[Cutting Edge]Vol.06 NVIDIAのプロ市場向け戦略を本社市場開発マネジャーに聞く
2010-01-26 掲載
CGにおいても、ノンリニア編集のエフェクトにおいても、GPUを活用したグラフィックス処理は欠かせないものとなっている。最近では、GPUで演算処理を行うGPUコンピューティングの活用に向けた取り組みも活発化してきている。NVIDIA(東京都港区)は、2009年12月16~19日にパシフィコ横浜で開催されたSIGGRAPH ASIA 2009において、インタラクティブ・レイトレーシングやマルチディスプレイ・高精細ビジュアラーゼーションといった最新グラフィックスソリューション、活用が進むGPUコンピューティングによる並列演算処理関連の出展を行った(SIGGRAPH ASIA Report記事参照)。
SIGGRAPH ASIA会期に合わせて米国本社から来日したMarket Development ManagerのTyler Worden(タイラー・ウォルデン)氏に、プロ市場向けの製品戦略について聞いた。
プロ市場アプリケーションベンダーと協業
──まず、製品ラインについて整理してもらいたいのですが。
ウォルデン氏「当社の汎用グラフィックスカード製品は大きく5つの方向性をもった製品を展開している。1つは、IntelやAMDなどと競合し、コンシューマ市場向けとなるGeForce製品ライン。主にマルチメディアやDVDの再生に利用されているが、55~65%のシェアを持つ。2つ目はプロ市場、つまりSIGGRAPH ASIAでハイライトされるようなデジタルコンテンツ制作市場やCAD市場向け製品で、Quadro製品ライン。これは95%のシェアを獲得している。3つ目は、HPC(ハイパフォーマンスPC)向けのTesla。GPUコンピューティング活用市場ではほぼ100%のシェアがあるが、スーパーコンピュータ市場やHPC市場全体から見ればIntelやAMDのCPU製品もあり、シェアはかなり低くなる。4つ目はTegraで、携帯電話などのモバイルプラットフォーム向けのGPUだ。登場して2年のGPUであり、市場に製品が出てくる段階にある。最後は、ネットブック向けに提供するIONで、最新ネットブックでの搭載が始まっている」
──SIGGRAPH ASIAのブースでは、アドビ システムズの次世代Creative Suite Premiere Proに搭載される画像処理エンジンAdobe Mercury Playback Engineのテクノロジープレビューが行われました。このようなパートナーシップの取り組みは、頻繁に行っているのですか。
ウォルデン氏「そうだ。アドビ システムズだけでなく、オートデスク、アビッド テクノロジー、ソリッドワークスなどと共同で、新製品のオプティマイズや新テクノロジーの開発をしたりしている。ビデオ分野ではRED ONEが登場したりして、4K高解像度の編集などにも対応しなければならないという状況は理解しているので、よりGPUのパフォーマンスが上げられるように努力している。4K解像度映像のディスプレイ出力は、現在は拡張ボックス型のQuadro Plexが必要になるが、将来的には2枚のカードを挿入して、それぞれのデュアル出力により4Kを表示するということも可能になっていくのではと思う」
──日本では、ワークステーション環境を5年近く使ったりすることもよくある。そういうPCではパフォーマンスの低さに泣いていることもあるんですが、なかなか機材更新できない実情もあります。GPUを変えることでパフォーマンス向上ができるのであれば、もっとアピールした方がいいように思うのですが。
ウォルデン氏「それはいい考えだ。もっと書いてよ!(笑) 現在、Quadro製品ラインの85%をOEMで提供しており、残りの15%がユーザー購入という状況にある。このユーザー購入部分を、もっと拡大したいという考えはもちろんある。ユーザーが積極的にカードを変更するためには、アプリケーションでの対応が欠かせない。例えば、アドビの新世代製品でCUDA対応をしているというようなストーリーだ。従来のカードから最新カードに変えればパフォーマンスが上がるというだけでなく、新世代のアプリケーションでこんなことが実現できますという部分を提供することで、カードの移行を図っていきたい」
プロユースのQuadro製品はカード全体を品質管理
──プロ市場で使用されているワークステーションなどでは、購入時にQuadro製品が挿入されていることも多いのですが、ユーザーが既存のワークステーションのグラフィックスカードをアップグレードさせるための戦略は。
ウォルデン氏「当社は毎年、100億円規模の研究開発費を投じてグラフィックスカードの新製品を開発している。新世代のグラフィックスカードでは、価格を維持しながらも、グラフィックパフォーマンスが2倍となる。以前のグラフィックスカードを使用しているユーザーは、最新カードに変更することで、確実にパフォーマンスの向上を感じ取れるだろう」
