[DVJ BUZZ TV]Vol.06 デジタル一眼ムービー市場と変貌するポストプロダクション
2009-09-18 掲載
DVJ BUZZ TVは、これまでのイベントの開催スタイルから趣向を変えて、プロの制作現場を覗くというテーマで、ポストプロダクション見学会と称して9月15日に第6回目を開催した。見る機会の少ない、大手ポストプロダクションの施設内を見学してみようという試みだ。今回ご協力頂いたのは東京・目黒にある『イメージスタジオ109』。CM関係の制作に多く使われており、スチル広告写真撮影にもよく使用される撮影スタジオも有しているのが特徴だ。今回のイベント開催の背景として、最近CM制作等で大きな話題のデジタル一眼カメラによるムービー撮影の本格導入がある。
キヤノンEOS 5D markⅡがもたらす新しいワークフローの波
業界内の注目を集めているデジタル一眼カメラでの動画撮影。各カメラメーカーからも動画対応の新製品が続々と発表されているが、このブームの火付け役となった、キヤノンEOS 5D markⅡに他ならない。35mmフルサイズCMOSセンサーによる高画質と強力なバックフォーカス、つまり被写界深度(dof)が美しく得られることで、この30万円台というクラスのカメラ(ビデオを含む)では得られなかった品位の高い画質が得られることから、プロ市場でもその導入が昨年末ごろから一気に高まっている。
また、これまで35mmフィルムを使用していたCMカメラマンからも高い評価を得ており、テレシネすれば35mmフィルムとほぼ同等の画質が得られるといった検証結果も多く、ここに来てデジタル一眼ムービーでの映像制作の流れは一気に加速している状況だ。そんな中で、その制作フローを推進する意欲的なポストプロダクションが、イメージスタジオ109だ。デジタル一眼ムービーの本格的な制作フローを構築し、アップルFinal Cut Proを使用した、オフライン編集室の貸出しなども含めて、これまでになかったユーザー層の獲得を目指している。
市場変革に際して新たな進路を探るポストプロダクション
今回の来場者の顔ぶれは実に興味深い。個人の映像クリエイターやカメラマンはもとより、スチル系のカメラマン、Web制作に携わる方、レタッチなどスチル画像系のグラフィッカーと呼ばれる方、デザイナー、そしてメーカー系の方など、これまでポストプロダクションとは縁の遠かった方々が多くご来場されたことも、新たな市場に向けて、ポスプロの新たな方向性を予感させるものだ。
現在不況のあおりを受けて、ポストプロダクション自身も、現在非常に厳しい状況に立たされている。TVCMの激減により実際の映像制作本数は明らかに少なくなっており、さらに制作費削減は必須のため、ポスト作業に回る予算は当然ながら縮小されている。
REDなども新たな制作フローとして、特に長尺もの(映画、ドラマ)などでは使用頻度が上がっているが、ワークフロー全体を見渡すと、非常に使いづらい面もまだまだ多いのは否めない。また5D markⅡはキヤノンという日本を代表するカメラメーカーの製品であることも、市場で信頼性の上でも浸透しやすいのは確かだ。
低予算ワークフローに対応するポストプロダクション・セカンドライン
改めて痛感したのは、デスクトップビデオを実践している個人やSOHOなどのクリエイター環境とは、一見大きく異なって見えるポストプロダクションだが、実際に中を覗いてみて、さほど技術的に大きな差はないということだ。ただ周辺機材の充実やクライアント向けのプレビュー施設・機材が充実しており、さらに制作に集中出来る環境(これが一番重要か!)があることなどは、別の意味で『プロっぽい』施設が充実しているといえるだろう。これまでのポストプロダクションとしての存在価値であり、いわば威厳や安心といったものにつながっていたように思う。
ではすべて個人所有のデスクトップビデオに移ってしまうのか?いや、こうした予算低減化のなかでポストプロダクションの出来る事はまだまだあると思う。現にこのデジタル一眼ムービーを基軸とした、新たなワークフローをいち早く取り入れたイメージスタジオ109もスチル撮影のノウハウを推進して行くことをこの夏から発表している。この新たなワークフローラインの提案こそが、今後のポストプロダクションのあり方の大きなヒントであることは言うまでもない。
例えて言うなら、高級ファッションブランドのセカンドラインのようなもので、メインストリームの製品は良い物だが、高額で万人がなかなか手を出しにくい。そこで誰でも気軽に購入できる、セカンドラインを作って、汎用普及させる、もしくは実際の稼ぎの主軸に置く。まさしく今後のポストプロダクションもセカンドラインの充実が求められているのではないだろうか?
