[DVJ BUZZ TV]Vol.05 困窮するテレビ制作と小規模HD機材の微妙な関係
2009-08-14 掲載
今回のDVJ BUZZ TV Vol.05は、去る8月7日に新宿のSPACE107という小劇場を会場にして行われた、キヤノンマーケティングジャパン主催のワークショップイベント「THE HD Digital Workflow 2009」とのコラボ開催。キヤノンの業務用HDVカメラと、AJA から新たに発売されるフィールドレコーダー「Ki Pro(キープロ)」のマッチングによる新しいワークフローの提案という内容で、DVJ BUZZ TVとしても初のメーカーとのコラボレーションイベントとなった。この模様から、現況のテレビ制作業界と、小型・小規模HD制作機材の微妙な関係について紹介したいと思う。
経済不況のあおりをまともに受けているテレビ制作業界
現在、数多くのテレビ制作会社がいま非常に厳しい状況にある。某在京キー局では、昨年4月に制作費が一律5%減、さらに同じ年の10月に5%減。そしてさらにこの4月にも番組別に更なる減額(10%減など)が強いられているという。世界的不況と円高によるメーカー不況から、TVCM収入の大幅な激減。これによりこれまで局専属的な制作会社が、次々と番組の外注制作の契約が解除されるなど、まさに下流に行けば行くほど、厳しい状況が生まれている。またこれまでテレビ番組制作をしていた会社や個人も、PVやイベント映像、ブライダルなどの仕事も平行せざるを得ないところも多いという。
|
|
| その場で撮影した素材を元にすぐさま合成、編集し上映された。 |
そんな状況において、更なる追い打ちはHD化、そして地デジ化である。HD化はここ数年でかなり浸透してきた感もあるが、この不況から「制作をHDからSDに戻しても良いから」ということを条件として提示しているものもあると聞く。現状、今後のHD化へ向けて移行して来た制作環境が、不況で逆流現象を起こしているというのだ。
また基本的にハイビジョン制作(HD)となる地デジ対応の番組制作は、制作者にとって頭の痛い問題かもしれない。どのプロダクションもある程度の投資が必要なのは覚悟の上だろうが、次々とめまぐるしく変わるデジタルフォーマットの変化に、いつ、どのタイミングで何を買えば良いのか?悩むプロダクションも多いだろう。
今回のワークショップでは、このようなテレビ制作業界に向けて、いますぐ手に入る低価格&扱いやすいHDソリューションの紹介として、即実行可能なHDプロダクションワークフローをテーマに、キヤノンのHDVカメラと、アップル社のProRes 422を使った新たなワークフローとして注目を集める新製品、AJA Ki Proの実機を使って、実際の中規模スタジオを模した会場で、グリーンバックの合成シーン撮影をデモンストレーションしてみた。
最小限の機材で、最高品質が実現出来る時代
今回の出演者は、第一部のワークショップでは、#1でも登場頂いた映像作家の貫井勇志氏に撮影と企画演出をお願いし、データ取り込み以降のデジタルワークフロー実演解説に映像ディレクターの高野光太郎氏、会場の照明関係の演出に神谷信人氏を迎えて、具体的なグリーンバック合成撮影の実演を、また第二部ではパネルディスカッションを行い、TV制作ディレクターの熊薮智氏と、テレビ業界に20年以上携わられて来た佐々木茂晴プロデューサーをパネラーにお迎えし、前述の3名にゲスト2名を加え、様々な論議が交わされた。
|
|
| 世界でも最速実動するKi Proでの収録を行う本Webでもおなじみ高野氏 |
紹介したデジタルワークフローの流れは、HDVカメラであるキヤノンのXL H1S/XH G1Sなど、HD-SDI出力を有しているカメラから、HD-SDI経由でKiProへ繋ぎ、ProRes 422コーデックで収録。HDDに収録されたデータをそのままアップルのMacProへ繋いで即Final Cut Pro(FCP)で編集。その際に合成のシーンは、FCPのXMLのデータを直接Adobe Premiere Pro CS4に入れて、Adobe After Effects CS4で合成という流れだ。
今回のワークショップスタイルは、日本では見られないスタイルを採用。実際に殺陣シーンを役者に演じてもらい、このシーンをグリーンバックでキーを抜くという作業を実演して頂いた。1カットのシーンのみだが、実際の撮影スタジオに見学に行った感覚を持って頂くための演出を施した。
注目すべきは、この一連の作業がポスプロを介在せずに実現出来る環境になったこと。そしてHD制作機材が、約300万円で手に入る時代になったことだ。またHD化にむけて多くの新たなノウハウは必要だが、機材的にも成熟し、また機材がよりコンパクトになったことが、制作者のクリエイティブが損なわれる事無く、そのアイディアの差別化もしやすいものに出来ると感じた。
実際のキー局がらみのドラマ制作では、すでにHD機材を持っており、さほどHD化への制作的ハードルは感じられないのが実状かもしれない。しかし今回のワークフロー紹介で、HD化への道のりは困難ではないことが、証明されたのでないだろうか?
