米国最大のケーブルプロバイダーであるComcast社(コムキャスト)が、市場第二位のタイムワーナーケーブル社(TWC)を総額約452億ドル(日本円換算で約4兆6080億円)で買収することが明らかになった。買収は株式交換で、コムキャストはTWC社の全株式を一株当たり158.82ドルでコムキャスト株2.875株と取引する計画だ。コムキャストケーブルユニットの最高経営管理者であるNeil Smit氏が、合併後の企業を統括する予定。買収は年末までに完了すると見込まれているが、株主と米司法省(DOJ)や米連邦通信委員会(FCC)による承認が必要となる。コムキャストは声明文で、これによって約15億ドルのコスト削減を実現し、株式に対するフリーキャッシュフローが増加する見込みだと述べている。

TWCは昨年中旬あたりから同業者チャーター・コミュニケーションズからの買収提案の渦中であったが、600億ドルの申し入れに“条件に見合わない”として断ったばかりだった。

コムキャストはキー局のNBCそしてユニバーサルスタジオも過去に買収し、今や米国最大級のMSOというだけでなく世界のメディア王となっている。TWCを吸収すれば、同社の加入者数(1100万件)にコムキャストが保有する倍の加入者数で3000万件の加入者(世帯)数に達する。

コムキャストは主にフィラデルフィア、ボストン、ワシントンとシカゴを含む北東部エリアにサービスを提供しており、対してTWCはNY、LA、ミルウォーキーと中西部が主で両社のサービス地域は若干異なっている。今回の買収が成立すれば両社でケーブル市場として米国の三分の一を網羅することになり、残るケーブル事業者のCablevision、AT&Tやベライゾンといったテレコム関連社、そして衛星事業者のDIRECTVやNetflixの利用者にも大きな影響が生じるとみられる。

以上の懸念のもと、コムキャストでは規制当局の承認を得るためにも市場占有率を3割以下に抑えるために、300万人の加入者を対象とするシステムを他事業者に売却する意志があることを表明している。

(山下香欧)