[新・デジタルサイネージ入門]Vol.02 デジタルサイネージの特性とは?

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[新・デジタルサイネージ入門]Vol.02 デジタルサイネージの特性とは?

2009-01-23 掲載

[新・デジタルサイネージ入門]Vol.02 デジタルサイネージの特性とは?

デジタルサイネージの特性とは?

映画時代のあと、映像メディアはこの50年間テレビの時代であった。これは高度成長や免許制度などに守られてきたのと同時に、エンタテインメント性の高さも際だっていたと言える。そこには多彩なクリエイターたちが次々に新しい番組を送り出していった。そしてその作品性の高さだけではなく、広告媒体としてもテレビは50年間にわたって王者として君臨し続けてきた。その部分を踏まえ、今回はデジタルサイネージのメディア特性を考えていこうと思う。

現在テレビ広告(CM)をベースにしたスタイルは、ビジネス的に見ると非常に良くできたモデルである。テレビ局、広告会社、スポンサー企業そして消費者であり視聴者でもある私たちが「五位一体」で作り上げてきた素晴らしいビジネスモデルだと私は思う。これまでのテレビのビジネスモデルを全て否定して、それに変わる新たな優れたビジネスモデルが登場しているとはこれまでのところは思えない。インターネット放送は有力で魅力的だが伝送路やIP技術という技術的観点以外のビジネスモデルの分野でテレビを否定できるまでは発展していない。

デジタルサイネージはメディアとしてどう捉えるべきか?

前回も述べたように、家以外の場所での映像メディアがデジタルサイネージだ。そうした場所では人々の視聴スタイルがテレビとは大きく異なる。ますテレビはディスプレイと視聴者はどちらも固定されていて動かないという前提である。ディスプレイが動かないのは当然として、仮に「トイレタイム」で席を外したとしても、あくまでも人は動いてはいないのだ。ところがデジタルサイネージの場合は、そのほとんどの視聴スタイルが人間の側は動いている、歩いていることが多い。こうしたメディアがこれまで存在していなかったので、デジタルサイネージにおけるコンテンツのあり方、映像手法はこれまでほとんど確立してきてはいない。クリエイターの仕事場として認識されていなかったのだ。

多くのデジタルサイネージは、ディスプレイの特性を最大限活用するあまりに動画を中心で表現しようとする。しかし先ほど述べたように、「動いている人」の視界の中は元々全てが動画である。動画の世界の中にディスプレイで動画を表示しても同化してしまって期待されるようなインパクトや効果が必ずしも得ることが出来ないのである。重要なことは動画であることよりもアテンションになることである。そのためには「変化」が重要なポイントとなるのであって、動画から静止画に変わる変化や、複数ディスプレイによる再生順の変化などの方が遙かにインパクトがあるのだ。

マーケティングの観点からのデジタルサイネージのメディア特性とは?

やはりテレビとの比較になるが、マーケティングの観点からは、「時間」と「場所」というパラメータに大きな特色があるのだ。テレビは番組編成によって時間を制御することが出来る。朝のニュースから始まってワイドショー、バラエティなどがおおよそどこのテレビ局(地上波)も同じような順番で放送されている。しかしながらテレビの決定的な弱点は、場所が特定できないという点だ。ある番組がどこで誰に見られているのかを捕捉ことは膨大なコストをかければ不可能ではないだろうが事実上困難である。一方のデジタルサイネージの場合は、これは当たり前すぎる話が極めて重要であるのだが、かならず設置場所や表示場所が特定できるのだ。渋谷ハチ公前のどの大型ビジョンなのか、あるいや山手線の今どこを走っている電車の何両目のどの扉に設置されているディスプレイなのか鋭角に把握することが出来る。さらにデジタルサイネージは、これまでのポスターやネオンサインのように時間を制御が出来なかったメディアとは異なり、ディスプレイを表示機器として利用しているからテレビと同じような時間編成が可能である。

すなわちデジタルサイネージの最大のメディア特性は「時間と場所を制御できる唯一のメディア」ということなのだ。

それでは時間と場所が制御できるとどんな意味があるのだろうか。よくマーケティングの世界では年齢や性別、職業などといったパラメータを駆使してマーケティング戦略を考える。企業の担当者は、自社の商品やサービスを誰に対して訴求するべきかを検討し、そのターゲット属性を先ほどのようなパラメータ抽出して、そのターゲットにリーチしやすいであろうメディア戦略を考える。テレビの世界ではF1M1とか呼ばれるものである。これはもちろんアプローチとしては有効であろうが、こうしたパラメータよりも、ある日ある時に「渋谷ハチ公前にいる」というパラメータは極めてリアリティがあるものだ。平日の夕方6時にハチ公前にいる人は、先ほどの年齢性別などのパラメータではセグメントしきれないが、そのときにその場所にいる人々は、これから待ち合わせて飲みに行くのだろうとか、仕事が終わって家に帰ろうとしている、というようにある共通の状況におかれていると判断することが出来るはずだ。こうした人々に適切な情報(広告)を訴求することはこれまでのメディアでは不可能だった。そして急に夕立が来たとか、電車が遅れているとかといった要素を加味することが出来ればこれまでにはなかったメディアとしての大きな付加価値を生み出すことが出来るはずだ。

時間と場所を特定できるという唯一最大のメディア特性を十二分に理解したうえでデジタルサイネージは今後活用されていくものであり、クリエイターの新たな活躍の場がこれから急激に創出されて行くに違いなのである。


[ Writer : 江口靖二 ]
[ DATE : 2009-01-23 ]
[ TAG : デジタルサイネージ ]

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江口靖二   1986年慶應義塾大学商学部卒、慶應義塾大学新聞研究所修了、日本ケーブル テレビジョン(JCTV)入社。技術局、制作局、マルチメディア室、経営企画 室を経て開発営業部長。CS、BS、地上波の番組制作、運用を経験。00年AO Lジャパン入社、コンテンツ部プログラミングマネジャー。02年プラットイーズ 設立に参画し放送通信領域のコンサルティングに従事。08年独立。現在デジタル サイネージコンソーシアム常務理事、慶應義塾大学DMC機構研究員、株式会社シ ェフィーロ取締役などを兼務。


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