撮影:山下 奈津子

ここ、夏まっしぐらのハリウッド地方は、映画のメッカとあって様々な映像関連のイベントが頻繁に開催されている。6月14日(土)、ハリウッドにおいてVES(ビジュアルエフェクツ・ソサエティ / 米視覚効果協会)主催によるVFX業界ジョブ・フェアーが開催された。しかも会場は、アカデミー賞の会場としてお馴染みのコダック・シアターに隣接し、アカデミー賞の際には映画スターも宿泊する、あのハリウッド・ルネッサンス・ホテルだ。今回は、このジョブ・フェアーの模様を皆さんにご紹介する事にしよう。

VFXジョブ・フェアー

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VESはハリウッドを中心に様々なイベントを企画&開催している。その内容は多岐に渡り、新作VFX映画の試写会や、メイキング講演会、討論会、そして今回のようなジョブ・フェアーなど。この日は、ハリウッドのド真ん中にあるルネッサンス・ホテルに著名VFXスタジオがブースを構え、リクルーター達がデモリールやレゾメを受け取るという、文字通りのジョブ・フェアーが開催された。

会場には、大学を卒業したばかり(アメリカは6月が卒業時期)のフレッシュマンや、現在仕事を求めているフリーランサー、既に仕事は持っているが将来の参考用に訪れたVFXスタジオ所属のデジタル・アーティストなどなど、さまざまな業界人が集まり、各ブースの前には長い列が出来た。会場で出会った人に話を伺ってみると、最近映画プロジェクトを終えたばかりのプロダクション・マネージャーが求職に訪れていたり、大手アニメーションスタジオに勤務しているアニメーターが冷かしで来ていたり、とその顔ぶれはさまざま。中には、この日の為にわざわざハワイから飛行機でやって来たという人もいた。

なぜ、このタイミングでハリウッドで開催されたのだろうか?あくまでも筆者の推測だが、今年の夏のシーグラフはカナダのバンクーバーで開催される為、シーグラフでのリクルーティング・ブースやジョブ・フェアーはバンクーバー・オリエンテッドになる可能性が高く、それを見越してLAローカルのリクルート・イベントを開催する事になったのではないだろうか。

出展各社の顔ぶれ

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イメージワークスのブース

今回のジョブ・フェアーは、シーグラフのそれに劣らず、全米はもとより、海外からも著名VFXスタジオが勢ぞろいしていた。また、シーグラフではあまりお目に掛からないような大手ポスト・プロダクションまでもが名を連ねていたのが印象的だった。

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デジタルドメインのブース

アニメーション&VFXスタジオからは、ディズニー・アニメーション(LA)、ライジング・サン・ピクチャーズ(オーストラリア)、MPC(ロンドン、バンクーバー、NY)、デジタル・ドメイン(LA、バンクーバー、サンフランシスコ、フロリダ)、デュモンデ・ビジュアルエフェクツ(ニューオリンズ)、レイカ(オレゴン)、ソニーピクチャーズ・イメージワークス(LA、ニューメキシコ、バンクーバー)などが出展。

大手ポストプロダクションからは、デラックス、テクニカラー2Dto3Dがブースを構えていた。中でもデラックスは、最近メソッド・スタジオやステレオ3Dを傘下に収めた事で話題を呼んだ事が記憶に新しい。今回はデラックスのブースにおいてメソッド・スタジオとステレオ3Dの両社が並んでリクルーティングを行なっており、「デラックス・グループ」を誇示した形のブースとなっていた。このように、この日は全部で20社が出展、かなりの盛況ぶりであった。

ワークショップも人気

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今回のイベントでは、3つの著名ソフト各社が無料のワークショップを開催し、人気を博していた。ワークショップを開催していたのは、オートデスク、アドビ、そしてHoudiniでお馴染みサイド・エフェクツの3社である。

オートデスクは、Softimage ICEの概要を紹介する90分のセッションを11:00AM、01:00PM、3:00PMの3回に分けて実施。シーグラフのユーザー会などでSoftimageユーザーには古くからお馴染みのマーク・シェナゲル(Mark Schoennagel)氏がプレゼンテーションを行なっていた。

アドビは、CS5(Creative Suite5)をフィーチャーし、DSLRとREDを使用したワークフロー、「ダイナミックリンク」の紹介、Photoshop CS5 ExtendedとAfter Effects、という3つのテーマでセミナーを開催。

そしてサイド・エフェクツは、9つのHoudiniワークショップを用意。プロシージャルなワークフロー、フルイド・シュミレーション、そしてパーティクル機能などを実際に触って体感出来るセッションに加え、同社での学生インターンシップに関するQ&Aなど、盛り沢山の内容であった。

これらはすべて無料のセッションだが、すべて事前申し込み制。各ワークショップでは活気に満ちたセッションが繰り広げられていた。

夏の海外就活は、シーグラフ2011で!

駆け足でご紹介したVES主催のジョブ・フェアだが、その概要はご理解頂けた事と思う。今回参加出来なかった日本のみなさんは、8月にカナダのバンクーバーで開催されるシーグラフ2011が就活には絶好の機会だろう。特に海外進出をめざす方は要チェック!である。現在、バンクーバーは世界のVFX業界から最も注目されている街であり、数多くの著名VFXスタジオがこの街にスタジオを新設している。

さて、手前味噌な話題で恐縮だが、筆者はこの程、相棒の映像ジャーナリスト溝口稔和と共に、バンクーバーのVFX業界を紹介したDVDを発売した。著名VFXスタジオのリクルーター達が、なぜバンクーバーにもスタジオを構えたのか、求める人材は、効果的なデモリール構成等について語り、それを日本語字幕でご紹介している。夏のシーグラフ2011の視察前の予習や、就活対策として、少しでも皆さんの参考資料になれば幸いである。ご興味のある方は、是非こちらをご参考頂ければと思う。

WRITER PROFILE

鍋潤太郎

鍋潤太郎

ロサンゼルス在住の映像ジャーナリスト。著書に「ハリウッドVFX業界就職の手引き」、「海外で働く日本人クリエイター」等がある。