[Vegasで始めるMAのイロハ]Vol.01 映像人に必要なMAの基礎
2010-02-27 掲載
いつの頃からだろう、ディレクターが編集できて当たり前って事になったのは。先日久しぶりに会ったディレクター(以前は私のスタジオによくMA*を依頼してくれていたのだが)に聞くと最近はMAも自分でやっていると言っていた。テクノロジーの発達のせいか、不景気のせいか、パソコンでできる事は自分でやれということなのか。もちろんMAスタジオと同等の事など、技術的にも設備的にもそうそうできる物ではない。だがMAにまで予算が回らないような仕事や、自主制作、趣味の映像作品でも、その音声を向上させるだけの環境はすでに手近な所に用意されている。
特にこのVegas Pro 9には映像編集ソフトでありながら音声編集専門ソフトと比べても遜色のないほどの機能とインターフェイスがある。Final Cut Studio にしても Adobe CS にしてもパッケージの中に音声編集ソフトは入っているが、映像編集ソフト本体の中にここまでの機能が内蔵されているのはおそらくVegasだけだろう。これから3回に分けて、VegasPro9を使用して、"ナレーション録り〜整音〜ミキシング"といった基本的なMA作業をレクチャーしてみようと思う。ぜひ挑戦してほしい。
*MA(マルチオーディオ):映像の現場音、アフレコ、ナレーション、効果音、BGM等、マルチに入った音素材のそれぞれを整え、最終的にバランスをとってミックスする音声編集作業の事。広義では同じ設備の中で行われるアフレコ、ナレーションの録音や、ミックスした後のマスターデータ製作を含む事もある。
録音環境の話
第一回目はナレーション録音に挑戦してみよう。基本的にはドラマのアフレコも要領は同じなので参考にしてほしい。まずはマイク周りの環境だが、ここで知っておいてほしいのは防音と吸音の違い。防音とは文字通り外部の音を遮断する事を言うが、これはスタジオを作るくらいの覚悟がないと現実的には不可能だ。もちろん金銭的、環境的に余裕があるならやるに越した事はないが、例えばホームセンターレベルで販売されている防音用品(窓の隙間テープや鉛のカーテン等)に音響的防音効果を期待してはいけない。
せいぜい生活騒音をいくらか軽減するくらいの効果しかない。外部の音を遮断するような状況を作ろうとすると結局部屋の中に浮いた部屋を作る位の工事が必要になって来る。それは無理だとしても録音のグレードを上げる為にできる事はまだある。その一つが吸音だ。
|
|
| 収録のためにベストの環境を考える |
これは録音時に余計な余韻、残響音( エコー、リバーブ)を極力減らして収録するという事だ。後で整音やミキシングの時に映像の雰囲気に合わせて残響音を付け加える事はできても、一度録音されてしまった残響音を取り除くのは至難の業だ。だから録音の時にはできるだけデッドな状態(声が響かない=残響がない状態)でやるのが望ましい。これは案外身の回りの物を利用したり、マイクの位置や角度を変えるだけでも効果がある物なので出来るだけの事はやっておこう。
残響音の正体は反射音だ。口から出た声が部屋の壁、床、天井、果ては家具や機材にも跳ね返って時間差を付けてまたマイクに戻って来る。これを防ぐ為にスタジオでは壁や天井に吸音材(スポンジや特殊な材質の物)を張り、床にはカーペットを敷く等の方法で対処している。また壁や天井が180度で向き合っていると反射を繰り返してしまうのでわざと角度を付けたり波打つような形になっている所もある。
部屋に吸音を施すとこのように大げさな事になってしまうが、要はマイクと話し手の周りを柔らかい物で囲んでしまえばいい。最近は専用の小型吸音壁も発売されているのでそれを利用するのもいいだろう。また、話し手の周りを丸くカーテン等で囲むだけでも効果はある。消防法に触れてはいけないが、厚手の布や毛足の長いカーペットなどを天井に垂らすのも効果的だ。
MAの押さえどころ:マイク
おおざっぱに分類するとマイクはコンデンサーマイクとダイナミックマイクに分けられる。特徴はコンデンサーの方は電源が必要でマイクによって供給方法は乾電池であったりプラグインパワーであったりファントムであったりと様々。その分ダイナミックに比べて遥かに高音質で収録可能録なためスタジオの録音ではまず間違いなくコンデンサーマイクを使用する。価格も最近安くていい品物が多く出てきているので個人でも無理なく使えると思う。
ただし、構造的にはダイナミックに比べてかなりナイーブな物なので取り扱いと保管には注意が必要だ。コンデンサーとダイナミックという分類とは別に指向性の違いというものがあり、目的によってしっかり使い分けなければいけない。指向性とは音を拾う角度と方向の事で、よくロケで使われるガンマイクという物を高感度だと誤解している人がいるようだが、実はこの指向性の角度が非常に狭い物の事をいう。角度が狭い分、マイクが向いている方向の以外の音が入りにくく、結果狙った音がクローズアップされるという仕組みだ。
それに比べてスタジオで使われるコンデンサーマイクは総じて指向性の角度が広い。その分豊かな音で収録可能なのだが、これは防音や吸音がしっかりできている環境での話で、周りで鳴っている余計な音や残響音も豊かに綺麗に拾ってしまう。故に環境によっては多少の音質を犠牲にしてでも指向性の狭いマイクを使った方がいい結果に繋がるかもしれない。ガンマイクを使うというのも状況によってはアリだと思う。
