アクションカメラ

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通常のビデオカメラとしては驚異的に小さい

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GoProが登場して、いわゆるスポーツや仕込み系のカメラの世界を劇的に変えた事は言うまでもないだろう。それまで車載カメラに代表されるようなアクション系のカメラは放送機器の非常に高価なケーブル付きのカメラしか無く、手を出せる物ではなかった。とは言えハンディーカメラも急速に小型化しているので、これを上手く使って…と言うか無理矢理取り付けて撮影した事実もつい最近の事。

車載カメラは、特にレーシングカー的な撮影ならロールバーにマウントする型でそんなに難しい物ではなかった。オートバイやMTB等の2輪車だと取り付けの制約も大きく、無理矢理ヘルメットにSONYの小型ハンディカムをガムテープで付けた事もあったが、流石に重すぎて100%全開で走ることは不可能だった。

そんな中で登場したのがSONY HXR-MC1、通称「まめカムHD」と言うヤツだ。このカメラはケーブル付だが、カメラ部分とレコーダー部分がセパレートで尚かつ、レコーダー部分でモニタリングしながら多少のレンズコントロールが出来る優れもので筆者も珍しくデモ機を申請する前に購入、今でも持っている。

しかしそのまめカムHDの登場から1年も経たない内にGoProが登場、その小型筐体とワイドアングルに撮影できるメリットから、アクションカメラの代表になってしまった。その後SONYやJVCでも同じ様なコンセプトのアクション系カメラが登場、LCDモニター付きや手振れ補正付きという高機能なカメラとして市場に出てきた。そのいくつかはこれまでも幾度か紹介して来た。

アクションカメラに違和感…

改めてアクションカメラの定義って一体なんなのだろうか?筆者が思うには、2つある。一つ目は、小型軽量でワイド画角。そして二つ目は、防水機能や壊れにくいという条件を満たしている事だ。軒並みアクションカムと言われるカメラは、ワイド画角だ。そして条件を満たす代表格は、JVC ADIXXIONシリーズだろうか?アクションカム代表のGoProも無茶をすれば壊れやすい。

そんなアクションカメラではあるが常々違和感がある。例えば、アクションカメラを使った映像を見ると、とにかくワイドな映像が多い。大体150~170°前後が定番だ。実は筆者的にはイマイチ好きになれない。そんなに広い映像をドライバー(運転する側)は感じてないはずで精々120°プラス程度、速度が上がれば尚更だ。

もう一つの違和感は車載映像だけで貴重な撮影時間を潰すのは勿体ない。つまり車載以外でもアクションシーンは撮りたいがレンズワークが出来ないカメラではそれも出来ない。かといって何台ものカメラを持ち込むのもフィールドによってはナンセンス。そんな事を思っていたらJVCからもの凄くピンポイントの超小型ビデオカメラが登場した、それが「GZ-N1」だ。

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ADIXXIONと比べるとその大きさが良くわかる

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自転車用のヘルメットに付けても大きさは気にならない


BabyMovieと定義される理由

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小型軽量の筐体で小型の吸盤で十分に固定が出来る

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GZ-N1は、題して“BabyMovie”。上手い事言うなと思う。母親が赤ちゃんを撮るために特化したカメラだ。最近のJVCは本当に上手い部分を取り込んでいるカメラが多い。

色も優しい色の3色がラインナップされている。ぱっと見た目ではアクションとは全く縁がない様に見えるが、ワイド端29.4mmからの光学10倍ズームは通常のビデオカメラとしても十分実用的。筐体の大きさは同社のアクションカメラと比較しても十分に小さい。

しかも強力な手振れ補正やLCDモニターも付いているので撮影時の画角調整や映像のチェックも簡単に行える。また外部給電ジャックも付いているので大容量SDカードを使えば仕込み系のカメラとしても申し分がない。またHDMIから映像スルーアウトが出ているので、モニタリングも同時に行うことが出来る。

8GBの内蔵メモリーなので途中でSDカードの容量が足りなくなっても最高画質で約35分の録画が可能だ。1/2.3型の裏面照射撮像板やF値/F1.6~2.0の明るいレンズと共に暗いシーンでも問題なく撮れる。撮影モードの基本はインテリジェントオートモードが本流だが勿論細かく設定できるマニュアルモードもしっかりと在る。ボディーカラーに関して、これは好みの問題にもなるが、気になるようなら黒パーマセルでも貼り付けるのもアリだ。

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小さい筐体で仕込みも特に考えることなく出来る

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いつもの如くMTBに取り付けて里山を走ってみたがアクションカメラとしても十分使える。特に手振れ補正の強力なアクティブモードでは微振動がかなり取り除かれ安定した映像が手に入る。この大きさならヘルメットマウントで使用しても重さは気にならずにすむ。機材車の窓(内側)に吸盤で取り付け、夕方~夜の車載映像も試したが全く問題はない。

しかもこの時の吸盤はiPhoneをドライブレコーダー代わりに使っている物で十分対応出来た。また仕込みカメラとしてブライダルの現場で使ってみたが、このピンクの筐体が披露宴会場の装飾花近辺に仕込むにはすこぶる相性が良い。変に黒色よりも本機のピンク色や白色はブライダルの現場なら逆にとけ込む色と感じた。またGZ-N1には本体に簡易的な脚が付いておりカメラ自体を2段階の角度であおる事が出来るので、仕込み自体も場所次第で非常に簡単に出来る。

やっぱり残念な部分もある

まず決定的に厳しいなと感じた部分はAF部分。AF自体はかなり精度が良いのだが、縦方向に大きな衝撃(今回ではドロップ部分)が加わるとフォーカスが強制的に動いてしまう。これはカメラ本体のセーフティー機能にも関わっているかと想像できる(他メーカーのAF機能も同じ様にセーフティーが働く)。これはMFにしても動いてしまい、AFの時はそこから自動でフォーカスを合わせに行くがMFではフォーカスがずれたままになるのでここは撮る形態によって使い分けるべきだろう。

もう一つはLCDモニターを畳めないこと。LCDを閉じてしまうとRECもそこで切れて収録が止まってしまう。LCDを裏面にした状態で畳むのはOKなのでここは注意が必要だ。ファイル形式は一般的なAVCHDなので既存のNLE編集ソフトで全く問題はない(筆者の環境はEDIUS Pro7)。またEverio MediaBrowser 4が本体メモリー部分に実装されているのでカメラをストレージモードでPCに繋ぎインストールすることでNLEが無い環境でもファイルの管理・閲覧・簡易編集が可能だ。

総評

GZ-N1がアクションカメラの代わりになりきれるかと言えば、流石にそれは無いだろう。しかしアクションカメラと言うより超小型のビデオカメラを搭載したという考えならそれは十分にアリと判断できる。画質に関しては間違いなくアクションカメラのレベルから一つ上を行っている。

ワイドレンズ過ぎる映像はリアリティーが無くなり、同時にスピード感も無くなる。最終的には歪みのない映像がやはり一番良いはず。筆者の知っているかぎりGT-Rで最高の映像を撮るために屋根にハイハットをボルト止めしてPMW-320を搭載して走った方もいるくらいだ(勿論、クローズドコース)。ピンポイントのカメラの筈が実はマルチに使えるのがこのカメラの面白いところだと思う。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。