XA10からの進化は如何に?XA25/XA20の登場の意味は?

CanonからXA25/XA20が発表されたときにこのカメラは売れまくると感じた。これまで業務用カメラの入り口に位置するモデルは民生のビデオカメラにXLRオーディオアダプターがついたものが多かった。ところが今回のXA25/XA20はレンズ、センサーそして操作系まで完全に業務用として新設計されている。民生ビデオカメラからステップアップするユーザーからテレビや報道などのディレクターカメラまで幅広いユーザーに受け入れられると感じた。発売前で取材にひっぱりだこ故に短期間のみのテスト。映像の評価などは先送りし、主に前モデルXA10から大きく変化した操作性にフォーカスを絞りファーストインプレッションをお送りしたい。XA25とXA20の違いはHD-SDI端子とXLRに対応した音声入力グリップの有無である。今回のレポートでは特にXA25/20共通の操作性についてレポートする。

整理された端子レイアウトにうっとり!HD-SDI/HDMIの同時出力が魅力!

Kawai_XA25_1.jpg

上からみるとズングリ

XA25/XA20はXA10から比べると右側が大きく膨らんだ印象である。これはハンドヘルド時の重量バランスを親指近辺にするための工夫らしく腕への負担も少ない。グリップは肉厚になり端子などの位置も整理されている。しかしレンズ部や液晶部分のサイズは変わっていないので業務用ビデオカメラとしては最小クラスに分類されるだろう。XA10ではHDMIがグリップの中心にありケーブルを挿すとハンディで使えなかったり、ヘッドフォンやAVケーブルが液晶側にあったりしたがXA25/20ではすべて右側にまとめられグリップを握った手とも干渉しないようにリデザインされた。

Kawai_XA25_2.jpg

筐体の右側。グリップベルトは外せる

バッテリー寄りに電源とコンポジットのAV出力、レンズ側にヘッドフォン、マイク入力、USB、ミニHDMI、リモート端子がまとめられている。リモート端子の台座は出っ張っておりリーベックやソニーのL字型リモートコントロール端子をつけてもケーブルを逃がしやすい。XA25にはここにHD-SDI端子が装備されている。このサイズでHD-SDI端子があるのもうれしいがHD-SDIとHDMIを同時出力できる本格派だ。同時出力を選んでいる場合はHD-SDIの信号にHDMIも準じるかたちになるが、個別出力ならHD-SDIは1080i/720p/480i、HDMIは1080p/1080i/720p/480p/480iから選べる。HD-SDIでスイッチャーに送りHDMIからフォーカス用の外部モニターに送るなどの使い方が出来る。AV出力からのコンポジットは4:3のサイドカットか16:9のレターボックスを選択できるが、スクイーズには対応していない。AV出力はHD-SDIとは同時出力できるがHDMIとは出来ない。

手にフィットする肉厚グリップとシーソー型ズームレバー

Kawai_XA25_3.jpg

グリップの指休めとファンクションノブ

グリップに手を入れてみると肉厚でXA10から比べると手の甲がしっくりくる感じ。サポートするベルトの部分も感触が格段に向上している。グリップベルトは完全に着脱できるタイプなので三脚でしか使わないユーザーははずしておくことも出来る。ズームレバーは業務機らしいシーソー型でキヤノン機特有の細かいズーム速度の設定と相まって実に使いやすい。XA10ではリモートズームなしにスムーズなズームは難しかったがXA25/XA20では慣れればこのシーソーズームでも充分かもしれない。

シーソーズームは真ん中が深くえぐれており、人差し指を休めるスペースもあるので誤操作することもない。録画ボタンの横にも指休めがありこのあたりの設計は小さい筐体ながら業務機らしい心配りだ。録画ボタンと指休めの間にファンクションボタンとファンクションノブがある。これはカメラの設定をすべてボタンとノブで出来るというものでタッチ液晶の操作が嫌いなユーザーにはうれしい機能だ。ファンクションノブはノブ自体をクルマのギアのように上下左右に押しこむタイプで少し慣れが必要だが、ファインダーを覗きながらも設定を変えられるので非常に便利だ。ファインダーはアイカップも適度なサイズで見やすく上方向に45度ティルトする。大型バッテリーを装着して覗いた時も鼻が干渉しない。ファインダーの液晶はXA10の26万ドットから156万ドットに解像度が大幅に向上している。

1リング+カスタムダイヤル+5つのユーザーアサインボタン

Kawai_XA25_4.jpg

カスタムボタンとカスタムダイヤル

レンズ回りの操作性を見てみよう。レンズリングは1つでバッテリー横のスライドボタンでズームとフォーカスに切り替えられる。メニューに入らなくとも瞬時に切り替えられるしスライドボタンのため位置を覚えればブラインドでも切り替えられる。ただしフォーカスアシストが4秒の拡大フォーカスしかないのは惜しい。これはリングを触った瞬間に画面が拡大され4秒後に戻るのだが、4秒を長く感じるユーザーが自由に秒数を設定できない。フォーカスは回転方向をメニューで変えられるがズームは出来ない。

レンズリングの下にはカスタムボタンとカスタムダイヤルがある。カスタムボタンを長押しでシャッタースピード&絞り値の調整、マニュアル露出、AGCリミット値、露出値から1つの機能をカスタムダイヤルに割り当てられる。XA10ではバッテリー横にあったためフォーカスと露出などを頻繁に調整するのが煩雑だったがレンズリング回りにまとめられたことで実質2リングっぽい操作性になった。

