[DVJ BUZZ TV]Vol.10 様々な分野に通用するハリウッドの脚本術とは?
2010-01-15 掲載
2010年、DVJ BUZZ TVのテーマは「人間力」
DVJ BUZZ TVは、映像制作者の実際の糧になるような情報や知識、そして制作者たちの作品や発信にかける熱いマインドを伝えていきたいと思っている。そこで今年最初は、映画やドラマの話の肝となる、脚本作りのテクニックにフォーカスしてみた。
今回のゲストスピーカーは「ハリウッドストーリーテリング」(愛育社)の著者でもあり、ハリウッドで活躍されてきた脚本家であり、脚本分析家の田中靖彦氏をお迎えした。現在、田中氏はハリウッドをはじめ、日本、マレーシアやシンガポールなど日本以外のアジア圏でも広く活躍の幅を広げている。また映画だけでなくアニメーションやWeb映像などへのストーリーテリングの論法にも幅を拡げている。
ちなみに脚本分析家という職業はまだ日本にはないようだが、ハリウッドでは脚本家によって書かれたスクリプト(脚本)を実際に基本のフォーマットに合っているか?など様々な評価基準に合わせて分析する"脚本分析家"という職種が存在する。彼らによって脚本はさらにブラッシュアップされ、世界に通用する作品=世界に売れる作品として映画化されているのだ。また毎年600本近い作品がハリウッドで制作されているうち、700億円という巨額な予算が脚本執筆と、その脚本の分析、改稿に費やされている。これは映画「タイタニック」が3、4本作れる額であり、いかにハリウッドが作品の「ストーリーテリング」という部分を重要視しているかを物語っているだろう。
いまだ日本にはない脚本論教育
かなり僭越な意見ではあるが、私の十数年の映像ジャーナリストの経験から、多くの脚本に関わる人に意見を聞いたのだが、そもそも日本の映像教育の現場において脚本を論理立てて教えているところはほとんどないようだ。シナリオ教室や脚本講座と言われる、多くの習得機関では、例えば、昔たまたま(?)ヒットを飛ばした脚本家が先生となり、受講内容はその成功体験に基づいたものだったりする。これはマクロな視点で考えると、ある1人の成功者体験談でしかなく、1つのユーザー事例にしか過ぎない。私自身も、これまでのハリウッドにおいて、現役で活躍する映画製作者への取材や制作現場の取材を通じて、そもそも脚本とはそういうものではないと感じている。
やはり1970年代から脚本論という学問が、ちゃんと存在しているハリウッドでは、その脚本の善し悪しを判断する基準がちゃんとある、ということが大きな違いだ。ただし誤解をしてほしくないのだが、私自身は決してハリウッド信奉者というわけでもなく、また日本作品の脚本すべてが酷いものだ、と言っているわけではない、のだ。
ただ、日本の映像制作の現場には、それを正しく判断出来る評価基準がないことで、その辺が曖昧になったまま世の中に出ている作品が多いことは間違いなく、この理由だけではないが、世界に通用する作品が生まれないのもその理由なのかもしれない。日本の作品は、海外で賞を獲っても、海外で興行的成功を収めた作品は少ないのは明らかだ。
映画以外にも通用する"技術"
脚本だけではなく、多くのプロと呼ばれる映像制作者にとって、プロである=作品が売れることが大命題であり、そこを判断出来る能力が最も重要だと考えられる。しかし日本の映像の現場には、残念ながらそういう意識を持ってやっている人が少ないのは事実かもしれない。TVドラマの視聴率が悪くてもクビになる放送局の社員はいないし、ハリウッドのようにプレビュー試写(封切り公開前のプロデューサー主催の一般試写会)で一般人の評価を仰ぎ、もしそこで評点が悪ければ、編集スタッフは一斉解雇して編集し直し、というような厳しい現実もない。映画が公開されて、テレビCMの「大ヒット上映中!」の文字に踊らされ期待してシネコンに足を運んでみると、人はガラガラで作品も酷くてガッカリさせられたりする事も少なくない。
さらに日本では、そうした教育を受けていない年功序列型の出世プロデューサーやディレクターも多いので、決済者が脚本を読み解く力(=この場合は作品力を見極める、つまり面白くてなおかつ売れる力)が無ければ当然、作品の質は低くなるというものだ。
