[オタク社長が見たAsianimationの世界]Vol.18 世界のオタクたち、2010年前半を振り返って
2010-07-02 掲載
2010年も前半が過ぎ去った。遺憾ながら世界中で停滞した経済状況であり、日本でも政権交代後の与党内政変が起こり、世の中決して景気が良いとは言えない。オタクの世界も同様であった。
しかしながら、いくつか希望も見えている。それは、中国などBRICs諸国のアニメ制作も新興国故にそうした停滞した景気の影響を色濃く受け、未だに日本のアニメを駆逐するところまでは成長していない、という点だ。幸か不幸か、まだ日本にもこの敗戦間近な状況をひっくり返すチャンスが残されているのだ。
見えてきた今年の動向
アジアに限らず今年前半の世界のオタク市場を追いかけてみよう。
まず、今年流行すると予想されていた、スマートフォンによる3G携帯コンテンツの世界的な流行が遅れている点が非常に気になる。半年前の予想では、今頃世界中の携帯で萌えキャラがうごめいている楽しい状況になっているはずだったのだが、残念ながらそうなっては居ない。
世界的に見ればスマートフォン向けゲームアプリの種類は出ているのだが、いかんせん個々のソフトの本数が出てない。現状、どのゲームも軽量かあるいはPCゲーム移植などで、スマートフォンゲームならではのおもしろさを一目で理解できるようなキラーアプリも存在しない状況だ。ゲームアプリ以外でも同様で、ネットで携帯電話の追加機能を購入するという商行動にユーザーが慣れていないのが何よりの原因と思われる。
iPhone4の最大の目玉であるiMovieが、あえて標準ソフトではなくアプリとして安価に別売りされたのも、ネットでのアプリ購入に慣れさせ、この辺の起爆剤となることを狙ってのことだと考えられるが、果たしてどうなることか?
また、iPhone以外のスマートフォンがお世辞にも成功しているとは言い難いのもこの問題を大きくしているだろう。強烈な世界不況下で普通の携帯よりもかなり高額なスマートフォンが売れにくい状況ではあるが、上海万博でイケイケの中国ですらそれらがあまり売れてないのは深刻だ。そもそもプラットフォームが広がらなければアプリなど売れるはずもない。
そんな中、さらに追い打ちを掛けるように、米国大手電話通信会社などでは、スマートフォンの定額パケットを中止しパケット料に制限を掛ける動きが出てきた。これではますます3G携帯コンテンツのブレイクが遠のく。
今年の後半には中国などのBRICs向けスマートフォンが市場に出そろうので、スマートフォン市場の動きは全てその後になる。しかし、各国携帯キャリアは政治状況に振り回されやすい状況で、諸手を挙げて強気に開発に乗り出すには、どうにもやりにくい。
また、同じく今年の後半以降、ニンテンドー3DSなどの携帯型3Dゲーム機の登場で3Dゲームが一気に発売されるかとも思えるが、はっきり言えばこの辺はまだまだ未知数である。
実は既に現状の制作現場では3DCGによるゲームグラフィック制作になっているため、立体視化そのものにかかるコストはさほど大きくなく、現場対応もしやすいとは思われる。もともと携帯ゲーム機の開発コストは安めの事が多いため制作コスト上昇が気にはなるが、2Dドット画が3DCG化した頃よりはコスト上昇は少ないだろう。
ただ、問題は肝心の売れ行きの方だ。立体視とはいっても、裸眼立体視は個人差も大きく、特に子供に対しては目の負担も大きい。ゲーム性の安定化は難しく、売れ行きに影響するだけの立体視ならではの特性を出すのも難しい。そもそも、まともに数分間以上立体視が出来る人は7割程度で、2~3割の人は、そもそも立体視が出来なかったり、強烈な眼精疲労ですぐに立体視が不可能になってしまう事が既に明らかになっている。
先般話題になった立体視映画「アバター」などでも、こうした個人差や体質によって立体視が出来ない人が一定数居ることが確認されており、万人受けが求められるコンシューマゲーム機の世界でこの欠点がどこまで受け入れられるかは全く未知数と言えるのだ。 また、実は、ゲームでも映像でも、今のところ、ここのオブジェクト毎の立体視の飛び出し具合は機械的なままだと違和感があるために手作業でメリハリを付けられており、この辺のノウハウ蓄積がない今年はコンテンツや機材毎の立体具合の違いにも戸惑うことになりそうだ。3Dゲーム機の話題性は高いだろうが、制作側からすると少し様子を見たいところがある。
ゲームは、体験型へ進化する
私が注目したいもう一つの目玉は、体験型家庭用ゲームの普及だ。SONYやMicrosoftXbox360などへ向けて発売された体験型の家庭用ゲーム機オブションは一見Wiiの後追いだが、精度は先行するWiiに比べても段違いに上がっており、ゲーム性のコントロールがしやすい。制作側から見て、明らかにゲーム制作もしやすく面白いものが作りやすくなっている。