さらに液晶左横に2つ、SDスロット後方に3つのユーザーアサインボタンがある。ボタン表面にエンボスで1.2.3.4.5と数字が刻まれているのでデフォルトの機能名にまどわされず使えるのもいい改良ポイントだ。アサインできる機能はTv/Av、マニュアル露出、AGCリミット、露出、優先WB、プレREC、赤外線ライト、オーディオ出力CH、AF/MF切り替え、レックレビューと、液晶ではファンクションから2タッチ以上奥にある撮影モード切り替え、強制逆光補正、ホワイトバランス、AGCリミット、フォーカス、露出、オーディオシーン、マイクレベル、ズーム、手振れ補正、ピクチャー設定、Wi-Fiリモートへのショートカットが割り当てられる。

ダブルSDスロットは異なるエンコード形式の同時録画にも対応

Kawai_XA25_5.jpg

SDカードが透けてみえる

録画回りを見てみよう。XA10の内蔵メモリーは廃止されダブルSDスロットのみになったが異なる方式でのデュアル録画に対応している。Aスロットに24MbpsのAVCHDを録画、Bスロットに4MbpsのMP4を録画というような使い方が出来る。編集用とWeb速報用など用途に応じて使い分けられて便利だ。もちろん同一形式のリレー録画にも対応している。業務用らしくタイムコードの設定もひと通りあるので複数カメラでの収録>編集フローにも柔軟に対応できる。細かいところではSDスロットの開閉シャッターが半分透明プラスチックで出来ているのでSDカードが入ってるかどうかの確認も容易にできる。内蔵メモリーがなくなったことでSDカードを入れ忘れて取材に出てしまうなどの状況を防ぐ工夫と思われるが心憎い。SDスロット横には赤外線のスライドスイッチがある。

タッチパネル液晶の感度が大幅に向上

Kawai_XA25_6.jpg

出力系を全部バラバラに設定できるメニュー画面

XA25/20は録画ボタン横のファンクションノブですべての機能を設定できるためタッチパネル液晶を使う必要はないが感度は大幅に向上している。XA10のタッチパネル液晶は抵抗膜方式だったため指の反応についてこないことも多かったが、XA25/20はスマホで一般的な静電容量方式に変わったのでストレスなく操作できる。細かいメニューデザインも改善されており例えばXA10では数値指定するホワイトバランスがスクロールしないと出て来なかったのが一覧表示の選択肢に入り一発で選べるようになった。解像度もXA10の92.2万ドットから123万ドットに高精細化されている。

Wi-Fiリモート機能で露出からズームまでコントロール

Kawai_XA25_7.jpg

Wi-FiのRemote画面

iPhoneやiPad、AndroidによるWi-Fiリモート機能はカメラをコントロールする機能とSDカードに録画された撮影データを見る機能がある。ここではカメラコントロールにフォーカスして解説する。カメラのWi-Fiアンテナはズームレバーのあたりに内蔵されている。最初にカメラにカメラパスワードを設定する。

Wi-Fiリモートをオンにすると、スマホからはアクセスポイントのようにSSIDがXAからはじまる文字列で表示されるので選択して8桁のカメラパスワードを入力する。カメラに表示されている http://192.168.0.80/ をスマホのブラウザから入力するとWi-Fiリモートのコントロールパネルが表示される。このURLはユニークなので一度ブックマークすれば次から簡単にアクセスできる。表示レイアウトはタブレットやパソコン用の詳細操作とスマホなど画面の小さい端末向けの簡易操作があり使いやすい。ライブビューの下にはフォーカス、アイリス、ズームが並ぶ。その横に録画ボタン、右のボタンで撮影モード、露出補正、ホワイトバランス、F値、ゲイン、シャッタースピードを調整できる。カメラメニューでは個別アクセスがすべて一覧で操作できるので非常に便利だ。複数のXA25/20を1台のスマホやPCから同時に操作することは出来ないが、SSIDを切替えれば順番に操作することは可能だ。

小型なのに光学20倍の新設計ズームレンズが頼もしい

Kawai_XA25_8.jpg

レンズは新設計の光学20倍。手振れ補正OFFの場合35mm換算で約26.8-576mm相当となりセミナー会場の後ろからでも登壇者のバストショットが狙えるようになった。ワイド端もXA10の30mmから広がり狭い場所での撮影にも便利だ。デジタルズームは400倍とテレコンのみとなったが光学20倍あればほとんどのシーンでは必要ないだろう。その他細かいところではカラーバーがSMPTEとARIBの2種類あったり1KHzのトーンが-20dB、-18dB、-12dBから選べるなど細かく改良されている。

少人数のマルチカメラ運用にぴったりな業務用カメラの決定版

今回は操作系に絞ってのレビューだったが、ひと通り触ってみて「小型なのに今求められている機能が過不足なく詰まった製品」という印象だ。特に少人数でのマルチカメラによるライブ配信や収録にはぴったりなのではないだろうか?音声グリップをつけなければひとつのカメラバッグに4台は詰め込むことができる。現在XA10やG20/G10を所有してる人は絵のトーンも合わせやすいので、追加でメインカメラとして買っても長く使えるだろう。抜群のコストパフォーマンスで幅広いユーザーに強くオススメできるカメラである。

なおXA20/XA25の内覧会を中心とした『キヤノン イメージングソリューションフェアin OSAKA』が5月23日(木)、24日(金)両日大阪にて無料開催される。事前の登録申し込みが必要。参加登録やセミナー内容などの詳細はこちらから。

WRITER PROFILE

ヒマナイヌ

ヒマナイヌ

頓知を駆使した創造企業