もちろん、今回出演頂いたデモンストレーターは、皆テクノロジーにも精通し、それを利用するクリエイティブなアイディアを豊富に持っている方々なので、誰もが今回行ったワークフローをすぐ実行するのは少々難しいのかもしれない。しかし時は"案ずるより慣れろ"という時期に来ているのも確かだ。HD制作が身近で、とっつきやすいものになるためにはまだ少々時間を要する感もあるが、こうしたワークショップを通じて、少しでも自身の制作領域を広めて頂ければ幸いだ。
最後に、このような大規模なイベントを成功に導いてくれた、全ての協力スタッフに感謝の意を表したい。次回DVJ BUZZ TVは装いも新たに、10月以降にまた新たな内容を持って再開するので、期待して欲しい!
[ Writer : 石川幸宏 ]
[ DATE : 2009-08-14 ]
[ TAG : AJA Canon DVJ BUZZ TV Ki Pro ]
関連のコラム一覧
|
|
[Canon EXPO Tokyo 2010]1.2億画素CMOSセンサーが魅せる未来のカタチ東京港区のグランドプリンスホテル新高輪において、キヤノンが5年ごとに開催しているCanon EXPO Tokyo 2010が11月10日から12日の3日間開催された。会場はホテル内 .... 続きを読む |
|
|
[Point of View]Vol.30 全編Ki Proで収録した映画『相棒-劇場版II-』が完成聞き手:石川幸宏 Ki Proが映画『相棒-劇場版Ⅱ-』で採用された理由とは? (C)2010「相棒-劇場版Ⅱ-」パートナーズ テレビ朝日系列の人気TVドラマシリーズ『相棒』の制 .... 続きを読む |
|
|
[NAC Open House in Aoyama]Vol.03 AJA Pacific Portals Eric氏と ARRI Franz 氏 今後の更なる協調関係を確認去る5月27、28日、東京・港区のナックイメージテクノロジー本社において「ナックOpen House in Aoyama 2010」が開催されたのは、すでにニュースとして取り上げ .... 続きを読む |
|
|
[キヤノン プロフェッショナルムービー体感会2010]デジタル一眼、そしてXF300/XF305盛り上がるキヤノン製品去る6月3、4日の両日、東京都港区港南のキヤノンSタワーにおいてキヤノン プロフェッショナルムービー体感会2010が開催された。このイベントは、6月下旬に発売となるビデオカメラXF .... 続きを読む |
|
|
[ファイルベース収録カメラ最新案内]特別編 キヤノンXF305によるクロマキー合成トライアル前回のキヤノンXF305によるレビューを行いたい。今回は、クロマキー合成だ。 ビデオ画像を合成する方法としては色をキーにしたクロマキーと輝度をキーにしたルミナンスキーがあるが、いず .... 続きを読む |
|
|
[石川幸宏のコラムーチョ]Vol.01 JVCが送る2D→3D変換による3D映像制作の可能性2010年に入った映像業界は、どこを切っても"3D"という言葉が飛び出してくる。"3D"を代名詞とした映画『アバター』の興行的成功、『アリス・イン・ワンダーランド』の全米での高い評 .... 続きを読む |
- [Point of View]Vol.24 キヤノンが放つファイルベースカメラXF300/XF305とは? (2010-04-08)
- [DVJ BUZZ TV]Vol.11 3Dブームは、本物なのか?今一度考えてみる! (2010-02-12)
- [DVJ BUZZ TV]Vol.10 様々な分野に通用するハリウッドの脚本術とは? (2010-01-15)
- [DVJ BUZZ TV]Vol.08 InterBEEと2009年を振り返る (2009-12-11)
- [Point of View]Vol.23 AJA Video Systemsプロダクトチームが語るKi Proのツボ (2009-12-08)
- [DVJ BUZZ TV]Vol.08 映像制作界の現況とInterBEE2009 (2009-11-10)
最新のコラム一覧
- [raitank fountain]Vol.03 EOS C300インプレッション番外編〜"普段使い"のC300 (2012-02-03)
- [コロラド紀行]Vol.69 アメリカの郵便制度の台所事情 (2012-02-03)
- [DigitalGang!]Shoot.01 GoPro HD HERO2に思いを馳せる! (2012-02-01)
- [Do it]今求められるDIT(デジタル・イメージング・テクニシャン)とは? (2012-01-25)
- [岡英史のNewFinder]Vol.17 街のビデオ屋的3D制作2 ~JVCケンウッドのGY-HMZ1に注目! (2012-01-24)
関連のニュース記事
- AJA Video Systems社、Thunderbolt対応ビデオ入出力デバイス「Io XT」を発売 (2012-01-26)
- AJA、KONA LHe Plusに対応するWin/Mac用ソフトウェア最新版を公開 (2011-11-09)
- AJAの「KONAシリーズ」「Io XT」「Io Express」が、Avid Media Composer 6をサポート (2011-11-07)
