AVCHDを採用したビデオカメラが増えてきたが、編集環境はどうなのか?

昨今のビデオカメラ事情を見ると、従来のテープに加え、メモリーカード、ハードディスクと記録媒体の種類も増えた。種類が増えれば当然各々に適した記録フォーマットが生まれるもので、特にHDになってからは、HDVにXDCAM、DVCPROHDにAVCHD、挙げれば限がない。当然それらを編集するための編集アプリケーションも進化するPCスペックと相まってバージョンアップを繰り返し、次々と登場するフォーマットに対応してきた。

しかし、どんな時代も、その時点で最新のPCでも扱いにくいフォーマットは存在する。とりわけ、現在ではAVCHDがその筆頭に挙げられるだろう。

そもそもAVCHDはなぜ編集に向かないのか。それはAVCHDに採用されているMPEG-4 AVC/H.264圧縮が、MPEG2よりもはるかに複雑なフレーム間予測、量子化、符号化を施しているため、PC上でリアルタイムに伸張(デコード)しながら再生、編集するには、非常に高性能なPCスペックを要求するからだ。

具体的にはQuad Coreと呼ばれる4つのCPUコアをもつCPUのスペックを以ってすれば、1レイヤーのリアルタイム再生、編集程度なら行える。とは言え、Quad Coreを搭載したPCを使用しているユーザーは、よほどの自作好きな方やエンコードを生業とでもされていなければ、そうは多くないはずだ。

では、どうやってAVCHDフォーマットの映像を編集するのか。

現在発売されているノンリニア編集アプリケーションでは、次のような方法が採られている。

  1. AVCHDファイルをそのまま扱う。
  2. 別のフォーマットに画質をほぼ維持したまま方式変換(エンコード)して、そのファイルを元に編集する。
  3. 低画質のプロキシファイルを生成して、編集結果を出力する段階で元ファイルをエンコードする。

1は先に述べたように現在普及しているPCのスペックでは一般的でなく、また3は編集中に画の正確な評価や調整がしにくいことから、2の画質の劣化を防ぐ他フォーマットへのエンコード方式が現在では一番妥当な編集方法と言えるだろう。

エンコードと聞くと、「時間がかかるんだろうなぁ?」ということが真っ先に頭に浮かぶ。筆者もそのとおりだ。実時間以上の時間がかかるし、エンコード中はPCを弄ることもできず、編集に取り掛かるまでのアイドルタイムが非常に無駄だ。

しかしこのエンコード作業、当然CPUに負荷をかけてエンコードするソフトウェアエンコードであるから時間を要すのであって、実はエンコードを専門とするハードウェアに処理をさせれば時間は大幅に短縮できるのだ。

“FIRECODER Blu”でハードウェアエンコードをテスト

先日トムソン・カノープス社から発表されたハードウェアエンコードボード”FIRECODER Blu”。今回は本製品の評価機をお借りできたので、実際にソフトウェアエンコードとハードウェアエンコードの時間、画質を比較してみた。

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今回用意したPCとシステムスペック。

今回用意したのは、CPUにIntel Core2Duo E8400 3.00GHz、メモリ2GBと、特段ずば抜けたスペックではないミドル級のPC。

今回はソフトウェアエンコードとハードウェアエンコードの比較を行うため、同社のソフトウェアエンコーダーAVCHD converterと、FIRECODER Bluでの比較とした。

予めご承知いただきたいのは、AVCHD converterは、エンコード後の出力ファイルがCanopus HQ CodecのAVIファイルであり、FIRECODER Bluが出力するファイルはMPEG2ファイルである点だ。ファイル容量では、出力されるフォーマットが同一フォーマットではないため、あくまで元素材よりもどれほどファイルが大きくなるのかを比較いただきたい。

後編へ続く!

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System5 Labs

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SYSTEM5スタッフが販売会社ならではの視点で執筆します。