[What's UP HD!]Vol.01 HD夜明け前の時代から~

HOME  >  COLUMN  >  高野光太郎  >  [What's UP HD!]Vol.01 HD夜明け前の時代から~

Column

[What's UP HD!]Vol.01 HD夜明け前の時代から~

2009-07-24 掲載

[What's UP HD!]Vol.01 HD夜明け前の時代から~

高野光太郎です。自分は「映像クリエイター」として仕事をしています。主なジャンルは、ミュージックビデオです。自らディレクションする事もあれば、実写合成などのVFXパートのみを担当する事もあり、また3DCG+After Effectsでのモーショングラフィックスの仕事もしています。基本的には映像制作をデスクトップで行っています。

簡単に私のDTV制作の遍歴を紹介しましょう。始まりは、PowerMacG3+DVカメラ(Panasonic民生機)という組み合わせで、アプリケーションは、Premiere,After Effects,Photoshop,Illustrator,LightWaveを使用しつつ、DTVデビューを果たしました。

現在は、MacPro(8core)メモリ12G 内蔵RAID 2TB、Final Cut Studio 2,After Effects,Photoshop,Illustratorなどを使用しています。 私が携わる仕事では、実写加工モノが多いため、カメラの選択も相談される事も多くHDカメラもかなり使いこんでいます。手探りですがHDとの付き合い方は多少なりとも分かっています。そんな私が、HD制作ワークフローの現状をレポートしてみたいと思います。

なぜ、ミュージックビデオがHDカメラを導入したのか?その顛末。

takano0101.jpg

ミュージックビデオ(以下:MV)以外での仕事では、2008年からHD納品が増加しました。しかし、自分の製作仕事であるMVでは、2009年現在HD納品はほとんどありません。実際には撮影カメラはほぼ100%HDビデオカメラなのですが...。撮影がHDで納品がSDというワークフローが今メインとなっています。なぜHDカメラなのでしょうか?

理由は簡単です。MVは元々フィルム撮影が主流でした。ビデオの生っぽい感じが合わないため、SDビデオカメラが選択される事はほとんどありませんでした。しかし2002年にPanasonicからAG-DVX100の登場がこの状況を大きく変えることになります。

画を見たとき、「フィルムっぽくてカッコイイ」という印象でした。それもそのはず、DVカメラで24P撮影を実現した事につきます。またCINE-LIKEガンマを搭載して、フィルムっぽい質感を実現。また、ちょうど世の中にDVベースのノンリニア編集がリアルタイムで安定してきた時期と重なります。そしてアップルのFinal Cut Pro(以下:FCP)でこの24P素材を扱うことができるようになったのです。MV業界でのFCP普及率が高い事は、この事に起因するのでしょう。

時代の流れもありMV制作費が下がった事も追い風?にもなり、フィルムライクなその質感からAG-DVX100を使用した撮影数が増えました。MVのもうひとつの特徴は、HS(ハイスピード撮影)つまりスローモーション映像が多用されます。

HDカメラを使用する場合は、Panasonicのバリアブルフレームレート撮影可能なHDビデオカメラVaricamを使用して24コマで2.5倍のスローモーション撮影を行います。その際カメラとは別にフレームレートコンバータという機材も必要で、当然のことながらコストのかかる撮影になります。

P2カード+FCPという福音

Panasonicがまたもや革命を起こすのです。それが、AG-HVX200の登場です。Panasonicは、テープメディアから脱却する事で、自分達のお家芸であるバリアブルフレームレート撮影を安価でコンパクトなビデオカメラに搭載することを実現しました。

P2カードを採用することで、ネイティブなフレームレートでの記録も可能にし、Varicamの時に必要だったフレームレートコンバータも不要で、1台のカメラの中でバリアブルフレームレート撮影可能になりました。これをMVの人たちが放っておくわけがありません。またバリアブルフレームレート撮影はHDサイズの720モードで撮影可能になります。

といいつつも、まだまだDVベースの時代、AG-HVX200の素晴らしいところはDVテープも搭載していることでした。P2カードで撮影したHD映像をダウンコンバートしてDVテープに記録できたのです。

今から考えると ノーマル撮影はDVで行い、ハイスピード撮影だけP2を選択するなど、DVテープという基軸があったお陰で、この安心感から当時DVテープのワークフローに難なく浸透できたのだと思います。その後に出てくるテープレス時代の不安感は、当時の撮影現場ではそれほど感じませんでした。

技術進化により、ノンリニアで完パケに近い状態まで制作できるディレクターやクリエイターも成長して来ている時期でした。FCPもP2カードに対応し、FCP上で安価なHD制作を可能にしました。これまではHDビデオカメラを使用すると、HDテープに記録する為、後処理のワークフローにコストがかかっていました。

これが、P2カードにデータ記録すれば、直接PC上で扱う事ができ、またダウンコンバートしない事から、高画質な制作ワークフローがPC上で実現し、それがSD画質を上回るという予算と反した画質の逆転現象が起きたのです。

このP2カード+FCPという福音の元にMV業界は、PC上でHDサイズのファイルを使用し始めるのです。

そして僕の果てしないバージョンアップを繰り返す機材との戦いはまだ終わりを見せません。 安住の地はどこなのか?これから制作と機材の関係をいろいろと紹介できればと思っています。


[ Writer : 高野光太郎 ]
[ DATE : 2009-07-24 ]
[ TAG : HDTV What's UP HD! ]

関連のコラム一覧

[What's UP HD!]Vol.04 AfterEffects使いのREDワークフローとは?

