最近のManfrotto三脚の変化

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今、撮影スタイルが変わって来た様に感じている。やはり大判素子タイプのカメラがDSLR以外にビデオカメラというジャンルで登場した事が大きい。アナログのβカムの頃は確実に2/3inch×3CCDが前提で、ロケ等なら更にP-70IS+V5、レンズはB4マウントのJ8・J14・J18の3本あれば、どんな仕事でも受けられるほどスタンダードだったはず…。

ロケ用三脚はVinten Vision10が圧倒的に多かった。この組み合わせは、軽量と言う意味も含めてまさにデファクトスタンダードな組み合わせであり、これ以外は全く考えられなかったのだ。今でも、機種は変われども三脚に関してはVision10と言う使い方は少なくない。Vintenのシリーズは、三脚界の名機と言っても良い。筆者も例に漏れずVintenはVision5・10の2本を所有している。少し前まではVinten以外は三脚にあらず!と断言していた位なのだ!

…しかしここ1年間、Vintenを全く使って無いと言う事実!現在メインで使用している三脚は、Libec RSシリーズとManfrotto 509HDである。この2つのメーカーも三脚メーカーとして古くから在るが、正直ホンの1~2年前までは性能には疑問が残る物であった(個人的に)。今では確実にそれも払拭された!それほど急激に進化を遂げたと言う事だ。今回はその中でManfrotto 509HDの話…では無く、雲台の下の脚部分のリポートである(前フリ長過ぎ…)。

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4段カーボン三脚のその破壊力

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Manfrottoのヘッド509HDには元々545GBと言うENG三脚との組み合わせ(キット)が存在していた。脚はツインチューブでの組み合わせで3段三脚、その伸長範囲は47cm~173cm(カタログ値)と、これまた一般的な長さより若干長いかな(それでも数cm程度)程度。この高さは各社とも同じ様な物なので、例えば記者会見などで一斉に高くしても殆どが同じ位の高さに揃っている。

ところが、ある現場で1台だけ飛び抜けて高い位置にカメラが在るのに気付き、確かめたところ脚が545GBではなくManfrotto 536と言う三脚だった。この536三脚の特色は4段のシングルチューブを採用している点である。通常、一般的なENG三脚が3段のツインチューブなので、シングルと聞くと若干強度不足かと思われがちだが、536の場合はカーボンファイバーの織り込み強度が増しており、耐荷重は全く問題ない。なお、カーボン=軽量と思う方が多いが536も実重量は決して軽くない。545GBと比べて250g程度軽いだけだ。もちろん同じ重さならアルミに比べて確実に強度が上。

しかし536は545GBと違ってグランドスプレッダーが無いため同じスプレッダーを装備すると逆に400g重くなる。耐荷重25kgは一般的なヘッドとENGカメラを搭載しても全く不足することはないが、さすがに4段フルに延ばしたときの捻れ剛性は若干感じてしまう。

※ 最高4段フルの状態ではワンボックスの上から更に1段分まで伸ばせる


この高さは既に武器!

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とにかくこの高さは凄い。写真用の三脚では背の高い物があるが、536はそれと同等の高さを誇れる。この位高いと、脚立もENGでよく使われる2段位の物では話にならず、4段くらいの脚立がないとしっかりとカメラは振り回せない。その代わり、この高さからならカメラと被写体の軸線上に邪魔なものを映さずによりクリアーな映像が撮影できる。またこの高さが担保される事は、発表会や舞台撮影等で、舞台全景を撮る引きカメラ用に最高でもある。公演中にカメラ前を横切る無粋な観客がいても、その影すら映らないだろう。またこれだけの高低差があるので、設置場所も全く選ばずにカメラポジションを決めることが出来る。

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ここまで高い三脚だが、縮めるとそれなりにコンパクトになるのは流石に4段三脚ならでは。ツインチューブ仕様(3段)の545と比べてもほぼ同じ長さで収納することが出来る。余談だが、この様に小さくつぼめた状態でも自立できるのはManfrotto三脚の特色でもある。又、標準装備として100φを75φに変換するリングアダプターも付属しているので、小型ヘッドや他社製の雲台を搭載することも可能だ。

純正の自在アームも便利

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509HDや504HD等の新しいヘッド(雲台)部分には左右に一対ずつの3/8inchネジが切られている。ここに色々なアクセサリーを取り付けられる様になっているのだが、もちろん純正品でのアームも発売されている。それが小型ハイドロスタティックアーム819-1だ。自在アーム自体は最近では色々な種類があり中華製の物では5千円台の物まであり、ロックにイマイチ疑問を感じる製品もあるが、流石に819ではそのような不満も感じない。動きも若干の粘りがあり写真の様なやや重めのモニターを取り付けても色々な角度でキッチリと固定できる。アーム自体もベース部分よりもモニター部分(1/4inchネジ)の方が若干長い仕様なので中々使い勝手は良い。536と組み合わせれば、舞台撮影等ではかなり便利なはずだ。

総評

少し前まで、Manfrottoは「ビデオ三脚としてはヘッド部分が弱く、業務用途で使うには少々使いにくい」と言う様なイメージがあった。脚部分に関してはやや重量があり頑丈で壊れないと言われていたが、新型ヘッド509HDや504HDの登場により三脚システムとしてしっかりと評価できる物になった。今回レポートしたカーボン脚の536に関しても、509HD・504HD共にキット販売がある。他のツインチューブ仕様の三脚キットに比べると脚単体で若干高い分536のキットはその中でも高価である。しかし買い足しで選ぶなら是非536をお勧めしたい。一度店頭で実物を見てもらえば解るが、4段三脚の見上げる高さには圧倒される。機材リストに1本あれば確実に重宝する筈だ。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。