去る5月27、28日の両日、東京・港区のナックイメージテクノロジー本社において「ナックOpen House in Aoyama 2010」が開催され、ARRIのデジタルシネマカメラALEXA(アレクサ)の国内発売の発表とともに製品開発を統括指揮したARRI社長のFranz Kraus 氏による講演と実機の解説が行われた。なお、ナックイメージテクノロジーはBlackmagic Design社の国内販売代理店となったことから、DaVinci Resolve for Mac のセミナーも同時開催された。

ALEXA_0485.jpgARRI社長のFranz Kraus 氏による講演 ALEXA_7742.jpg  DaVinci Resolve for Mac のセミナーも同時開催された

ALEXAは昨年発表され、NAB2010で実機が披露されたものだが、SxSメモリースロットを搭載しProResフォーマットでの収録に対応したほか、ARRIの伝統とも言える回転ミラーによる光学式ファインダーが搭載されていなかったり、ARRIRAW出力が可能となっているもののD21にようにアスペクト比が4:3ではなく16:9のみであったりと今までのARRIのカメラとはコンセプトが違うため、注目のカメラとなっていた。

ALEXA_0665.jpg SxSメモリースロットを2基搭載 ALEXA_0335.jpg 光学ビューファーライクに使用できる電子ビューファーARRI EVF-1
モニター出力では16:9の範囲がフレーム表示される

ちなみにALEXAはNAB2010以前に発表されていたコードネームA-EVのタイプで、ARRIRAW記録とワイヤレスリモートに対応したA-EV Plusと4:3記録とオプチカルファインダーを装備したA-OV-Plusが順次発売される予定になっている。

ナックイメージテクノロジーでは、デジタルカメラシステムALEXAを6月より販売及びレンタル業務を開始。価格は構成により異なり、約¥800万〜(詳細は要問い合わせ)となっている。また、7月からはレンタルも開始する。

ALEXAの撮像素子は、D20やD21に搭載されていたものと異なり、ALEXAの開発に合わせて新たに設計されたALEV IIIが搭載されている。ALEV IIIは、スーパー35mmフォーマット単版式のCMOSセンサーで、アスペクト比は4:3だが、ALEXAのモニター出力では4:3全視野を確認できるようになっている。記録および出力は周囲をカットした16:9となっているので、モニター出力ではその範囲がフレーム表示されるようになっている。このため、記録範囲以外も確認することができるので、ブームマイクのフレーム内への入り込みや動きのある被写体を追う場合ある程度周囲の状況がわかるようになっている。

標準感度はEI 800となっており、200〜800 EIの範囲で13ストップ以上のラチチュードを確保できるほか、EI 160〜2580までの設定が可能となっている。ALEV IIIには、画素ごとにLo/Hi2つのADコンバーターが組み込まれており、16ビットで信号処理を行うことで、このような広範なダイナミックレンジを得ているが、同時に高感度かつノイズレベルも非常に低く抑えられており、200〜800 EIでのノイズレベルは一定に保たれている。

なお、ALEXAと同時に光学ビューファーライクに使用できる電子ビューファーARRI EVF-1を開発。ARRI EVF-1は、1280×720のF-LCOS(エフエルコス=Ferroelectric Liquid Crystal on Silicon)ディバイスを採用したビューファインダーで、約1フレームの低遅延のほか、外気温などの環境温度に応じてバックライトのLEDの発光量を調節して常に安定した発光量と色再現を実現している。

ALEXA_0345.jpg 側面の操作パネル面 ALEXA_0347.jpg ARRIRAWまたはHD非圧縮出力、モニター出力などに対応している

ALEXAはRec出力からARRIRAWまたはHD非圧縮出力が可能なほか、モニター出力、ビューファインダー出力、ProResによるSxS収録が行えるようになっており、個別にLUTの設定が行えるようになっている。ProResコーデックは、ProRes 422(HQ)とProRes 4444から選択可能になっており、本体に2基装備されたSxSメモリーに記録できる様になっている。Rec出力は2系統装備されているが、ARRIRAW はHD-SDI Dual Linkで接続するようになっており、タイムコードはいずれの出力からも同じものがエンベデッドされる。したがって、ARRIRAWで収録した映像のオフライン編集用にProResで記録したファイルを利用することも可能だ。

ALEXAの筐体はメモリースロットやコネクターのある側面パネルといったいくつかのブロックで構成されており、これらは将来SxSメモリーに変わる記録媒体やA-EV Plusのようなワイヤレスリモートに後から対応できるように設計されている。また、撮像部分もセンサーやマウント部分などいくつかのブロックで構成されており、現行のPLマウントだけでなく、キヤノンEFマウントやニコンFマウントへの対応も予定されている。ただし、フランジバックなどの問題もあり、ユーザーが自由にマウントを交換することはできないようで、それぞれ別モデルとなるか改造オプションになると思われる。

ALEXA_BVV.jpg 将来のアップグレードに対応できるようモジュール構成になっている ALEXA_0651.jpg ARRIとフジノンが提携して開発したAluraズームレンズ(手前)とangenieuxのOptimo Rougeレンズ

取扱:
ナックイメージテクノロジー 映像制作営業部
TEL 03-3796-7901、レンタル営業部:TEL 03-3796-7902
URL:http://www.nacinc.jp

ALEXAの主な仕様
  • 撮像素子:スーパー35mmフォーマットCMOSセンサー「ALEV III」
  • レンズマウント:PLマウント
  • フレームレート:0.75〜60fps
  • シャッター:5.0°〜359°
  • 感度:標準 EI 800(EI 160〜2580)
  • ダイナミックレンジ:13ストップ以上
  • SxSメモリ−カ−ド記録:ProRes 422(HQ)、ProRes 4444
  • HD-SDI出力:非圧縮HDおよびARRIRAW
  • 電源:DV 12Vおよび24V
  • 質量:約6.2kg(本体のみ)

WRITER PROFILE

稲田出

稲田出

映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチルカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。