[東京Petit-Cine協会]Vol.12 作品作りの心意気を問う!

HOME  >  COLUMN  >  ふるいちやすし  >  [東京Petit-Cine協会]Vol.12 作品作りの心意気を問う!

Column

[東京Petit-Cine協会]Vol.12 作品作りの心意気を問う!

2010-08-10 掲載

[東京Petit-Cine協会]Vol.12 作品作りの心意気を問う!

マンパワーと時間の濃度

P1010217.JPG

前回機材面でのポイントをまとめてみたが、それを参考に徹底した節約をしてほしい。だがそれは貧乏臭い作品を作る事を目指しているわけではない。極端な言い方をすればメジャーにも負けないクオリティを目指している。そう言うからには節約した分、何かで補わなければいけない。それがマンパワーと時間だと考えている。じり貧の予算の中でなんとかメジャーと同じような段取りとスマートさで進める事を求めている人たちがいるが、それが良い結果に繋がることは稀だ。高価なカメラを借りて限られた時間に撮影を終わらせるより、安いカメラでも自分の物にして、じっくり使いこなせた方が良い絵が撮れるかもしれない。

1時間何万円もする編集スタジオでサクサク作業を進めるより小さなパソコンで試行錯誤を繰り返す方が新しい可能性を見つけられるチャンスが多いかもしれない。お弁当や控え室にまで気を配らなければいけないような役者とマネージャーを通して話をするより、駆け出しの役者と直接作品について語り合い、稽古を積んだ方が良くなる事だってある。その全てに共通して言えるキーワードがマンパワーと時間なのだ。プチシネ制作でその使い方を学んでおけば、いつか高級な機材をたっぷり使って、実力のある役者と作品を作れる時にとんでもなく素晴らしい活動ができそうな気がしないか?始めから立派な専門学校やドラマの現場に運良く入れた人たちに共通して欠落しているのはそういう感覚なんだと思う。

コミュニケーションの濃度を高める

貧乏暇なしとはよく言ったもんで、プチシネメンバーは何かと忙しい。仮に暇だったとしてもそれに任せてだらだらしていたんではいつまでたっても作品は出来上がらない。やはりある程度の緊張感は必要だと思う。いずれにしても時間は限られているものだし、その濃度を高める事が重要だ。そこで大切になるのはコミュニケーション。劇団を組んだり合宿でもできれば言う事無いのだが、特に人数がある程度必要な作品の場合、居酒屋に集めるのですら苦労する事が多いだろう。「そんなに暑苦しく話さなくても、さっと集まってサクッとできてしまうのがカッコいい。」と考える人も多いのだが、メジャーと同じやり方をしてメジャーに勝てる訳はないのだ。

pc12blog.jpg

たとえ自分のマンパワーに絶対の自信があったとしても、メンバーそれぞれのマンパワーを足し算ではなくかけ算にするためにはやはり濃密なコミュニケーションが必要なのだ。その為の一つのアイデアとして私は人数の多い作品を作る時にはスタッフと出演者だけの非公開ブログを作る事にしている。スケジュール管理や報告にも便利だし、例えば誰かと役作りに関するやりとりをするにしてもこのブログでやれば他のみんなも共有できるし、作品のテーマや全体像がだんだん肉付けされていくようで楽しくもある。監督としてその役の人物像やエピソードを思いついた時に書き足していくのにも便利だし、シーンや台本の変更も確実にみんなに伝わる。そんなこんなでみんなの作品に対する思い入れも強くなるのだ。正直言って最近の人はコミュニケーション能力が低下していると言わざるを得ない。最近の人でなくても、上下関係を過剰に意識して言いたい事を言えない人も多々いる。そんな中で濃密なコミュニケーションを計るにはいい手だと思う。

美意識の一本化

P1010203.JPG

美しい物の中から美しくない物を取り除くのは簡単だ。だが有能なメンバーが揃った時には、カメラマンはカメラマンとして、女優は女優として、それぞれしっかりとした美意識を持っている物だ。あまたの美しい物の中から一つに絞り込むにはいつもとても苦労する。また、同じ美に向かっていてもそれぞれの立場によってプロセスや表現が全く違う時もあるし、そういう時には監督が通訳のような形でそれぞれに伝えなければいけない。実はこれが監督のメインワークだと私個人は思っている。カメラマンにしても照明やメイクさん、役者達...だれ一人、自分が美しいと思えない事をしたいとは思わないはずだ。だからこそその作品の選んだ美意識をうまくプレゼンテーションしてそれぞれの美意識を肯定する形で一つの美意識を共有してもらうというのが理想なんだろう。その為には美意識の持ち寄りという足し算だけでは無理だ。かけ算にならなくては。その為に不可欠なのがコミュニケーションであり、これこそがプチシネの強みだと信じている。


[ Writer : ふるいちやすし ]
[ DATE : 2010-08-10 ]
[ TAG : 東京Petit-Cine協会 ]

関連のコラム一覧

[東京Petit-Cine協会]Vol.29 クリエイターズカメラのススメ~自分だけの画作り、コントラストとディテールを考える 3

[東京Petit-Cine協会]Vol.29 クリエイターズカメラのススメ~自分だけの画作り、コントラストとディテールを考える 3

いささか遅くなりましたが、新年おめでとうございます。今年もPRONEWS、東京Petit-Cine協会、そしてふるいちやすしをよろしくお願いいたします。私たちもまた、皆様の映像制作 .... 続きを読む

[東京Petit-Cine協会]Vol.28 クリエイターズカメラのススメ~自分だけの画作り、コントラストとディテールを考える 2

[東京Petit-Cine協会]Vol.28 クリエイターズカメラのススメ~自分だけの画作り、コントラストとディテールを考える 2

Inter BEEは新しい絵の具のお披露目会。とでも言えばもっとクリエイター達が集まってくれるのだろうか?少なくとも僕はそう思って毎年見ている。ただ会場でクリエイターに出会う事は稀 .... 続きを読む

