最近各社からリリースされるカムコーダーの割合はDSLR系を含めたハンドヘルドタイプが圧倒的に多くなっている。各社とも市場ニーズに応えるかの如く市場投入してきているようだ。そんな中SONYからXDCAM HD422のラインナップにショルダータイプのPDW-680がひっそりとデビューしていた。

XDCAMシリーズはソリッド・ステート系でSxSメディアを使用するXDCAM EX系と、オプチカルディスク系のXDCAM HD422(4:2:2)とXDCAM HD(4:2:0)の3種類の系列に分かれている。XDCAM HD系はブルーレイディスク技術を応用したプロフェッショナルディスクに記録する。ソリッド・ステート系メディアとの違いは、ざっくりではあるが、今まで使い慣れてきたテープメディアとほぼ同じ感覚で使用出来ることではないだろうか。特に収録したデータをそのまま保存する事も可能で、長期データ保存には向いているメディアである。またプロフェッショナルディスクはコスト面でもHDCAMテープよりアドバンテージがあるので、運用コスト面でも恩恵にあずかれるのではないだろうか。何よりも重要な収録したデータを消さなくてすむという安心感は何よりも代えがたい。

今回の取り上げるPDW-680はPDWシリーズ初となるCMOS撮像素子を搭載することによりコストを抑えた製品となっている。このカメラをお借りすることが出来たので、同じ撮像素子を使用していると思われるPMW-350との比較を交えながらレポートしてみたいと思う。

まずは基本的な特徴をおさらい

スペック比較表

上記表をクリックで拡大表示します。※編集部註:記載の内容は掲載時点で公開されているメーカー仕様書を元にした比較情報です。最新情報や詳細はメーカー公式Webサイトページ等でご確認ください。

上記表を見ていただくとすぐわかるように、PDW-680は記録フォーマットのプログレッシブ記録が省かれている。なのですべてNTSC/PALともインターレースでの記録となる。このカメラを使用するであろう放送局やケーブルテレビ局では特に問題になることはないだろう。

操作系に関してはPDW-700とほぼ同じでありPMW-350とはボタンの配置が若干異なる程度で機能的な違いは殆どない。


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PDW-680

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PMW-350


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PDW-680

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PMW-350


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PDW-680

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PMW-350


IN OUT系はPDW-680はオプション基盤を装着することによりSDI INが可能になる。HDMI出力端子は装備されていない。

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PDW-680

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PMW-350


PDW-680にはSDI OUT端子が2つ装備されている。SDI OUT 2の方はメニューからSD-SDI OUTが可能。

実際に担いでみての印象だが、筐体がしっかりしていてとてもバランスが良い印象をうけた。PMW-350より900g重いのでその分安定した印象なのかもしれない。またレックトリガーを押した際、非情に小気味よく録画が開始される。PMW-350やハンドヘルドカメラなどのメモリー収録系のカメラは収録⇒停止⇒収録と一連の動作をすぐ行いたい場合、意外と次の録画が開始されるまでワンクッション待たされることが多い。これはRECを停止した際ファイルの切れ目の情報を書き込む動作が入るために次の録画が待たされるという現象だ。これを回避するにはカメラにバッファーを持たせれば解決できるのだが、メモリー系のカメラはまだそこまでいっていないようである。しかし本機は0.5秒程度の停止後もしっかりと録画が出来る。とても撮影していて気持ちがいい。

また本機はバッファーを大量に積んでいる。もし収録中に記録ディスクの容量が無くなり、ディスクチェンジを行わなければならない場面に備え、このバッファーがディスクチェンジ中の動画情報を記録しておき、新たなディスクに書き込みが出来るようになったらそれまでのデータを一気に書き込んでしまうという事が出来るのである。基本的にこのキャッシュは30秒の動画を一時保存できるので、プロフェッショナルディスクのようなテープローディングがいらない非接触メディアであればEjectから録画開始まではあっという間に済んでしまう。なんとも頼もしい機能である。