もちろん場数や現場感というのも大事だが、往々にしてグローバル市場を見極めるためには、こうした学問的な裏付けは重要だ。評価基準から離れたところで作品を作っていては、おそらく世界の市場からは見放されるだろう。いま時代は中国、インドを中心としたアジア圏に移ってきている。映像市場もこれからは、彼らの作品の台頭は明らかだ。日本発のコンテンツが世界に通用しないと、高々1億ちょっとの市場を相手にしているだけでは、映像クリエイターの生きる道はかなり狭いものとなる。さらにこの脚本論は、映画やドラマ製作だけに通用するものではなく、過去の田中氏の受講生として今回ゲスト出演頂いた、コピーライターの樫原さんやタレント/俳優さんである阿部さんのように、様々なジャンルにも活かせる技術でもあるのだ。田中氏は年3回の「ハリウッドストーリーテリング脚本講習」を国内で開講する予定なので、興味のある方はぜひ受講してみるのも一考だろう。
2010年度第一回講習は、1月29,30,31日、2月5,6,7日の6日間
詳細、問い合わせ先:(株)パシフィックボイス
http://www.pacvoice.com/hs/
DVJ BUZZ TVの次回開催は、3月上旬に予定。
http://www.dvjbuzz.tv
[ Writer : 石川幸宏 ]
[ DATE : 2010-01-15 ]
[ TAG : DVJ BUZZ TV ]
関連のコラム一覧
|
|
[石川幸宏のコラムーチョ]Vol.01 JVCが送る2D→3D変換による3D映像制作の可能性2010年に入った映像業界は、どこを切っても"3D"という言葉が飛び出してくる。"3D"を代名詞とした映画『アバター』の興行的成功、『アリス・イン・ワンダーランド』の全米での高い評 .... 続きを読む |
|
|
[DVJ BUZZ TV]Vol.11 3Dブームは、本物なのか?今一度考えてみる!民生3D対応TV熱が沸騰!新映像市場を席巻する 今年1月の米ラスベガスのCESまでの半年間、各展示会に共通の話題といえば、やはり3Dステレオスコピックの世界的潮流だ。そして今までと .... 続きを読む |
|
|
[DVJ BUZZ TV]Vol.08 InterBEEと2009年を振り返る12月1日(火)にアップルストア銀座にて開催した、DVJ BUZZ TV #8 「After InterBEE2009 /専門記者たちが見た映像制作ツールの最先端」では、今年の国 .... 続きを読む |
|
|
[DVJ BUZZ TV]Vol.08 映像制作界の現況とInterBEE200911月は、映像制作界おいて特別な月になる。そうInterBEEである。 しかし、現在、映像制作を取り巻く環境はさらに困窮を極めている。経済不況の影響から、TV局を始め各方面で制作費 .... 続きを読む |
|
|
[DVJ BUZZ TV]Vol.07 ハリウッドの日本人向け映画学校ISMPを取材東京・赤坂の映像工房StudioDUのセミナールームで開催したDVJ BUZZ TV第7回目では、9月後半に私が視察してきた、米LAで開催されたDigital Video exp .... 続きを読む |
- [DVJ BUZZ TV]Vol.06 デジタル一眼ムービー市場と変貌するポストプロダクション (2009-09-18)
- [DVJ BUZZ TV]Vol.05 困窮するテレビ制作と小規模HD機材の微妙な関係 (2009-08-14)
- [DVJ BUZZ TV]Vol.04 日本のMUSIC VIDEO界からのコアなメッセージ (2009-07-10)
- [DVJ BUZZ TV]Vol.03 REDファン急増?高まるRED人気とその可能性 (2009-06-09)
- [DVJ BUZZ TV]Vol.02 ハリウッドスタイルと今年の映像トレンドを! (2009-05-12)
- [DVJ BUZZ TV]Vol.01 映像を創るすべての人たちへ (2009-04-10)
最新のコラム一覧
- [raitank fountain]Vol.03 EOS C300インプレッション番外編〜"普段使い"のC300 (2012-02-03)
- [コロラド紀行]Vol.69 アメリカの郵便制度の台所事情 (2012-02-03)
- [DigitalGang!]Shoot.01 GoPro HD HERO2に思いを馳せる! (2012-02-01)
- [Do it]今求められるDIT(デジタル・イメージング・テクニシャン)とは? (2012-01-25)
- [岡英史のNewFinder]Vol.17 街のビデオ屋的3D制作2 ~JVCケンウッドのGY-HMZ1に注目! (2012-01-24)
関連のニュース記事