- キヤノン、"CINEMA EOS SYSTEM"を発表。4K動画記録対応DSLRも開発中 (2011-11-04)
- キヤノン CINEMA EOS SYSTEM発表会 USTREAM生中継 (2011-11-04)
- いよいよ来週11月3日、キヤノンの"歴史的発表" (2011-10-28)
- キヤノン、デジタル一眼レフカメラ最上位モデル「EOS-1D X」を発売。イントラフレーム記録のフルHD動画撮影に対応 (2011-10-19)
- キヤノン、世界最大級の超高感度CMOSセンサーを用いた天体観測についての記者説明会を開催 (2011-09-22)
- キヤノン、35mmフルサイズCMOSセンサーの約40倍の大きさを実現した超高感度CMOSセンサーを応用し、10等級相当の流星の広視野動画撮像に成功 (2011-09-16)
- [IBC2011]AJA、ビデオキャプチャカード「KONA LHe Plus」を発表 (2011-09-12)
WRITER PROFILE
石川幸宏
映像専門雑誌DVJ編集長を経て、2009年4月よりリアルイベントを中心とした「DVJ BUZZ TV」編成局長として活躍中。
石川幸宏 のコラム一覧
Writer
|
編集部(99) PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートです。 |
|
稲田出(27) 映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチールカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。 |
|
石川幸宏(35) 映像専門雑誌DVJ編集長を経て、リアルイベントを中心とした「DVJ BUZZ TV」編成局長として活躍中。 |
|
小寺信良(23) 業界で噂の新製品を、AV WatchやITmediaのコラムでもおなじみの小寺信良氏がレポートする動画連載。 |
|
raitank(5) あまたの海外ソースを読み漁ってHDSLRを独学。海外から仕入れた情報を日本語で発信するグラフィックデザイナー/アートディレクター。 |
|
ふるいちやすし(44) 自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。 |
|
岡英史(19) バイクレース及びF3レース参戦など、映像とはかけ離れた経歴を持つ異色ビデオカメラマン |
|
手塚一佳(44) CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。 |
|
江夏由洋(13) 兄弟で株式会社マリモレコーズを設立し、ノンリニアにおける映像技術、映像制作を中心に、最新技術を取り入れたワークフローを提案している。 |
|
山本久之(26) 映像エンジニア。フリーランスで映像設備のシステムインテグレーションと、ノンリニア編集に携わる。 |
|
林永子(26) 2005年よりサロンイベント「スナック永子」を開催。通称「永子ママ」 |
|
鍋潤太郎(18) ロサンゼルスを拠点とするVFXジャーナリスト。 |
|
高野光太郎(4) 映像クリエイター。フリーランスにてミュージックビデオ、番組オープニングタイトル、CM、劇場映画、全てをデスクトップで制作。 |
|
安藤幸央(9) 無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPH ASIAやCESなど海外の注目イベントを紹介。 |
|
猪蔵(5) いつも腹ペコ。世の中の面白いことを常に探っている在野の雑誌編集者。 |
|
山下香欧(8) 米国ベンチャー企業のコンサルタントやフリーランスライターとして、業界出版雑誌に市場動向やイベントのレポートを投稿。 |
|
ヒマナイヌ(5) 頓知を駆使した創造企業 |
|
坪井昭久(5) 映像ディレクター。代表作はDNP(大日本印刷)コンセプト映像、よしもとディレクターズ100など。3D映像のノンリニア編集講師などを勤める。 |
|
萩原正喜(69) 米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。 |
|
岡田智博(7) クリエイティブクラスター代表。メディアアートと先端デザインを用いたコンテンツ開発を手がけるスーパー裏方。 |
|
江口靖二(5) デジタルサイネージコンソーシアム常務理事、慶應義塾大学DMC機構研究員などを兼務。 |
|
しらいあきひこ(2) カメラメーカー、ゲーム開発などの経験を持つ工学博士が最先端のVR技術を紹介。 |
|
今間俊博(5) 尚美学園大学 芸術情報学部 情報表現学科 教授。アナログ時代の事例を通じ、教育関連の最新動向を探る。 |
|
伊藤裕美(5) オフィスH(あっしゅ)代表。下北沢トリウッドでアニメーション特集上映を毎年主催している。 |
|
秋山謙一(17) PRONEWS記者。映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動中。 |
|
UserReport(10) 業界で話題の商品を実際に使ってみてどう感じたかを、各方面の様々な方々にレポートしていただきました。 |
|
System5 Labs(8) SYSTEM5スタッフが販売会社ならではの視点で執筆します。 |