画質に関しては、ほぼどのような現場でも満足の行く結果になるのではないだろうか。

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PDW-680

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PMW-350


画質的には両者はほぼ同じ様に見える。メニュー内には多岐にわたる画質調整項目があるので、それらを調整することにより狙った画質を得ることが出来るだろう。また本機のほうが若干ではあるがゲインを上げた時のノイズの乗り方が少ないように思えた。

本機の大きな特色の一つでもあるWi-Fi経由でのライブロギング/ライブビューイングにオプションで対応している。この機能は既にPMW-500に搭載されているものと同じで。Wi-FiアダプターCBK-WA01を装着することにより、メタデータワークフロー”XMPilot”に対応する。Wi-Fi経由でのプランニングメタデータの送信や、収録中にプロキシAVデータをiPadやiPhoneのようなデバイスで確認する事ができる。つまりライブビューイングも可能ということだ。今回残念ながらWi-Fiアダプターが装着されていなかったのでこの部分の検証が出来なかった。

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本機上部には100Base-TXのイーサネット端子が付いている。この端子を使うことによりネットワーク上のPCから本機に記録してある映像データに直接アクセスすることができる。

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IIS にチェックを入れる

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TCP/IPv6のチェックをはずす


インストールが終了するとIIS 7が動作を開始する。確認のためには、http://localhost/ にアクセスし、以下のような画面が表示されればIISの導入が完了となる。

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その後インターネットブラウザにPDW-680のIPを直接入力することにより、IDとパスワード画面が出現。マニュアルに書かれている工場出荷時のIDとパスワードを入力することにより下記の画面が表示される。

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ハイレゾとローレゾのダウンロード画面が出てくるのでHTTPまたはFTPでダウンロードが可能となる。ローレゾはいわゆるプロキシ画像。このカメラは4:2:2 50Mで収録しつつMPEG4でプロキシ映像を記録している。ファイルサイズはおよそ1/20。ネット回線に詳しい方なら現場のカメラからネットを通じて編集システムのあるサーバーに直接データを送る事が可能である。またSONYもFTPサーバーへのアクセスでのソリューションを進めている。

短い時間ではあったが PMW-680を触ってみての感想は、今までのSONYの流儀を踏襲したしっかりしたカメラという印象。特に放送局およびケーブルテレビ局であれば導入の価値が非常に高いと思われる。またTV以外にもVPなどの制作系にも十分対応できるカメラと感じた。やはり2/3インチという事もあり、今までのSDレンズ資産を生かすことも可能だ(ただし画質は落ちてしまいますが)。

PMWシリーズと比べるとディスクを回すための機械的な部分がどうしても電力を食っているようである。純正のVマウントバッテリーBP-GL95であれば約2時間前後は収録できるようだが、もう少し消費電力が低ければもっと現場が楽になるところだ。またビューファーが別売りなので、購入の際にはその分の予算を計上しておかないといけない。ただ、HDWシリーズとコネクタ部分は共通なので、100万オーバーの液晶のカラービューファーを選択することも可能なのだ。

SONYのディスクメディアは高耐久を売りにしており、もしディスクに多少水がかかっても拭けば問題ない。また激しい揺れに対しても大量のバッファーを積むことにより記録エラーを回避している。これらの信頼性は現場で撮影する者にとっては何よりの安心材料である。メモリー価格が著しく下落している現在、メモリー収録のコストパフォーマンスは以前に比べるとかなり増してきたが、やはりメモリーエラーによる収録の失敗は付きまとう。自分の周りでもたまにこのような事故を耳にする事がある。まあテープメディアの頃もトラブルはあったのだが、このプロフェッショナルディスクによる収録&アーカイブは、今までの中で一番信頼性が高いと感じる。

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WRITER PROFILE

猿田守一

猿田守一

企業、CM、スポーツ配信など広範囲な撮影を行っている。PRONEWSではInterBEE、NAB、IBCなどの展示会レポートを行った経験を持つ。