難攻不落のAVCHD。1年後に魅せたその姿は?

昨年の今頃、トムソン・カノープス社から発表されたばかりのハードウェアエンコードボード”FIRECODER Blu”を紹介した際、筆者はAVCHDをPCで扱いにくいフォーマットと表現した。

当時はFIRECODER Bluを利用して、Canopus HQ codecなどの中間コーデックに変換することで、AVCHDフォーマットの編集は現実的になったと結論付けたが、あれから1年が経過し、コンピュータの処理性能もCore i7プロセッサの普及や、ノートPCにもCore 2 Duoプロセッサが搭載されるなど、格段に進歩した。

中間コーデックへの変換は、わずかではあるが、画質変化を伴う。はたしてAVCHDフォーマットのファイルを中間コーデックに変換することなく、ネイティブのまま編集することは1年の歳月を経て、現実的なものとなったのだろうか。

折しもつい先日、トムソン・カノープス社から新たなAVCHDフォーマットのデコードエンジンを搭載した編集ソフトウェアEDIUS Neo2 Boosterも発表された。EDIUS Neo 2 Boosterは新たなAVCHDフォーマットのデコードエンジンの開発で、AVCHDフォーマットのファイルをネイティブ編集可能といわれている。

今回は新製品のEDIUS Neo2 Boosterが、AVCHDフォーマットの編集をどれほど現実的なものに変化させたのか、またノートPCでどこまで編集できるのか。実際に検証してみた。

syslab0301.jpg syslab0302.jpg

Acer ASPIRE 5739G本体

CPUにはIntel Core 2 Duo P8700 (2.53GHz)

まず、今回の検証にあたって、10万円程度のノートPC Acer ASPIRE 5739Gを用意した。CPUにはIntel Core 2 Duo P8700 (2.53GHz)、Memoryは4GB、GPUにはNVIDIA GeForce GT130M (最大2,286MB)、OSはWindows Vista Home Premiumを搭載。用意されたPCに早速EDIUS Neo 2 Boosterをインストールする。実に簡単で、インストールディスクを挿入すれば、自動的にウィンドウがポップアップしてくる。ここからInstallを選び、後は進んでいくだけだ。

インストール前に、予めノートPCに映像編集用の環境づくりをすることをお勧めしておく。とりわけノートPCのようなモバイル用途のCPUには、バッテリー使用での省電力性を優先させるため、SpeedStepテクノロジーのようなCPUの動作周波数や駆動電圧を負荷率によってコントロールする技術が組み込まれている。そのため、動画編集のような常にCPUへの負荷を必要とするアプリケーションを使用する場合は、常にCPUがフルに処理できるよう、省電力設定はできる限りOFFにしておくほうがよいだろう。Windows Vista搭載のノートPCの場合は、電源オプションの中で設定する場合が多いが、メーカーによっては、独自の省電力ユーティリティーを搭載したPCもある。予めノートPCで設定方法を確認しておいたほうがよいだろう。

早速EDIUS Neo 2 Boosterを始動!

syslab0305.jpg

さっそくEDIUS Neo 2 Boosterを起動すると、EDIUSユーザーには見慣れたプロジェクト設定画面が表示される。ここで、編集を行うプロジェクトの解像度・フレームレートなどを設定する。もともと主要フォーマットに対応したプリセットが用意されているので、初めてのユーザーでも混乱することはないだろう。

今回は素材として、昨年のFIRECODER Blu記事執筆の際に用意した、Panasonic AG-HMC155で撮影したAVCHD形式のファイルを使用する。記録モードは最高画質のPHモード(1080i 最大24Mbps)の高ビットレートのAVCHDフォーマットのファイルだ。そのためプロジェクト設定は、OHCI HD 1920/59.94iを設定しておいた。

syslab0307.jpg

さっそくBinへのクリップの読み込みを行いところだが、ひとつ前準備をしておこう。EDIUSシリーズでは、タイムラインやプレビューウィンドウの再生には、メモリに先読み(バッファリング)していく方法がとられている。このバッファ容量は多いにこしたことはない。このバッファ容量を増やすことと、リアルタイムDV出力のチェックをはずしておこう。リアルタイムDV出力はIEEE1394上にリアルタイムにDV信号を出力する機能だが、HDでは出力されない。しかし、わずかだがCPUへの負荷をかけているようなので、外しておいたほうが、より効率よくAVCHDの再生が行える。

果たしてリアルタイム再生は可能なのだろうか?

