無知は罪。神は細部に宿る

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マイナーな物に神は宿るとは誰が言ったか不明だが、まさしく大手ではない企業から産まれてくる製品にはよくここまで作ったなという製品が多い。

メジャーな企業であれば広報や取り上げるメディアも多く、一通りの情報は簡単に手に入れる事が出来る。しかしそれだけを見るのではなく、マイナーな企業(良い意味で)にも目を配ると多くのお宝が散見している事に気づくのである。その中には、知っているつもりが実は表面上の薄っぺらな部分しか見ていなかった物も沢山あった。それは本当に恥ずべき行為なのだが例えば三脚メーカーのLibec。10年以上前であれば、筆者はまさにVinten原理主義者だったのだが…。ご存じの通り、近年のLibecの製品ラインナップは目を見張るばかりである。しかしながら昔の筆者と同じ様な考えの方が今でもいる事は確か。

ブランド名だけではなく、実際に使用して分かる秀逸な物は、多分まだまだ知らないだけで色々あるのかも知れない。そんな事を感じながらまさにMade in JapanなAZDENにも同じ事が言える。今年のNABでプロオーディオ部門に出品していたAZDEN(アツデン)に目を止めるとなにやら見たことがない製品群。これは話を聞きたい!ということで東京都三鷹市の本社にお伺いすることが出来た。

ワイヤレスシステムに注目!

個人的には一番の目玉、SONYスロットイン互換レシーバー1201シリーズ。残念ながら国内販売は未定

AZDENと言えば一番に思い出すのがワイヤレスシステムだろう。一般的には低価格で性能もRAMSA等に比べると今ひとつ?と思われる方も多いはず。筆者もその1人だった…。しかし今回の取材でそれらは過去の技術であり、間違いであるということがわかった。

NABでの展示で筆者が最も注目をしたのがSONYスロットイン互換レシーバーである1201URX/Si-Sだ。既に同社はPanasonicやIkegamiのUniスロット互換レシーバーUR-1100は既に販売しているがSONY互換となると話は別だ。カメラVF上にレシーバーの情報が返ってくるのも純正品と全く同じだ。更にこのスロットインとは別に、Vマウントプレートを搭載した1201URX/VMもラインナップされている。これならSONYカメラだけではなくVマウント搭載カメラならそのまま装着可能だ。自作RIGでハンドヘルドカメラをショルダータイプにしているシステムにも使用ができる。特にDSLR系では音声の取り回しの苦労を、このレシーバーでその辺の事情を一気に解決することが出来る。将来はスロットインタイプでのデュアル受信も可能になるらしい。しかし残念なのは1201シリーズは全て日本国内では未発売。コストパフォーマンスも性能も高い製品がメーカー所在国で販売されていないのは非常に残念!


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A型/B型UniSlot仕様ダイバシティーレシーバー「UR-1100」

このクラス唯一の小型デュアルレシーバー330UPR。小型デュアルバンドレシーバーは既にSONYやRAMSAでも販売されているが、それらはどれも中・大型ENGカメラ用に作られている。放送規格に準拠しているのでかなり高額なシステムとなってしまう。仮に価格の事を無視してもその大きさは流石にハンドヘルドサイズでは運用が難しい。その隙間を縫ったような製品がまさしくこの330UPRなのに!

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UHF B型デュアルチャンネルワイヤレスレシーバー「330UPR」

初期型はデットポイントが出やすく、運用にやや難ありと言う意見も聞いたことがあるが、この機種は既に色々とバージョンアップ済みとの事。このサイズでデュアルバンド受信出来るハンドヘルドカメラは元より、最近の4ch収録できる中型ENGショルダーカメラなら合計4波の受信も可能と言うことで、ピンマイクやワイヤレスを多用する最近の現場では重宝する事間違いないだろう。

更にこのデュアルレシーバーも中期的にパワーアップした物が登場予定との事。この手のものは大手メーカーでは中々形に出来ないのでAZDENの様な小回りの利くメーカーならでは。

マイク&ミキサー

AZDENの製品といえば、マイクだろう。特にガンマイク系は幅広いラインナップで、DSLR入門用の小型ショットガンからゼンハイザー互換とも言えるSGM3416シリーズまで取り揃えている。SGM3416は更に日本人の声に非常にマッチしている。この辺はデーターグラフ等では表現出来ない部分でもあるが…。その違いは、ある種の撮影現場では飛び抜けて使用率が高い事でも良くわかる。

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またラベリアマイク(ピンマイク)も興味深い製品がある。NHKと共同開発と言う形にもなったAZM-TIIは従来のピンマイクとその装着方法が変わり、 衣服から一切コードがはみ出さず洋服の中にしまえる機構になっている。マイク特性は無指向性の為に上下左右、装着方法によっての音質の変化は無い。

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また収音した音声をコントロールするミキサーも従来からあるタイプに加えて、音声出力にUSBアウトが装着された新製品がNABで発表されている。これは一般的な音声ストリームをUSBから出力させるだけの単純明快なもの。その先のキャプチャーは従来からあるソフトをそのまま使う事でオペレートのミスが無くなるはずだ。残念ながら今の所、シグマのミキサーの様にミキサー本体での録音機能は搭載されていないが、せっかく技術力がある会社なので是非その機能も搭載して欲しい。

総評

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全ての製品が面白く、魅力ある物に見えてしまったAZDEN。もちろん製品として残念な部分もある。素晴らしいメーカー故にあえて、書いておきたい。製品そのものと言うよりもAZDENと言うメーカーに対してだ。どの様なユーザーがどの様な現場でどんな風に使っているのか?その部分をキャッチアップしているのだろうかと感じてしまう。ユーザーが少ないのか認知度も低い。これは本当にもったいない事で、技術があってもその先をどの様に展開していくのか?次の新商品からは是非協力したい!ユーザーとがっつり組んで商品に反映させてほしいところだ。

この辺の流れは、前記したLibecの三脚と同じ流れなのかもしれない。現在のLibecは、ユーザーからの声を反映した途端に素晴らしい三脚を登場させている。AZDENにも是非同じ様になって頂きたい!個人的にも応援している!ファン故の意見として少々きつい言葉となったが逆にエールとして受け取ってほしい。

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AZDENは、元々がアマチュア無線機器メーカー。ワイヤレスに関してはすでに色々なノウハウが基礎にある。多目的な通信(インカム等)にもめっぽう強い。他のワイヤレスでもここ迄精通しているメーカーは少ない。今後は音声だけでは無く映像のワイヤレス化にも是非期待したい。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。