キヤノンが大きな展示会に出展する場合の最近の傾向として、製品だけではなく同社の技術やセミナーにかなりのウェイトを置くようになってきている。今回もブース中央に設けられた円形状のスペースにセンサーやレンズの技術展示が行われていた。その周囲を取り巻くようにハンズオンのコーナーや試写が行えるスタジオ、セミナーコーナー、レンズラインナップの紹介コーナーなどが並んでいる。NABでは歴代のTV用レンズやEFレンズのラインナップ、カメラの修理ブースを設けるなど技術展示のほかにもかなりのスペースをさいていたが、来場者の客層に合わせた出展を行っているようだ。

新製品としてはCINEMA EOS C100 Mark IIや50-1000mm PLマウントズームレンズのほか、ACESproxyに対応した30型4KリファレンスモニターDP-V3010、デジタル一眼レフカメラEOS 7D Mark IIなどが出展された。また、例年通りセミナーも開催されたが今年は国際会議場でも開催されブースとは違って落ち着いた雰囲気で聴講することができるようになっていた。デジタル一眼での動画撮影において先鞭をきった同社としては、スチール系、フィルム系、ビデオ系といったジャンルの異なるユーザーがおり、そうしたユーザーが交流し学べる場所としてのセミナーは貴重といえる。

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今年発売になったXF205も新製品として出品されていたが、同社がもつフィルムをベースとした画像に対するノウハウや知識を考えると4Kや8Kのほうが馴染みやすいと思われ、来年あたり発表になるであろうXFの新ラインナップに期待が膨らむ

さて、今回のキヤノンの展示はCINEMA EOSシステムのカメラもラインナップがひと通りそろい、レンズもPLも含めて充実した感がある。ファームのアップデートなどは引き続き行って行くと思うが、ある意味一区切りつき、その集大成を披露したといった印象だ。来年以降どのような方向にコマをすすめるのか、すでに社内では決まっていることと思うが、個人的には8Kに期待したい。技術展では8Kのカメラもモニターも試作品があることから、製品ラインナップとしてどのようにまとめていくのか、に尽きるのではないだろうか。

今回「映像表現の領域は新たなステージへ」をテーマにしているようで、ブース入り口正面に掲げられていた。これはセンサーの大判化による表現であったり、HDまでの色域やダイナミックレンジからフィルムのそれに近づいたこと、制作スタイルの変化などを指していると思われる。ブース内のセミナーは4Kワークフローと称しACESやCinemaRAW現像が中心となっており、国際会議場のセミナーでも4KをキーワードにRAW収録やBT.2020について事例を挙げての実際的な内容だった。

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ハンズオンスタジオコーナーでは、12月下旬発売のEOS C100 Mark IIに12月下旬発売のEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMを装着したものや世界最長の焦点距離と世界最高のズーム倍率を実現した4K光学性能のCINE-SERVOレンズCN20×50 IAS Hのほか、業務用カメラ専用リモートコントローラー RC-V100に関心が集まっていた。発売前の新製品や実際に手にとってみないとわからない微妙なフィーリングなどを確かめたいユーザーにはこうしたハンズオンのコーナーは有用だ

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技術展示コーナーに、センサーテクノロジーとして、超高感度35mmフルサイズCMOSセンサーや超高感度1.2億画素CMOSセンサーの現物とその素子を使って撮影した映像が披露されており、単に技術的可能性ということでなく、量産化も可能というかなり現実的な形での出展となっていた。ほかにも直径67cmもあるすばる望遠鏡の主焦点補正光学系レンズの現物や、今年から建設が開始されたハワイ島にある望遠鏡において同社が担当する主鏡の一部(といっても対角1.44mのものが492枚組み合わせて一体となる分割主鏡なので、その1つでもかなりの大きさになる)など普段一般に見ることの出来ない興味深い物が多かった

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EOS C100 Mark IIは2012年11月発売のEOS C100の後継機種になるカメラで、CINEMA EOS SYSTEMとして初めて画像処理エンジンDIGIC DV 4を搭載しており、偽色やモアレ、ジャギーの発生を抑え、高感度撮影時にもノイズを低減した高画質な映像の撮影が可能となっている。また、デュアルピクセルCMOS AF技術の採用によりコンティニュアスAFに対応。さらに、STMレンズ使用により、顔検出AFにも対応可能。左右方向に約270°の範囲で開閉可能な有機ELモニターや上方へ最大68°のチルト操作が可能なビューファインダーの搭載で操作性の向上を図っている。C500やC300とデジタル一眼の間を埋めるカメラといった印象

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連写・AF性能をさらに向上させたAPS-CサイズCMOSセンサー搭載機のフラッグシップモデルEOS 7D Mark II。最高約10コマ/秒の高速連写と、EOSシリーズの中で最多の測距点数となるオールクロス65点AFを備え、高速で複雑な動きをする被写体の決定的な瞬間を捉える優れた動体撮影性能を備えている。映像エンジンを2基採用したデュアルDIGIC6を搭載しており、最高ISO16000の常用ISO感度を実現したほか、フリッカー光源を検知し、露出への影響を抑えた撮影も可能となっている

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業務用カメラ専用リモートコントローラーRC-V100。露出やホワイトバランスなどの設定・調整を行うことが可能で、使用頻度が高い画質調整機能をダイヤルに割り当てることができる

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センサーテクノロジーのコーナーでは、超高感度35mmフルサイズCMOSセンサーや超高感度1.2億画素CMOSセンサーなどを紹介。現物とそれで撮影した映像を披露した

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超高感度35mmフルサイズCMOSセンサー

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4KディスプレーDP-V3010。独自設計のRGB LEDバックライトシステムとIPS液晶パネルなどにより、広色域・高解像・高コントラストを実現したほか、Canon Logガンマ対応や1D/3D-LUTのインポートが可能。先月のファームウェアアップデートにより、シネ系のCinema GamutやDCI-P3+色域のほか、ビデオ系のBT.2020の色域での映像確認が可能で、ACESproxyにも対応となった

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高倍率ズームレンズCN20×50 IAS H EF/PL 50-1000mm。大判センサー対応のドライブユニット付きズームレンズとしては世界で初めて1.5倍のエクステンダーを内蔵しており、焦点距離1500mmまで延長可能。EFマウントの通信プロトコル対応のほか、放送用12pinリモートコネクターを装備しておりアイリスのリモート操作が可能。その他にも、シネレンズのCooke社の/i Technologyにも対応し、フォーカス/ズーム/絞り位置データーを対応カメラへ送信できる。2015年4月下旬発売予定

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一眼レフカメラ用EFマウントレンズEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM。蛍石やUDレンズを採用することで、全ズーム域で高画質化を図ったほか、新コーティング技術ASC(Air Sphere Coating)を採用し、フレアやゴーストを低減している。直進式ズームではなく回転式になっており、迅速な操作を可能にするため回転角は95°。シネスタイルでの撮影の場合マットボックスを使うので、レンズ長が変わらないのは歓迎したいところだが回転角95°というのは微妙かも