[東京Petit-Cine協会]Vol.27 クリエイターズカメラのススメ~自分だけの画作り、コントラストとディテールを考える

[東京Petit-Cine協会]Vol.27 クリエイターズカメラのススメ~自分だけの画作り、コントラストとディテールを考える

「被写界深度のコントロール」再考 女優:横張芽衣(公式ブログ『ひつじがいっぴき』) 前回解説した「被写界深度のコントロール」という物は、レンズの選択、絞りとNDフィルターの使い方等 .... 続きを読む

[東京Petit-Cine協会]Vol.26 クリエイターズカメラのススメ~レンズ交換とフォーカシングで変わる画作り

[東京Petit-Cine協会]Vol.26 クリエイターズカメラのススメ~レンズ交換とフォーカシングで変わる画作り

カメラがどんどん新しくなってゆく。本当はクリエーターの要求に応じる形で技術が進歩していくのが望ましいとも思うのだが、最近は技術先行の感は否めず、クリエーターはそれに追いつくのがやっ .... 続きを読む

[東京Petit-Cine協会]Vol.25 クリエイターズカメラのススメ~FS100の懐の深さ

[東京Petit-Cine協会]Vol.25 クリエイターズカメラのススメ~FS100の懐の深さ

「所有」すべきクリエイターズカメラSONY NEX-FS100 前々回より「所有」すべきクリエイターズカメラとしてSONY NEX-FS100を紹介してきたが、日本国内よりも欧米を .... 続きを読む

[東京Petit-Cine協会]Vol.24 クリエイターズカメラのススメ~カメラの新基準とは

[東京Petit-Cine協会]Vol.24 クリエイターズカメラのススメ~カメラの新基準とは

クリエーターズカメラについてもう一度語ろう 映像クリエーターの目となり手足となるカメラという道具が、突き詰めればレンズとセンサーだという意見が最近よく聞かれる。これは今後、映像の非 .... 続きを読む

関連のニュース記事

WRITER PROFILE

ふるいちやすし 映像作家・音楽家・作曲家として数々のサウンドトラックやアーティストへの楽曲提供等も行い、自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。企業VPやCM等の制作と平行して、年に何本もの自主制作作品を制作している。
Studio :Loo-Ral Art
Mail : fuluichi-yas@loo-ral.com


Writer

編集部(99)
PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートです。
稲田出(27)
映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチールカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。
石川幸宏(35)
映像専門雑誌DVJ編集長を経て、リアルイベントを中心とした「DVJ BUZZ TV」編成局長として活躍中。
小寺信良(23)
業界で噂の新製品を、AV WatchやITmediaのコラムでもおなじみの小寺信良氏がレポートする動画連載。
raitank(5)
あまたの海外ソースを読み漁ってHDSLRを独学。海外から仕入れた情報を日本語で発信するグラフィックデザイナー/アートディレクター。
ふるいちやすし(44)
自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。
岡英史(19)
バイクレース及びF3レース参戦など、映像とはかけ離れた経歴を持つ異色ビデオカメラマン
手塚一佳(44)
CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。
江夏由洋(13)
兄弟で株式会社マリモレコーズを設立し、ノンリニアにおける映像技術、映像制作を中心に、最新技術を取り入れたワークフローを提案している。
山本久之(26)
映像エンジニア。フリーランスで映像設備のシステムインテグレーションと、ノンリニア編集に携わる。
林永子(26)
2005年よりサロンイベント「スナック永子」を開催。通称「永子ママ」
鍋潤太郎(18)
ロサンゼルスを拠点とするVFXジャーナリスト。
高野光太郎(4)
映像クリエイター。フリーランスにてミュージックビデオ、番組オープニングタイトル、CM、劇場映画、全てをデスクトップで制作。
安藤幸央(9)
無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPH ASIAやCESなど海外の注目イベントを紹介。
猪蔵(5)
いつも腹ペコ。世の中の面白いことを常に探っている在野の雑誌編集者。
山下香欧(8)
米国ベンチャー企業のコンサルタントやフリーランスライターとして、業界出版雑誌に市場動向やイベントのレポートを投稿。
ヒマナイヌ(5)
頓知を駆使した創造企業
坪井昭久(5)
映像ディレクター。代表作はDNP(大日本印刷)コンセプト映像、よしもとディレクターズ100など。3D映像のノンリニア編集講師などを勤める。
萩原正喜(69)
米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。
岡田智博(7)
クリエイティブクラスター代表。メディアアートと先端デザインを用いたコンテンツ開発を手がけるスーパー裏方。
江口靖二(5)
デジタルサイネージコンソーシアム常務理事、慶應義塾大学DMC機構研究員などを兼務。
しらいあきひこ(2)
カメラメーカー、ゲーム開発などの経験を持つ工学博士が最先端のVR技術を紹介。
今間俊博(5)
尚美学園大学 芸術情報学部 情報表現学科 教授。アナログ時代の事例を通じ、教育関連の最新動向を探る。
伊藤裕美(5)
オフィスH(あっしゅ)代表。下北沢トリウッドでアニメーション特集上映を毎年主催している。
秋山謙一(17)
PRONEWS記者。映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動中。
UserReport(10)
業界で話題の商品を実際に使ってみてどう感じたかを、各方面の様々な方々にレポートしていただきました。
System5 Labs(8)
SYSTEM5スタッフが販売会社ならではの視点で執筆します。

HOME  >  COLUMN  >  [東京Petit-Cine協会]Vol.12 作品作りの心意気を問う!