一般市場経済の中では、いままさに『ボリュームゾーン』という言葉が注目されているが、映像制作もまさに今後の中心は、この業界における『ボリュームゾーン』をどう狙っていくかだと思われる。
| 特別展示された5DmarkⅡ用の撮影周辺のサポート機材 | ジャイロシステムは、ヘリや車等の移動撮影に便利だ(アナミ海外) |
| Zacuto+クロジールマットボックス+業務用モニターの組み合わせ(銀一) | redrockmicro社のアダプターはすでにスタンダード(ライトアップ) |
次回DVJ BUZZ TVは10月初旬に開催予定。
http://www.dvjbuzz.tv(近日正式オープン)
[ Writer : 石川幸宏 ]
[ DATE : 2009-09-18 ]
[ TAG : Canon DVJ BUZZ TV EOS 5D Mark II RED DIGITAL CINEMA ]
関連のコラム一覧
|
|
[EPIC in Japan]西華産業が開催RED Digital Cinemaの未来!EPIC降臨リリース直前のEPIC実機を日本初公開 RED Digital Cinema社(RED社)のアジア環太平洋地域の総代理店を務める西華産業は11月18日、千葉・幕張のアパホテル&リゾ .... 続きを読む |
|
|
[Canon EXPO Tokyo 2010]1.2億画素CMOSセンサーが魅せる未来のカタチ東京港区のグランドプリンスホテル新高輪において、キヤノンが5年ごとに開催しているCanon EXPO Tokyo 2010が11月10日から12日の3日間開催された。会場はホテル内 .... 続きを読む |
|
|
[キヤノン プロフェッショナルムービー体感会2010]デジタル一眼、そしてXF300/XF305盛り上がるキヤノン製品去る6月3、4日の両日、東京都港区港南のキヤノンSタワーにおいてキヤノン プロフェッショナルムービー体感会2010が開催された。このイベントは、6月下旬に発売となるビデオカメラXF .... 続きを読む |
|
|
[ファイルベース収録カメラ最新案内]特別編 キヤノンXF305によるクロマキー合成トライアル前回のキヤノンXF305によるレビューを行いたい。今回は、クロマキー合成だ。 ビデオ画像を合成する方法としては色をキーにしたクロマキーと輝度をキーにしたルミナンスキーがあるが、いず .... 続きを読む |
|
|
[石川幸宏のコラムーチョ]Vol.01 JVCが送る2D→3D変換による3D映像制作の可能性2010年に入った映像業界は、どこを切っても"3D"という言葉が飛び出してくる。"3D"を代名詞とした映画『アバター』の興行的成功、『アリス・イン・ワンダーランド』の全米での高い評 .... 続きを読む |
|
|
[Point of View]Vol.24 キヤノンが放つファイルベースカメラXF300/XF305とは?新開発の4.1-73.1mm/F1.6の18倍ズームレンズを搭載 昨年のInterBEEでモックアップを出展して注目を集めたファイルベースビデオカメラが正式発表となった。Inte .... 続きを読む |
- [What's UP HD!]Vol.04 AfterEffects使いのREDワークフローとは? (2010-02-26)
- [DVJ BUZZ TV]Vol.11 3Dブームは、本物なのか?今一度考えてみる! (2010-02-12)
- [DVJ BUZZ TV]Vol.10 様々な分野に通用するハリウッドの脚本術とは? (2010-01-15)
- [RED ユーザーフェスティバルレポート]今そこにあるREDソリューション (2009-12-27)
- [DVJ BUZZ TV]Vol.08 InterBEEと2009年を振り返る (2009-12-11)
- [DVJ BUZZ TV]Vol.08 映像制作界の現況とInterBEE2009 (2009-11-10)
最新のコラム一覧
- [raitank fountain]Vol.03 EOS C300インプレッション番外編〜"普段使い"のC300 (2012-02-03)
- [コロラド紀行]Vol.69 アメリカの郵便制度の台所事情 (2012-02-03)
- [DigitalGang!]Shoot.01 GoPro HD HERO2に思いを馳せる! (2012-02-01)
- [Do it]今求められるDIT(デジタル・イメージング・テクニシャン)とは? (2012-01-25)
- [岡英史のNewFinder]Vol.17 街のビデオ屋的3D制作2 ~JVCケンウッドのGY-HMZ1に注目! (2012-01-24)
関連のニュース記事
- 西華産業、RED Digital Cinema社のプライベートセミナーを開催 (2011-11-09)
- キヤノン、"CINEMA EOS SYSTEM"を発表。4K動画記録対応DSLRも開発中 (2011-11-04)
- キヤノン CINEMA EOS SYSTEM発表会 USTREAM生中継 (2011-11-04)
- いよいよ来週11月3日、キヤノンの"歴史的発表" (2011-10-28)
