XDCAM EXからの正常進化

今年のSONYの新製品ラッシュはもの凄い。NAB迄の前半は正直ENGカメラマンとしては物足らないと言うのが本音だった。確かにNEX-FS700と言うAVCHDフォーマットながら4KセンサーとHS(ハイスピード)を搭載した高性能カメラの登場もあったのだが、やはりそれらはシネマや制作の現場に近いカメラであった。勿論ENGの現場寄りのカメラとして、NXCAMカムコーダーHXR-NX30Jや、HD422収録が出来る小型のXDCAM HD422カムコーダー PMW-100等が登場してきたが、やはりこれらのカメラは所謂ディレクターカメラと言う部類であり、本番のカメラとしてはランクが落ちてしまうと言うのもしょうがないだろう。

しかしその元気の無さ?が逆に怖い感じでもある。それは丁度初代のXDCAM EXカムコーダー PMW-EX1が登場した年と感じが似ているなと思っていたのだが、ある日の深夜に海外からのフライング情報が飛び込んできたのが、MPEG HD422 50Mbps収録に対応したハンディカムコーダー「PMW-200」だった。

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ファーストインプレッション

実機を初めて見た感想は「普通」のカメラと言う事。これは悪い意味ではなく、この普通なカメラというのがカメラマンに取っては非常に重要な項目で、それはつまり操作性がある程度は予想が出来ると言う事であり、大雑把に言えば取説を読まなくてもアウトラインでの使用方法が解るという意味でもある。

この事はカメラマンなら特に意味が解ってくれるかと思うが、分厚い取説(又はCD-ROMからのPDF等)を読まずとも現場に持って行って収録が出来るという意味でもある。これは取説を読むのが面倒?と言う意味ではない。筆者はどちらかというと取説をボロボロになるまで読むタイプで、折角搭載している全ての機能を使わないと満足できないので、カメラにアサインボタンが12個付いていれば全てに割り当てそれを暗記して使える位は読み倒している。

一方で、レンタル等で時間が無い現場ではそんな悠長なことはやっていられない為に、少なくても最低限のスイッチの位置とメニュー階層は同じであって欲しい。XDCAM系のカメラだと大体一貫して居る為に解りやすいはずで、PMW-200は当にその辺に関してが変わってない=普通と言う意味合いである。メニュー関係で大きく違うところは422フォーマットに関する部分だけだろう。NXCAM系のユーザーだと、メディア系のメニュー位置が違うので若干戸惑いがあるかも知れないが、逆にCanon XF系ユーザーならほぼ同じなので問題はないはず。

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外観で感じることは、PMW-100からレンズ廻りを交換したと言うイメージが大きい。実際にはそんな事は無いのだろうが、SW廻りのデザインがほぼ同じなので余計にそう見える。と言う事はNXCAM系のユーザーもスイッチやアサイン関係は特に構えることなく使用出来ると言うことだろう。またレンズ部分もPMW-EX1Rと殆ど同じだ。

ただ若干ズームリングの粘りがPMW-EX1Rに比べると抵抗が大きい感じがする。重めのズームリングが好きな方なら結構良さげな部分だ。ワイド~テレ端に関しても数字的には全く同じなので画質も同じなのかと思えば流石にそんなことはなく、撮像板より後ろ部分の映像エンジンをリファイン・チューニングすることにより感度F11、SN比56dBとENGショルダーカムであるPMW-320よりも高画質、それに伴いLCDもWVGA(852×480)123万画素にグレードアップし、ピンが掴みやすくなった。

さらに、今後のアップデートによる機能としてWi-Fiリモートコントロール(別売オプションCBK-WA01が必要、今冬ファームアップデートで対応予定)がある。またPMW-EX1Rで特徴的であった回転式のグリップが固定式に変わり本体重心位置に近くなる事によって、手首への重量負担が軽減された。気になるI/O関係はアナログ系からデジタル系まで全てが過不足することなく付いている。TC IN/OUTは勿論GENLOCKも装備されているので通常のマルチカムシステムにも何ら問題なく組み込めるはずだ。

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総評

PMW-EX1Rと比べると筐体はほぼ同じで重量もほぼ変わらず、重心位置とグリップの位置関係が多少変わったお陰でPMW-EX1Rよりも持った感じは軽く思える。大きさ的にも他の4:2:2カメラ(XF305やHPX250)に比べると明らかに小さいPMW-200。PMW-EX1が登場したときより4:2:2の噂は絶えなかったが、今回ようやくその高画質なシステムを導入したことになる。

日本ではまだ50Mbps/4:2:2と言うのは一部の事でしかないが、例えばドイツでは4:2:2のシステムでないとポスプロに持ち込めないと聞く。更に海外でのVIP取材では大きなENGカメラを嫌う方も居ると言う。そんな中でXDCAMシリーズは他メーカーに一歩引いていた部分をこれでゼロにしたと言うことだ。

システムの連携にしても上位機種であるPMW-500と100%互換で扱える。これでハンディカムでの50Mbps/4:2:2は全メーカー横並びとなった。ここで何を選ぶかはユーザーの自由だが、こうなってくるとどのようにシステムを組んでいる、又は組むかによってそのワークフローは大きく変わるのではないだろうか?そこで選ぶべきシステムというのも自ずと決まってくるのかも知れない。

※サンプルをご覧になる時は、解像度をHDにしての視聴をお勧めします。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。