中でも先のE3で発表されたPS3の「PlayStationMOVE」モーションコントローラはシンプルかつ直感性の高いものであり、対応ゲームもその精度を生かしたものが想定されている。先行する家庭用体験機「ニンテンドーWii」の印象があるため、これらの機器はE3での発表でもいまいち注目を集めていないが、「最新」よりも「おもしろい」が優先されるのがオタクの世界だ。実ゲームのプレイアビリティを考えればこうした体験型家庭用ゲームオプションは案外伸びるのではないだろうか。
また、もう一つ。最新機材に触れすぎているとついつい忘れがちだが、今年11月の地デジ化で、日本でも一気に一般家庭でのHD化が進んでいる点も見逃せない。HD向けリメイクや、HDならではの横長画面を生かした物語性の強い画面構成のアニメ制作など、新規映像制作には大いに期待したいところだ。
[ Writer : 手塚一佳 ]
[ DATE : 2010-07-02 ]
[ TAG : オタク社長が見たAsianimationの世界 ]
関連のコラム一覧
|
|
[オタク社長が見たAsianimationの世界]Vol.17 フランス、パリの最新オタク事情世界のアニメ/漫画などポップアートの中でも、日本のそれらの持つ地位は、一種独特である。アジアに限らず、欧米先進国や発展途上国など、どこの国に行っても、日本以外の国のそうしたポップア .... 続きを読む |
|
|
[オタク社長が見たAsianimationの世界]Vol.16 オタク的視点でNAB2010を歩けば...先日米国ラスベガスで行われたNAB2010は、PRONEWSの特集ページでもわかるとおり、十数年ぶりの大変革を感じさせる大盛り上がりの中閉幕した。今年の立体視放送と、ファイルベース .... 続きを読む |
|
|
[オタク社長が見たAsianimationの世界]Vol.15 東京国際アニメフェアでのアジア勢の動向2010年3月25~28日まで開催された「東京国際アニメフェア」は、去年までとは大きく様変わりをしていた。ビジネスデーに日本人同士の商談の姿が非常に少なく、代わりに海外向け、特に中 .... 続きを読む |
|
|
[オタク社長が見たAsianimationの世界]Vol.14 香港マカオのアニメ/ゲーム事情先月に続き、トイ&ゲームフェア(Hong Kong Toys&Games Fair)周辺の話題から話を始めたい。もう2ヶ月近くも前の2010年1月11日~14日まで香港会議展覧中 .... 続きを読む |
|
|
[オタク社長が見たAsianimationの世界]Vol.13 香港、Toys&Gamesフェアで思ったこと2010年1月11日から14日まで、香港会議展覧中心にて、トイ&ゲームフェア(Hong Kong Toys&Games Fair)が開催された。これは毎年開催されているアジア最大の .... 続きを読む |
- [オタク社長が見たAsianimationの世界]Vol.12 小沢訪中団で見る中国メディアリテラシー教育、SIGGRAPH Asia (2010-01-05)
- [オタク社長が見たAsianimationの世界]Vol.11 InterBEEに見るアジア各国の映像状況 (2009-12-01)
- [オタク社長が見たAsianimationの世界]Vol.10 政府とコンテンツ制作との関係 (2009-11-03)
- [オタク社長が見たAsianimationの世界]Vol.09 中国ネットゲーム事情 その3 (2009-10-05)
- [オタク社長が見たAsianimationの世界]Vol.08 中国ネットゲーム事情 その2 (2009-09-15)
- [オタク社長が見たAsianimationの世界]Vol.07 中国ネットゲーム事情 その1 (2009-08-07)
最新のコラム一覧
- [raitank fountain]Vol.03 EOS C300インプレッション番外編〜"普段使い"のC300 (2012-02-03)
- [コロラド紀行]Vol.69 アメリカの郵便制度の台所事情 (2012-02-03)
- [DigitalGang!]Shoot.01 GoPro HD HERO2に思いを馳せる! (2012-02-01)
- [Do it]今求められるDIT(デジタル・イメージング・テクニシャン)とは? (2012-01-25)
- [岡英史のNewFinder]Vol.17 街のビデオ屋的3D制作2 ~JVCケンウッドのGY-HMZ1に注目! (2012-01-24)
関連のニュース記事
WRITER PROFILE
