最近の映像業界の話題なのが、ビデオでもシネマ的な撮影が可能な大判センサー搭載のシネマカメラやカムコーダー。特にこの大判センサー搭載のカメラに熱い視線を送っているのがウエディングビデオの制作現場だ。大判センサー搭載のカメラ特有の表現がウエディングビデオの転機になろうとしているからだ。そこでウエディングビデオの撮影や制作で日本トップクラスのシェアを誇る日本綜合テレビに、現状や今後のサービスの展開といった最新事情を聞いてみた。

日本でナンバーワンのウエディングビデオ制作会社

ウエディングビデオの最新事情について聞くために訪れたのは東京・新宿にある日本綜合テレビの本社だ。事業所の中では黒のスーツ姿のカメラマンが待機をしていたり、フロアではメディアのオーサリングも行われている。そんな光景を見るとウエディングビデオ制作の企業にきたということを実感する。話を聞かせていただけたのは専務取締役の羽藤雅康氏と本社管理本部制作担当部長の能口修氏だ。

「私どもはブライダルビデオというものを本格的に一般に普及させた最初の会社だと自負しています」と羽藤氏が会社の概要から紹介から話を始めてくれた。会社の設立は昭和51年。その当時のウエディングビデオというのは放送局の機材を使って放送局のプロダクションの人が行うのが一般的で、30分ぐらいでも何十万円というコストのかかる時代だった。しかし、ちょうどそのころ普及型のVHSビデオデッキやベータマックスが競合している真っ最中で、なんとかこれらの機材を使って手ごろな価格でお客さんにウエディングビデオをご提供できないか、というのが会社の出発点だったという。

そして現在の業界の地位を「日本でナンバーワンのウエディングビデオ制作会社といっても間違いではありません」と羽藤氏は言い切る。多い日は東京だけで200チェーン、少ないときでも100チェーン、約年間3万組ぐらいの撮影・制作という実績を聞けば、ナンバーワンというのも納得する話だ。

ここまでシェアを伸ばせた秘密は全国展開だ。国内に本部が2拠点、支社が4拠点、営業所が3拠点、事業所が3拠点の合計12ヶ所で展開が行われている。東京だけでみればかなりのシェアを持っている競合他社はあるが、全国展開ということで見れば日本綜合テレビのほうがはるかに大きいというわけだ。日本一のブライダルビデオ業者ならではのエピソードとして、羽藤氏と能口氏がこうも語ってくれた。

羽藤氏:私どもが機材を選定しますと、競合他社も”右へ倣え”で同じものを採用します。当初はビクターのカメラとビデオのセットでやっていたのですが、他社も100パーセントそうなりました。ソニーさんも松下さんもありながらです。その後、ソニーのHXR-NX5Jにすれば、ほとんどウエディング業者はその機材になります。一応一番のライバルとして機材もしっかり見られるからだろうと思います。

能口氏:各カメラメーカーさんなどは商品を企画する際にまず弊社のほうにこられて”どういう商品がいいですか?”とリサーチされることもあります。そこで言った意見が次の商品にプラスしてもらえるということもあります。われわれの会社の動向がこの市場の動向を変えていくということもあるのですよ。

今後は「ビデオ」から「シネマ」が主流に

日本綜合テレビが他社の競合企業と違うところに海外展開があるだろう。中国の事務所は市場のリサーチがメインだが、ニューヨークには映像の制作のほかに、より質の高い映像のトレンドを積極的にキャッチするいう目的でも設立をされている。現状の映像では満足しない。もっと質の高い映像をつねに目指していくというこの姿勢もナンバーワンを支えているのではないかと思う。海外展開について羽藤氏はこう語る。

羽藤氏:一番のインパクトがある映像を作っているのがアメリカです。しかもアメリカの中でもニューヨークはいろんな情報の発信地です。ですからそこでいろんな情報をキャッチするとの同時にアメリカのウエディングのための映像制作も行っています。例えばですが、ハリウッドでもインパクトがある映像が作られていますので、そういうところも注目していきたいなというふうに思っています。

気になるのはニューヨークでのトレンドだ。「従来のビデオの映像ではなくて、映画のようなブライダル映像を作ることが、アメリカの展示会やニューヨークの展示会で脚光を浴びているという状況ですね」と羽藤氏。能口氏も「ニューヨークは大判センサーが主流になっていて、ほとんどシネマになっています。今後日本に関してもビデオからだんだんシネマに移行していくのではないでしょうか」と日本の市場の予測を語ってくれた。

こうしたシネマスタイルのサービスを日本綜合テレビでも国内でスタートするという。それが12月1日よりリリースする「Cinematic Weddings」だ。一組一組のカップルの結婚式の映画をつくるというコンセプトで撮影、制作するというもので、ワンカットワンカットを映画撮影と同様に構図にこだわったり、映画やフィルムのような質感や自在なピンフォーカスを使って撮影するというのが特徴だ。機材も従来のサービスではソニーの業務用カムコーダーの「HXR-NX5J」で撮影されているが、Cinematic Weddingsはまだ明かせないがシネマカメラの投入も予定しているというとのことだ。

Cinematic Weddingsの予告編CM

そして、日本綜合テレビではCinematic Weddingsの撮影とディレクションを行うシネマトグラファーの募集も行っている。シネマトグラファーとはカメラマンが単に撮影、記録するだけではなくて、ディレクションも含めて観る人にアピールする印象的な映像を制作するスタッフのことだ。

羽藤氏:シネマトグラファーはカメラマンよりももう一歩進んだスタッフのことです。今まではカメラマンには”こういうところをとりなさい” “こういうふうな場面をとりなさい”という基本的なカットを私どもで具体的に指導してきています。シネマトグラファーは、従来のカメラマンに加えて、お客さんとの対話の中でお客さんの要望するものを即自分なりに判断して撮影していくスタッフのことです。つまり一番いいものをディレクションできる方をシネマトグラファーというふうに位置づけています。別の言い方をするならば、将来のウエディング映像を想像できる人ですね。

シネマトグラファー募集の詳細は下記のアドレスでも紹介している。興味のある人はぜひアクセスをしてほしい。
http://nstweb.co.jp/saiyo/cinematographer/

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オフィスの制作部の様子。式のオープニングといった演出関係を手がけたり編集が上がったものをBlu-rayにするためのオーサリングが行われている

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取材をした11月9日は「土曜日の大安前」という婚礼が盛んな日の前日で、スタッフが機材倉庫で準備に追われていた。HXR-NX5Jやこれからスタートするシネマの機材のほかにバックアップのレコーダーやムービーなどが管理されていた

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