指向性の話のついでにマイクのセッティングについて話しておこう。言葉をハッキリ録るためにはナレーターや役者の口を狙うのが基本だが、マイクに息が吹き込まれないように注意しなければならない。バフッというノイズになってしまうし、特にコンデンサーマイクの場合にはマイク自体を壊してしまう原因にもなる。例えばナレーターが少し下を見ながら原稿を読むような時には写真のように上の位置から角度をつけて口を狙うと良い。
また、人によってはしゃべると唇や舌でペチャペチャ音をたててしまう癖があることもある。そういう時はあえて口を外して狙った方がいい結果を得られる事が多い。そしておでこを狙うと爽やかに、胸を狙うと豊かで落ち着いた声になる事が多い。
[ Writer : ふるいちやすし ]
[ DATE : 2010-02-27 ]
[ TAG : Vegas Pro Vegasで始めるMAのイロハ ]
関連のコラム一覧
|
|
[Vegasで始める次世代音楽映像のイロハ]Vol.01 新しい音楽映像制作をはじめよう!進む低音質化? 「音楽家と音楽業界はなんでCDにこだわるのか?意味が分からない。」そんな事を言うと「もうとっくにネット配信に移行してるよ」と突っ込まれそうだが、手軽に音楽を楽しむ" .... 続きを読む |
|
|
[Vegasで始めるBlu-rayのイロハ]Vol.03 高品質ブルーレイを作るために高品質ブルーレイができるまで さていよいよ高品質ブルーレイを作っていく。ブルーレイとはハイビジョン映像を長時間収録できる大容量ディスクというだけの物で要は書き込むデータ次第で良くも .... 続きを読む |
|
|
[東京Petit-Cine協会]Vol.11 やはり道具は使い様なのであるテクノロジーを見極める まぁ次から次へと出るわ出るわ!ここ数年テクノロジーの進歩には頭が痛くなる。パソコンを買い換えたりソフトをバージョンアップしたりする度に「もう完成!これ以上の .... 続きを読む |
|
|
[Vegasで始めるBlu-rayのイロハ]Vol.02 Vegasで高品位なBlu-ray DISCをつくる「まだまだDVDが主流だ」とか「ネットではSDの需要がある」とか大局的な事はどうでもいい。現にちまたにハイビジョンテレビが溢れてる。家庭はもちろん、店舗、イベン ト、ショールーム. .... 続きを読む |
|
|
[Vegasで始めるBlu-rayのイロハ]Vol.01 今そこにあるブルーレイどうしていますか?ハイビジョン画像の出口 手頃なハイビジョンカメラが出てもう5年程経つだろうか。今やコンパクトデジカメでもフルハイビジョン動画が撮れるようになり、そのテクノロジーは .... 続きを読む |
|
|
[Vegasで始めるMAのイロハ]Vol.03 最後の仕上げマスタリング!さていよいよ最後の詰めである。「整音」→「ミックスダウン」→「マスタリング」と進める。まとめると 整音:素材ごとの音を整える ミックスダウン:台詞(ナレーション)、効果音、音楽 .... 続きを読む |
- [Vegasで始めるMAのイロハ]Vol.02 音声編集のキモ!コンプレッサーを知る (2010-03-30)
- AVCHDの編集は現実的?非現実的?~あれから1年ノートPCでも可能なAVCHDネイティブ編集~ (2009-12-09)
- [Road to InterBEE2009]Vol.03 AVCHD、そしてフォーマット乱立の時代に考えること (2009-09-30)
- [Road to InterBEE2009]Vol.02 もうAVCHDの重さにおびえない!-編集ソフト編- (2009-08-30)
- [Road to InterBEE2009]Vol.01 今年のワークフロー選択-編集ソフト編- (2009-08-23)
最新のコラム一覧
- [raitank fountain]Vol.03 EOS C300インプレッション番外編〜"普段使い"のC300 (2012-02-03)
- [コロラド紀行]Vol.69 アメリカの郵便制度の台所事情 (2012-02-03)
- [DigitalGang!]Shoot.01 GoPro HD HERO2に思いを馳せる! (2012-02-01)
- [Do it]今求められるDIT(デジタル・イメージング・テクニシャン)とは? (2012-01-25)
- [岡英史のNewFinder]Vol.17 街のビデオ屋的3D制作2 ~JVCケンウッドのGY-HMZ1に注目! (2012-01-24)
関連のニュース記事
- Sony Creative Software、OpenCL GPUによる高速化に対応したノンリニア編集ソフト「Vegas Pro 11」を発売 (2011-10-20)
- [IBC2011][速報]Sony Creative Software、ノンリニア編集ソフト 「Vegas Pro 11」を発表 (2011-09-09)
- ソニー・クリエイティブ・ソフトウェア、11周年記念NABユーザーイベントを開催 (2011-03-18)
- ソニーBlu-ray 3Dサブタイトルアプリケーション、Vegas Proとの親和性アップでBlu-ray 3Dオーサリング機能を更に向上 (2010-12-24)