──IntelはCPU内にグラフィックス部分を統合してきていますし、AMDはATI Technologiesを傘下に収めた動きをしています。GPUベンダーとは独立している、NVIDIAの強みとは。
ウォルデン氏「当社はグラフィックスに特化した取り組みを行っていますが、IntelやAMDともパートナーシップを組んでチップセットの開発もしている。こうすることで、各社のCPUと問題なく連携できるGPUを提供できるように努力しているわけだ」
──チップセットと言う意味では、アップルのノートブックシリーズでNVIDIAのチップセットを採用しましたね。MacBook Proで省電力型とパフォーマンス型の2つのGPU(GeForce 9400MとGeForce 9600M GT)を搭載し、Mac OS X 10.6 Snow LeopardでOpenCLに対応したたことが興味深かったのですが。
ウォルデン氏「アップル製品についてはコンシューマー向けのGeForceシリーズを提供しているが、デルやHPのモバイルワークステーション向けにはプロフェッショナル向けのQuadro FXシリーズを提供しているよ。こちらのパフォーマンスも、ぜひ体験してほしいね」
CUDAハードウェアアーキテクチャと開発環境
──GPUコンピューティングが出て来てから、ソフトウェアとGPUの連携もかなり重要になってきていますね。
ウォルデン氏「GPUコンピューティングの並列演算と相性の良いアプリケーションの分野があり、画像処理はその典型だ。しかし、CPU処理のすべてがGPUで可能というわけではない。GPUが得意とするのは何回も計算を繰り返す順次処理部分であり、条件分岐が必要な処理はCPU処理に向いている。つまり、CPU処理のコプロセッシングをGPUが行うという関係だ。当社は3年前からGPUコンピューティングのためのCUDA環境を提供しているが、それまでは、Open GLやDirect XなどグラフィックスAPIを通して演算処理を行う必要があった。CUDAの登場によって、GPUコンピューティングプログラムを、プログラマが馴染みのあるCやFORTRANで記述できるようになった。さらに現在では、OpenCLなども策定され、よりプログラム記述しやすい環境が整って来た」
──クロノス・グループが策定しているOpenCLですが、CUDAの機能との違いと言うものはあるのですか。
ウォルデン氏「まず整理しておいて欲しいのは、CUDAは開発環境として捉えられることが多いが、ハードウェアアーキテクチャであるということだ。そのCUDAアーキテクチャ上の開発環境として、CUDA CやOpenCL、DirectCompute、CUDA Fortranといったソフトウェアの開発言語が存在するという構造だ。同じアーキテクチャ上の開発言語なので、それぞれの性能や可能性は変わらないが、登場時期により実現できるレベルが異なっている。CUDA Cは最初の開発言語であったことから、リソースも揃っているので汎用性が高いものとなっている。GPUコンピューティングを推進する当社の取り組みとしては、どの開発言語に対しても平等に扱えるように改善していく」
──ATI Technology製カードもOpenCLをサポートして、GPUコンピューティング分野を強化してきていますが。
ウォルデン氏「先にも話したように、Quadro製品ラインは未だ95%のシェアを持っており、市場に受け入れられている。Quadro製品がプロ市場において強いのは、性能、耐久性、品質などの部分だ。特に、Quadroのドライバーは、ソフトウェアパートナーの認証を受け、確実に動作するものを提供している.。さらに、信頼性と言う意味では、コンシューマー製品は当社がチップを提供して、カードベンダーがそのチップを使用して製品を作る形を採っているが、Quadro製品ラインにおいては、当社がカード全体を開発して品質の責任を負う。プロユースに耐えるように、カード上の部品の品質やパフォーマンスなどを管理しているんだよ。安心して使って欲しいね」
[ Writer : 秋山謙一 ]
[ DATE : 2010-01-26 ]
[ TAG : Cutting Edge NVIDIA ]
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WRITER PROFILE
秋山謙一
(あきやま けんいち)
PRONEWS記者
1967年、ヨコハマ生まれ、ヨコハマ育ち。映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動。これまで新聞、雑誌、書籍、Webなど各媒体で取材執筆・編集をしてきた経験を生かして、文字と映像のコラボレーションに取り組んでいく。
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