- キヤノン、デジタル一眼レフカメラ最上位モデル「EOS-1D X」を発売。イントラフレーム記録のフルHD動画撮影に対応 (2011-10-19)
- キヤノン、世界最大級の超高感度CMOSセンサーを用いた天体観測についての記者説明会を開催 (2011-09-22)
- キヤノン、35mmフルサイズCMOSセンサーの約40倍の大きさを実現した超高感度CMOSセンサーを応用し、10等級相当の流星の広視野動画撮像に成功 (2011-09-16)
- AJAのKi Pro MiniがRED EPICのProResソリューション推奨製品に認定 (2011-04-15)
- 西華産業、SEIKAプライベートセミナーと常設展示の詳細を発表 (2010-11-16)
- 新センサー搭載RED ONEカメラで撮影の映画作品をフィルムレスに近いDI環境で制作 (2010-10-15)
WRITER PROFILE
石川幸宏
映像専門雑誌DVJ編集長を経て、2009年4月よりリアルイベントを中心とした「DVJ BUZZ TV」編成局長として活躍中。
石川幸宏 のコラム一覧
Writer
|
編集部(99) PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートです。 |
|
稲田出(27) 映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチールカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。 |
|
石川幸宏(35) 映像専門雑誌DVJ編集長を経て、リアルイベントを中心とした「DVJ BUZZ TV」編成局長として活躍中。 |
|
小寺信良(23) 業界で噂の新製品を、AV WatchやITmediaのコラムでもおなじみの小寺信良氏がレポートする動画連載。 |
|
raitank(5) あまたの海外ソースを読み漁ってHDSLRを独学。海外から仕入れた情報を日本語で発信するグラフィックデザイナー/アートディレクター。 |
|
ふるいちやすし(44) 自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。 |
|
岡英史(19) バイクレース及びF3レース参戦など、映像とはかけ離れた経歴を持つ異色ビデオカメラマン |
|
手塚一佳(44) CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。 |
|
江夏由洋(13) 兄弟で株式会社マリモレコーズを設立し、ノンリニアにおける映像技術、映像制作を中心に、最新技術を取り入れたワークフローを提案している。 |
|
山本久之(26) 映像エンジニア。フリーランスで映像設備のシステムインテグレーションと、ノンリニア編集に携わる。 |
|
林永子(26) 2005年よりサロンイベント「スナック永子」を開催。通称「永子ママ」 |
|
鍋潤太郎(18) ロサンゼルスを拠点とするVFXジャーナリスト。 |
|
高野光太郎(4) 映像クリエイター。フリーランスにてミュージックビデオ、番組オープニングタイトル、CM、劇場映画、全てをデスクトップで制作。 |
|
安藤幸央(9) 無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPH ASIAやCESなど海外の注目イベントを紹介。 |
|
猪蔵(5) いつも腹ペコ。世の中の面白いことを常に探っている在野の雑誌編集者。 |
|
山下香欧(8) 米国ベンチャー企業のコンサルタントやフリーランスライターとして、業界出版雑誌に市場動向やイベントのレポートを投稿。 |
|
ヒマナイヌ(5) 頓知を駆使した創造企業 |
|
坪井昭久(5) 映像ディレクター。代表作はDNP(大日本印刷)コンセプト映像、よしもとディレクターズ100など。3D映像のノンリニア編集講師などを勤める。 |
|
萩原正喜(69) 米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。 |
|
岡田智博(7) クリエイティブクラスター代表。メディアアートと先端デザインを用いたコンテンツ開発を手がけるスーパー裏方。 |
|
江口靖二(5) デジタルサイネージコンソーシアム常務理事、慶應義塾大学DMC機構研究員などを兼務。 |
|
しらいあきひこ(2) カメラメーカー、ゲーム開発などの経験を持つ工学博士が最先端のVR技術を紹介。 |
|
今間俊博(5) 尚美学園大学 芸術情報学部 情報表現学科 教授。アナログ時代の事例を通じ、教育関連の最新動向を探る。 |
|
伊藤裕美(5) オフィスH(あっしゅ)代表。下北沢トリウッドでアニメーション特集上映を毎年主催している。 |
|
秋山謙一(17) PRONEWS記者。映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動中。 |
|
UserReport(10) 業界で話題の商品を実際に使ってみてどう感じたかを、各方面の様々な方々にレポートしていただきました。 |
|
System5 Labs(8) SYSTEM5スタッフが販売会社ならではの視点で執筆します。 |