手塚一佳
(てづか かずよし)
クリエイター集団アイラ・ラボラトリ代表取締役。1973年生まれ。東京農業大学農学部卒、日本大学大学院中退、小沢一郎政治塾8期生。数多くのアニメや実写合成に携わり、特にロボットアニメの演出力には自信がある。CG関連書籍のほかマンガなどの著書も多数。大学、専門学校などでの講義も受け持つ。居合家でもあり刀匠の元で刀匠免許を目指して作刀修行もしている。早くから海外コラボ制作に目を付けており、世界中を飛び回る日々。
手塚一佳 のコラム一覧
Writer
|
編集部(99) PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートです。 |
|
稲田出(27) 映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチールカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。 |
|
石川幸宏(35) 映像専門雑誌DVJ編集長を経て、リアルイベントを中心とした「DVJ BUZZ TV」編成局長として活躍中。 |
|
小寺信良(23) 業界で噂の新製品を、AV WatchやITmediaのコラムでもおなじみの小寺信良氏がレポートする動画連載。 |
|
raitank(5) あまたの海外ソースを読み漁ってHDSLRを独学。海外から仕入れた情報を日本語で発信するグラフィックデザイナー/アートディレクター。 |
|
ふるいちやすし(44) 自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。 |
|
岡英史(19) バイクレース及びF3レース参戦など、映像とはかけ離れた経歴を持つ異色ビデオカメラマン |
|
手塚一佳(44) CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。 |
|
江夏由洋(13) 兄弟で株式会社マリモレコーズを設立し、ノンリニアにおける映像技術、映像制作を中心に、最新技術を取り入れたワークフローを提案している。 |
|
山本久之(26) 映像エンジニア。フリーランスで映像設備のシステムインテグレーションと、ノンリニア編集に携わる。 |
|
林永子(26) 2005年よりサロンイベント「スナック永子」を開催。通称「永子ママ」 |
|
鍋潤太郎(18) ロサンゼルスを拠点とするVFXジャーナリスト。 |
|
高野光太郎(4) 映像クリエイター。フリーランスにてミュージックビデオ、番組オープニングタイトル、CM、劇場映画、全てをデスクトップで制作。 |
|
安藤幸央(9) 無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPH ASIAやCESなど海外の注目イベントを紹介。 |
|
猪蔵(5) いつも腹ペコ。世の中の面白いことを常に探っている在野の雑誌編集者。 |
|
山下香欧(8) 米国ベンチャー企業のコンサルタントやフリーランスライターとして、業界出版雑誌に市場動向やイベントのレポートを投稿。 |
|
ヒマナイヌ(5) 頓知を駆使した創造企業 |
|
坪井昭久(5) 映像ディレクター。代表作はDNP(大日本印刷)コンセプト映像、よしもとディレクターズ100など。3D映像のノンリニア編集講師などを勤める。 |
|
萩原正喜(69) 米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。 |
|
岡田智博(7) クリエイティブクラスター代表。メディアアートと先端デザインを用いたコンテンツ開発を手がけるスーパー裏方。 |
|
江口靖二(5) デジタルサイネージコンソーシアム常務理事、慶應義塾大学DMC機構研究員などを兼務。 |
|
しらいあきひこ(2) カメラメーカー、ゲーム開発などの経験を持つ工学博士が最先端のVR技術を紹介。 |
|
今間俊博(5) 尚美学園大学 芸術情報学部 情報表現学科 教授。アナログ時代の事例を通じ、教育関連の最新動向を探る。 |
|
伊藤裕美(5) オフィスH(あっしゅ)代表。下北沢トリウッドでアニメーション特集上映を毎年主催している。 |
|
秋山謙一(17) PRONEWS記者。映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動中。 |
|
UserReport(10) 業界で話題の商品を実際に使ってみてどう感じたかを、各方面の様々な方々にレポートしていただきました。 |
|
System5 Labs(8) SYSTEM5スタッフが販売会社ならではの視点で執筆します。 |
