HM650はダブルFALCONBRID

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GY-HM650(左)とGY-HM600(右)。外観の違いはこちら側からはほぼ無い

GY-HM650/GY-HM600シリーズ(以下HM650・HM600)に関してはNAB Show 2012から個人的には注目していて、その都度何かある度に機材検証でTESTや現場に投入してきている。多分日本では一番この機種を使い込んでいるカメラマンだと自負出来る。そんな中に昨年のInterBEE 2012前にようやくHM600が販売されたのだが、その個体(ロット)は完成系と言うには少々厳しい部分もあった。勿論根本的な性能が悪いというわけではない。クラスNo.1の高感度に加えFUJINON製23倍と言うこちらもクラスNo.1の倍率のレンズが悪い筈がない。ただ一つ残念だったのが、個体差もあるとは言えAFの焦点速度や精度が従来のスタンダードだったHXR-NX5JやHVR-Z5Jに比べると”気持ちよく”使えると言うには現場によっては厳しい場合があったことだ。それが発覚したのがInterBEE本番の1週間前。そこからわずかの期間で最新ファームを上げたのはJVCが如何にこのカメラに気持ちを入れているのかが良く解る。

そして12月に入った時点で真打ちとも言えるHM650が登場した。外見上は殆ど見分けが付かないHM650とHM600だがその中身は随分と違う。ハード部分である基本的な所は全く変わらず主にソフト面にその違いが出てる。大きく違う部分を簡単に書き出してみよう。

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HM600を標準と例えるならHM650は拡張機能付きと言う位置付けで良いだろう。価格にして約10万円の差があるが、これは好みと予算で選ぶレベルだ。通常の撮影形態でMXFやProxyデーターを活用しない環境であればHM600でも十分だ。画質を含めた基本性能はHM650と600では全く違いがない。

カメラコントロールとしてのWi-Fi機能

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本体後部のホスト機能対応USB2.0端子にWi-Fiアダプター等を装着出来る

HM650の注目すべき機能にホスト機能対応USB2.0端子がある。ここに様々なUSB接続のネットワーク機器を付けることにより、カメラ本体のFTPクライアント機能にアクセスし、カメラをコントロールすることが出来る(ブラウザー経由)。まだクライアントソフトも初期バージョンのために基本的なメタデーターの書き換えとズーム操作程度に留まっているが、それでも舞台撮影やミドルレンジでの撮影形態に多いワンマン2カメの時には大きなファクターになる。なおアクセスポイント経由での接続かPtoPでの接続かはWi-Fiアダプターの仕様による。検証済みのアダプターは随時下記のメーカーHPに掲載されているのでそれを確認されたい。
http://www3.jvckenwood.com/pro/video/gy-hm650/feature02.html

さて、そのネットワーク機能のアクセスと動作だが、この様な感じとなる(AP/アクセスポイント使用の場合)

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今回は数千円程度のポケットWi-Fiをバッテリー駆動で使用。DHCP機能を使ってカメラ本体のプライベートIPアドレスは自動取得したが、勿論手打ちで固定IPを割り当てることも可能。環境によって複数ある場合は各々ファイル名を付けて保存することが可能だ。

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カメラ本体に割り振られたIPアドレスをブラウザーから打ち込むと、カメラ本体へのログオン画面にユーザー名とパスワードを打ち込むと各種設定にアクセスが出来る。カメラコントロール部分を除けばメタデーターの編集がメインとなる。

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メタデーターに関しては必要にして十分なテキストデーターがあるので各々のワークフローにあった処理をすれば良い。クリップデーターにはTCを含めたファイルのデーターが一覧に出るので、収録の合間に確認出来るのは便利だ。

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カメラコントロール部分に関しては、今の所はズームしか動かせない。ズームポジションのプリセットを3ヶ所セット出来るので、舞台撮影での置きカメ的な使い方では、全景ポジションから幕ポジションと中幕でのポジションをワンタッチで変更できる。映像自体も遅延があるのは認めざるを得ないが、必要にして十分な機能だと言える。コントロールできる距離だが、単純に見通し距離で実測25~30mは全く問題なく途切れることも無く運用できた。この先のアップデートではもう少し細かいカメラコントロール(フォーカス・アイリス・色温度等)も視野に入っているとの情報も耳にしているが、現状のズームコントロールとRECコントロールだけでも十分に使用出来る。

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カメラポジションのプリセットを使用すれば、画角の変更も一発で決まる。勿論ズームレバー自体を直接動かして微調整も出来る。基本はブラウザベースなのでタブレットやスマートフォン以外でも通常のPCからでもコントロールは可能。但しブラウザによってはオーバーレイ機能が引っかかる時もあるので動作環境は事前にチェックしたい。

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左から順番に5m・15m・30mでのコントロール画像。遅延のタイミングは距離にはほぼ関係なく、いつも一定で動作を確認できる

その他

HM600からHM650になってから大きく変わった部分では前記したWi-Fiでのコントロールが一番印象深いが、更にソフトウェア部分での変更はかなり細かい単位でアップグレードをしている。その多くはフォーカスの追従性を含むレンズ廻りのコントロール部分だが、ソフト部もかなり改善されており、カメラ全体のトーンを変える為に画質重視モードと感度重視のモードを切り替えることもできる。この感度重視のモードにするとカメラGAINの数字にマイナスdBが現れることになる。

総評

とにかく、このHM650シリーズは常に進化しておりファームアップデートが多い。この個体も発表された時のデモ機と比べると特にAF機能が全く異なる。勿論現状のファームの方が良い。初期ロットのHM600のAFに比べると、全く別の機種の様にさえ覚える。HM650シリーズは色んな所(blog等)でも話題になっている。勿論良い話題だけじゃなく本機にダメ出しをしているテキストもあるが、少なくともココまで色々な情報が出て注目されているハンドヘルドカムコーダーはここ最近では全く無かった。ここまで注目されている本機の更なるファームアップに期待をしたい。

OKA_NF_26_20.jpgのサムネイル画像 OKA_NF_26_21.jpg

左:録画フォーマットは5種類+SDが選択できる。右:拡張モードと標準モードはここのメニューから選択できる

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。