[What's UP HD!]Vol.04 AfterEffects使いのREDワークフローとは?

皆様、ご無沙汰しております。高野です。日々至高の映像を求め試行錯誤。毎日を映像と格闘しています。今回紹介するのは、Adobe ツールを使ったRED ワークフローについてです。DT .... 続きを読む

[What's UP HD!]Vol.03 映像革命は、ビデオではなくデジタル一眼カメラから始まる

[What's UP HD!]Vol.03 映像革命は、ビデオではなくデジタル一眼カメラから始まる

今回はDTVの現在、そして少し未来の話をしたいと思います。つまり「今ボクの周りで起きているコト!」がテーマです。1日に何回いうねん!とツッコミたくなるくらい繰り返し出てくる単語ラン .... 続きを読む

[What's UP HD!]Vol.02 非圧縮時代の君とボク ~DTV遍歴 後半編~

[What's UP HD!]Vol.02 非圧縮時代の君とボク ~DTV遍歴 後半編~

前回に引き続き、DTVの遍歴から始めます。この過酷な時代を生きたからこそ、最新技術の利点を素早く見抜き、現場にあったモノを投入する自負はあります。技術の進歩が早すぎるのもうれしい反 .... 続きを読む

マジックワードは&fmt=22?YouTubeHD化の波

マジックワードは&fmt=22?YouTubeHD化の波

手軽な動画共有といえば、YouTube。PRONEWSでも昨年は大いに利用させてもらった。便利な分どうでしても「画像が汚い...」「色がにじむ」など不満点もある。同社は、将来のHD .... 続きを読む

[コロラド紀行]Vol.14 デンバー地区での地上波HDTV放送の準備状況

[コロラド紀行]Vol.14 デンバー地区での地上波HDTV放送の準備状況

4月に入ってコロラドでもかなり暖かな日が多くなって来ました。 庭の芝生も葉が伸びて来て我が家でも今年最初の芝刈りを昨日行いました。 コロラドの桜 デンバー地区でも多く .... 続きを読む

WRITER PROFILE

高野光太郎 (たかのこうたろう) 映像クリエイター。フリーランスにてミュージックビデオ、番組オープニングタイトル、CM、劇場映画、全てをデスクトップで制作。 著書に「After Effects+HDの基礎」がある。


Writer

編集部(99)
PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートです。
稲田出(27)
映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチールカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。
石川幸宏(35)
映像専門雑誌DVJ編集長を経て、リアルイベントを中心とした「DVJ BUZZ TV」編成局長として活躍中。
小寺信良(23)
業界で噂の新製品を、AV WatchやITmediaのコラムでもおなじみの小寺信良氏がレポートする動画連載。
raitank(5)
あまたの海外ソースを読み漁ってHDSLRを独学。海外から仕入れた情報を日本語で発信するグラフィックデザイナー/アートディレクター。
ふるいちやすし(44)
自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。
岡英史(19)
バイクレース及びF3レース参戦など、映像とはかけ離れた経歴を持つ異色ビデオカメラマン
手塚一佳(44)
CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。
江夏由洋(13)
兄弟で株式会社マリモレコーズを設立し、ノンリニアにおける映像技術、映像制作を中心に、最新技術を取り入れたワークフローを提案している。
山本久之(26)
映像エンジニア。フリーランスで映像設備のシステムインテグレーションと、ノンリニア編集に携わる。
林永子(26)
2005年よりサロンイベント「スナック永子」を開催。通称「永子ママ」
鍋潤太郎(18)
ロサンゼルスを拠点とするVFXジャーナリスト。
高野光太郎(4)
映像クリエイター。フリーランスにてミュージックビデオ、番組オープニングタイトル、CM、劇場映画、全てをデスクトップで制作。
安藤幸央(9)
無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPH ASIAやCESなど海外の注目イベントを紹介。
猪蔵(5)
いつも腹ペコ。世の中の面白いことを常に探っている在野の雑誌編集者。
山下香欧(8)
米国ベンチャー企業のコンサルタントやフリーランスライターとして、業界出版雑誌に市場動向やイベントのレポートを投稿。
ヒマナイヌ(5)
頓知を駆使した創造企業
坪井昭久(5)
映像ディレクター。代表作はDNP(大日本印刷)コンセプト映像、よしもとディレクターズ100など。3D映像のノンリニア編集講師などを勤める。
萩原正喜(69)
米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。
岡田智博(7)
クリエイティブクラスター代表。メディアアートと先端デザインを用いたコンテンツ開発を手がけるスーパー裏方。
江口靖二(5)
デジタルサイネージコンソーシアム常務理事、慶應義塾大学DMC機構研究員などを兼務。
しらいあきひこ(2)
カメラメーカー、ゲーム開発などの経験を持つ工学博士が最先端のVR技術を紹介。
今間俊博(5)
尚美学園大学 芸術情報学部 情報表現学科 教授。アナログ時代の事例を通じ、教育関連の最新動向を探る。
伊藤裕美(5)
オフィスH(あっしゅ)代表。下北沢トリウッドでアニメーション特集上映を毎年主催している。
秋山謙一(17)
PRONEWS記者。映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動中。
UserReport(10)
業界で話題の商品を実際に使ってみてどう感じたかを、各方面の様々な方々にレポートしていただきました。
System5 Labs(8)
SYSTEM5スタッフが販売会社ならではの視点で執筆します。

HOME  >  COLUMN  >  [What's UP HD!]Vol.01 HD夜明け前の時代から~