13回目の「CEDEC 2011」

9月6日から9月8日の3日間、神奈川県のパシフィコ横浜・会議センターで、コンピュータエンターテインメント開発者向けのカンファレンス「CEDEC 2011」が行われた。CEDECはコンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンスの略で、その名の通り著名な開発者による講演や最新テクノロジー、事例などを紹介する日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けのカンファレンスだ。主催者の発表によると、参加者の職種はプログラマーが約45%ともっとも多く、アーティストが約20%、企画やサウンドが10%といった割合だ。CEDECは毎年8月や9月に行われていて、1999年に第1回が開催されて以来、今年で13回目となった。

9月6日のセッションのスケジュール。この密度で3日間行われる

CEDECの魅力といえば、セッションの数だ。1つのセッションは1時間で、それが会議センターの1階から5階の約10ヶ所で同時に行われる。各セッションの間には20分から1時間の休憩があり、朝9時45分から夜の18時50分まで1日6回のサイクルで行われる。3日間で合計約200以上ものセッションが行われるのだ。参加費は有料で、3日間有効のレギュラーパスが30,000円(CESA会員や学生は20,000円)、会期中1日のみのデイリーパスは当日の価格が20,000円(通常申込は15,000円)だ。できるだけ多くのカンファレンスに参加しようと朝から夜までずっとカンファレンスに参加してい人も多かったようだ。

映像制作のセッションも見逃せない

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会場の中でももっとも広いメインホール

カンファレンスの中でもっとも多いジャンルは、約200件のうち84件行われたプログラミングのセッションだ。なので、CEDECは映像制作者に無関係のイベントかというとそうでもない。2009年より会場をパシフィコ横浜・会議センターに移してセッション数が大幅に増えてからは映像関連のセッションも増えてきている。今年は映像制作に関するセッションは37件行われた。

例えば、アニメーターの橋本敬史氏と株式会社セガの第一CS研究開発部、岩出敬氏による「アニメのエフェクト、ゲームのエフェクト」は映像制作のセッションの1つだ。テレビアニメの制作現場で使われるエフェクト作画のテクニックを知って、ゲームエフェクト制作技術を向上させようというセッションだ。数々の著名なアニメで特技監督やエフェクト作画監督として活躍している橋本氏が、過去の作品の中でどのように煙を再現しているのかを白板に例を描きながら紹介していった。

アニメーターの橋本敬史氏(右)と株式会社セガ第一CS研究開発部グループリーダーの岩出敬氏(左)

橋本氏はセッションの最後に 「3Dはカッコいいしリアルだと思うのですが、リアルであればあるほどウソをついていることがバレます。特に気になるのが爆発で、壁に穴が空いて煙とかが出る場合をアニメでやるときは3パターンぐらい制作して、それらを大きくしたり小さくしたり裏返せば6パターンぐらいになります。それにアレンジを加えれば、いろいろなバリエーションが生まれます。3Dは素材が1つあるだけで、完結している場合が多いようです。それをもっと変えていけばバリエーションが生まれてくると思います」とアドバイスを送っていた。

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バンダイナムコゲームス 開発スタジオ ビジュアルアートディビジョン VA1部 VA3課 チーフの西田幸樹氏(左)、同社開発スタジオ P&SDV プログラム1部 プログラム3課の相川将人氏(中央)、同社開発スタジオ P&SDV プログラム1部 プログラム3課の多田航氏(右)

もう1つ気になった映像関連のセッションは、10月13日にプレイステーション3やXbox 360で発売が予定されている「エースコンバット アサルト・ホライゾン」のインゲームカメラ制作事例だ。「カメラが変わるとゲームが変わる」というテーマで、超音速、大破壊シューティングをプレイヤーに体感してもらうためのカメラ設定のこだわりについて、1時間にわたって紹介された。まず、他のスタッフとゲームイメージを共有するために、「戦闘機の戦いでどんな戦いをしたいのか」とか「どんな場所で戦いたいのか」といったキーとなるアイデアをたくさん盛り込んだビジュアル主導のイメージ映像を初期段階で制作した。職種間でイメージを共有できたことにより、開発にブレがなくなったという。

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爆発が大きすぎてちょっとわかりづらいが、何気ない爆破でもビルが傾いていることが紹介された

カメラの手ぶれやプレイヤーがダメージを受けたときの振動を追加することで臨場感やスピード感、体感速度がかなり上がることも紹介された。例えば、単純な飛行でも雲を通過したときにカメラが揺れるようにすることによって、単調にならなくなることなどだ。また、カメラ部分をプログラマーだけで組んでしまうと、水平線のライン、つまりアップベクターが水平になることが多いが、ちょっと傾けることで見え方が変える。アーティストにとって重要なのは水平ではないことで、画面内でものがどういう角度で存在しているのかということを意識したことも紹介された。

ユニークな展示が多いインタラクティブセッション

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会場のエントランスでは今年から初めて開催される参加者と発表者の議論を主眼とした「インタラクティブセッション」の展示が行われていた。かなり目を引く展示が多数行われていたので、その一部を紹介しよう。

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触れる多視点裸眼立体ディスプレイ。上下左右から裸眼で見られるキャラが投影される。さらにユーザーが映像投影領域に人差し指を入れると反応も起こる


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ゲームの操作性を向上するアクティブ方式ハプティックアダプタ。モーターを実装して電気的に触覚へ情報を送ってくれる


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投球動作を入力可能なボール型ハンドインタフェース。専用のボールを手に持って画面に向けて投げるまねをすると、画面の中ではボールが投げられる。強く投げるまねをすると、画面内で力強いボールが投げられるようになる


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他者の存在を感じられる動画観賞システム。ユーザの興奮はてのひらにつけられたセンサーで発汗を感知して計測する。他者を模したアバターを動画とともに表示することで、他者を感じながら動画を鑑賞することができる

2012年は8月20日~8月22日に開催決定

今年のCEDECは、昨年と同じパシフィコ横浜・会議センターで行われたが、セッションの数は昨年より増えているし、来場者も年を追うごとに増えているようだ。スポンサーの面では、今年はプラチナスポンサーとしてモバゲーで有名な「DeNA」やSNSで有名な「GREE」といったモバイルプラットフォームで活躍する両社が協賛していた。カンファレンスや会場内のいたるところで、同社のロゴを目にした。コンピュータエンターテインメントが携帯電話やスマートフォンへシフトしてきていることや、今後両社が業界をリードしていきそうな予感がCEDECからも改めて感じられた。

2012年のCEDECは、8月20日から8月22日、会場は今年と同じパシフィコ横浜・会議センターで行われる予定だ。来年のCEDECにも積極的に注目していきたい。

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