ここまでの準備が整ったら、さっそく編集に取り掛かろう。メーカーによれば、Core 2 Duo環境では、1440×1080の解像度で1ストリームの再生が可能といわれていたが、今回が1920×1080のファイルを読ませている。今回の編集では、無謀と思われる2ストリームの同時再生は行わなかった。1ストリームでのディゾルブとテロップの混在する1分程度のストレートニュース向け編集を想定してみた。 果たしてリアルタイム再生は可能なのだろうか。

■EDIUSNEO2Booster

結果は動画の通りだ。1ストリームであれば、1920のAVCHDフォーマットのファイルもストレスなく再生することが可能だ。再生バッファも十分に確保されている。

■EDIUS Neo 2

ちなみにまったく同じタイムラインをEDIUS Neo 2で再生してみたが、まともに再生はできなかった。正直、これほど違うものかと驚かされた。新開発のAVCHDフォーマットのデコードエンジンは非常に編集に効果的だ。中間コーデックに変換せずともネイティブで編集できることは、編集までのエンコードにかかるロスタイムが解消でき、またノートPCを現場に持ち込んで編集することも可能だ。さらに同等以上の性能を有するデスクトップPCならば、同社のHDSPARKを使用することで、HDMI出力からフル解像度・フルフレームでモニタリングを行いながら編集も出来る。

■Vegas Pro 9

AVCHDフォーマットの編集として挙げられるソフトウェアにSONY Creative Software社のVegas Pro 9がある。Vegas Pro 9はEDIUSの再生概念と異なり、タイムラインを先読み・バッファリングするのではなく、再生を繰り返すことで、プレビューに適したテンポラリファイルを生成する仕組みとなっている。今回はVegas Pro 9でも全く同じ編集タイムラインを作成し、再生してみた。

テロップやトランジションのない部分ではスムーズに再生するものの、ディゾルブ区間は残念ながらそのまま再生するとコマ落ちしてしまう。ディゾルブ区間周辺をIN-OUT区間で囲み、その部分のみをリピート再生すれば、徐々に再生はスムーズになるが、編集中に都度この作業を行うのは骨が折れる。

EDIUS Neo 2 Booster とAVCHD

syslab0308.jpg

▲EDIUS Neo 2 Booster インターフェース

もっと高性能なPCを用意すればよいのかもしれないが、今回の同一環境テストでは、軍配はEDIUS Neo 2 Boosterにあがった。

AVCHDフォーマットは業務用ビデオカメラでは、現在PanasonicとSONYの一部カメラに採用されているが、家庭用ビデオカメラでは大半のカメラがAVCHDフォーマットを採用している。これまで「扱いにくい」と表現してきたAVCHDフォーマットだが、EDIUS Neo 2 Boosterの登場は、「扱いにくい」ではなく、「十分編集に耐えうる」フォーマットになったといえる。

今回は特定のノートPC環境で評価テストを行ったが、Core i7を搭載したデスクトップPCなどでは、さらに快適な編集環境が実現できるだろう。1年という月日の流れによって、AVCHDフォーマットの編集は、もはや恐れることはないだろう。

■PCについての補足

ちなみにCore 2 Duoと単に言っても、数多の製品が存在する。モバイル用途のCore 2 Duoには全66種類がラインアップされている。それぞれ電力設計や動作周波数が異なり、駆動時間を重視するモバイルノートPC向けに設計されたものや、俗にモバイルワークステーションと呼ばれるような高速処理性能に重きを置いたノートPC向けに設計されたものなど多岐にわたる。 今回用意したノートPCは、P8700というプロセッサーナンバーのCore 2 Duoを搭載しており、現在販売されているノートPCの中でも、ホームユースを中心とした製品によく搭載されている。それほどずば抜けた処理性能を持つ製品ではなく、およそ一般的な性能のノートPCであるといえるだろう。

WRITER PROFILE

System5 Labs

System5 Labs

SYSTEM5スタッフが販売会社ならではの視点で執筆します。