- DVJ BUZZ TV #4アップルストア銀座で明日開催! (2009-07-06)
WRITER PROFILE
石川幸宏
映像専門雑誌DVJ編集長を経て、2009年4月よりリアルイベントを中心とした「DVJ BUZZ TV」編成局長として活躍中。
石川幸宏 のコラム一覧
Writer
|
編集部(99) PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートです。 |
|
稲田出(27) 映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチールカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。 |
|
石川幸宏(35) 映像専門雑誌DVJ編集長を経て、リアルイベントを中心とした「DVJ BUZZ TV」編成局長として活躍中。 |
|
小寺信良(23) 業界で噂の新製品を、AV WatchやITmediaのコラムでもおなじみの小寺信良氏がレポートする動画連載。 |
|
raitank(5) あまたの海外ソースを読み漁ってHDSLRを独学。海外から仕入れた情報を日本語で発信するグラフィックデザイナー/アートディレクター。 |
|
ふるいちやすし(44) 自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。 |
|
岡英史(19) バイクレース及びF3レース参戦など、映像とはかけ離れた経歴を持つ異色ビデオカメラマン |
|
手塚一佳(44) CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。 |
|
江夏由洋(13) 兄弟で株式会社マリモレコーズを設立し、ノンリニアにおける映像技術、映像制作を中心に、最新技術を取り入れたワークフローを提案している。 |
|
山本久之(26) 映像エンジニア。フリーランスで映像設備のシステムインテグレーションと、ノンリニア編集に携わる。 |
|
林永子(26) 2005年よりサロンイベント「スナック永子」を開催。通称「永子ママ」 |
|
鍋潤太郎(18) ロサンゼルスを拠点とするVFXジャーナリスト。 |
|
高野光太郎(4) 映像クリエイター。フリーランスにてミュージックビデオ、番組オープニングタイトル、CM、劇場映画、全てをデスクトップで制作。 |
|
安藤幸央(9) 無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPH ASIAやCESなど海外の注目イベントを紹介。 |
|
猪蔵(5) いつも腹ペコ。世の中の面白いことを常に探っている在野の雑誌編集者。 |
|
山下香欧(8) 米国ベンチャー企業のコンサルタントやフリーランスライターとして、業界出版雑誌に市場動向やイベントのレポートを投稿。 |
|
ヒマナイヌ(5) 頓知を駆使した創造企業 |
|
坪井昭久(5) 映像ディレクター。代表作はDNP(大日本印刷)コンセプト映像、よしもとディレクターズ100など。3D映像のノンリニア編集講師などを勤める。 |
|
萩原正喜(69) 米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。 |
|
岡田智博(7) クリエイティブクラスター代表。メディアアートと先端デザインを用いたコンテンツ開発を手がけるスーパー裏方。 |
|
江口靖二(5) デジタルサイネージコンソーシアム常務理事、慶應義塾大学DMC機構研究員などを兼務。 |
|
しらいあきひこ(2) カメラメーカー、ゲーム開発などの経験を持つ工学博士が最先端のVR技術を紹介。 |
|
今間俊博(5) 尚美学園大学 芸術情報学部 情報表現学科 教授。アナログ時代の事例を通じ、教育関連の最新動向を探る。 |
|
伊藤裕美(5) オフィスH(あっしゅ)代表。下北沢トリウッドでアニメーション特集上映を毎年主催している。 |
|
秋山謙一(17) PRONEWS記者。映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動中。 |
|
UserReport(10) 業界で話題の商品を実際に使ってみてどう感じたかを、各方面の様々な方々にレポートしていただきました。 |
|
System5 Labs(8) SYSTEM5スタッフが販売会社ならではの視点で執筆します。 |