- Vegas Pro 10日本語版 10月下旬にリリース (2010-09-21)
- ミューズテクス、Matrox社製DVIスキャンコンバーター「Convert DVI」を発表 (2010-03-31)
- Sony Creative Software、新バージョンVegasProでContour Designデバイス機能に対応 (2009-05-20)
- 米CineForm、トムソン・グラスバレーInfinity対応のメディアインターメディエイト「I-J2Kスイート」を出荷開始 (2008-08-01)
WRITER PROFILE
ふるいちやすし
映像作家・音楽家・作曲家として数々のサウンドトラックやアーティストへの楽曲提供等も行い、自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。企業VPやCM等の制作と平行して、年に何本もの自主制作作品を制作している。
Studio :Loo-Ral Art
Mail : fuluichi-yas@loo-ral.com
ふるいちやすし のコラム一覧
Writer
|
編集部(99) PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートです。 |
|
稲田出(27) 映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチールカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。 |
|
石川幸宏(35) 映像専門雑誌DVJ編集長を経て、リアルイベントを中心とした「DVJ BUZZ TV」編成局長として活躍中。 |
|
小寺信良(23) 業界で噂の新製品を、AV WatchやITmediaのコラムでもおなじみの小寺信良氏がレポートする動画連載。 |
|
raitank(5) あまたの海外ソースを読み漁ってHDSLRを独学。海外から仕入れた情報を日本語で発信するグラフィックデザイナー/アートディレクター。 |
|
ふるいちやすし(44) 自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。 |
|
岡英史(19) バイクレース及びF3レース参戦など、映像とはかけ離れた経歴を持つ異色ビデオカメラマン |
|
手塚一佳(44) CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。 |
|
江夏由洋(13) 兄弟で株式会社マリモレコーズを設立し、ノンリニアにおける映像技術、映像制作を中心に、最新技術を取り入れたワークフローを提案している。 |
|
山本久之(26) 映像エンジニア。フリーランスで映像設備のシステムインテグレーションと、ノンリニア編集に携わる。 |
|
林永子(26) 2005年よりサロンイベント「スナック永子」を開催。通称「永子ママ」 |
|
鍋潤太郎(18) ロサンゼルスを拠点とするVFXジャーナリスト。 |
|
高野光太郎(4) 映像クリエイター。フリーランスにてミュージックビデオ、番組オープニングタイトル、CM、劇場映画、全てをデスクトップで制作。 |
|
安藤幸央(9) 無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPH ASIAやCESなど海外の注目イベントを紹介。 |
|
猪蔵(5) いつも腹ペコ。世の中の面白いことを常に探っている在野の雑誌編集者。 |
|
山下香欧(8) 米国ベンチャー企業のコンサルタントやフリーランスライターとして、業界出版雑誌に市場動向やイベントのレポートを投稿。 |
|
ヒマナイヌ(5) 頓知を駆使した創造企業 |
|
坪井昭久(5) 映像ディレクター。代表作はDNP(大日本印刷)コンセプト映像、よしもとディレクターズ100など。3D映像のノンリニア編集講師などを勤める。 |
|
萩原正喜(69) 米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。 |
|
岡田智博(7) クリエイティブクラスター代表。メディアアートと先端デザインを用いたコンテンツ開発を手がけるスーパー裏方。 |
|
江口靖二(5) デジタルサイネージコンソーシアム常務理事、慶應義塾大学DMC機構研究員などを兼務。 |
|
しらいあきひこ(2) カメラメーカー、ゲーム開発などの経験を持つ工学博士が最先端のVR技術を紹介。 |
|
今間俊博(5) 尚美学園大学 芸術情報学部 情報表現学科 教授。アナログ時代の事例を通じ、教育関連の最新動向を探る。 |
|
伊藤裕美(5) オフィスH(あっしゅ)代表。下北沢トリウッドでアニメーション特集上映を毎年主催している。 |
|
秋山謙一(17) PRONEWS記者。映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動中。 |
|
UserReport(10) 業界で話題の商品を実際に使ってみてどう感じたかを、各方面の様々な方々にレポートしていただきました。 |
|
System5 Labs(8) SYSTEM5スタッフが販売会社ならではの視点で執筆します。 |
