郎(18) ロサンゼルスを拠点とするVFXジャーナリスト。 |
|
高野光太郎(4) 映像クリエイター。フリーランスにてミュージックビデオ、番組オープニングタイトル、CM、劇場映画、全てをデスクトップで制作。 |
|
安藤幸央(9) 無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPH ASIAやCESなど海外の注目イベントを紹介。 |
|
猪蔵(5) いつも腹ペコ。世の中の面白いことを常に探っている在野の雑誌編集者。 |
|
山下香欧(8) 米国ベンチャー企業のコンサルタントやフリーランスライターとして、業界出版雑誌に市場動向やイベントのレポートを投稿。 |
|
ヒマナイヌ(5) 頓知を駆使した創造企業 |
|
坪井昭久(5) 映像ディレクター。代表作はDNP(大日本印刷)コンセプト映像、よしもとディレクターズ100など。3D映像のノンリニア編集講師などを勤める。 |
|
萩原正喜(69) 米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。 |
|
岡田智博(7) クリエイティブクラスター代表。メディアアートと先端デザインを用いたコンテンツ開発を手がけるスーパー裏方。 |
|
江口靖二(5) デジタルサイネージコンソーシアム常務理事、慶應義塾大学DMC機構研究員などを兼務。 |
|
しらいあきひこ(2) カメラメーカー、ゲーム開発などの経験を持つ工学博士が最先端のVR技術を紹介。 |
|
今間俊博(5) 尚美学園大学 芸術情報学部 情報表現学科 教授。アナログ時代の事例を通じ、教育関連の最新動向を探る。 |
|
伊藤裕美(5) オフィスH(あっしゅ)代表。下北沢トリウッドでアニメーション特集上映を毎年主催している。 |
|
秋山謙一(17) PRONEWS記者。映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動中。 |
|
UserReport(10) 業界で話題の商品を実際に使ってみてどう感じたかを、各方面の様々な方々にレポートしていただきました。 |
|
System5 Labs(8) SYSTEM5スタッフが販売会社ならではの視点で執筆します。 |
