劇場向け立体3D技術で知られる米RealD社が、投資ファンドのRizvi Traverse Management(リズビー・トラバース・マネージメント)に1株当たり11ドル、おおよそ5億5100万ドル(約675.5億円)で売却されることが明らかになった。すべて現金での取引で、RealDの決算期になる2016年3月前後に完了する予定。RealDは現在の株公開企業から非公開会社へと変わる。取引後も、現在の最高経営責任者マイケル・ルイス氏が継続して指揮をとるとみられる。

リズビー・トラバース・マネージメント社はサミット・エンターテインメントやTwitter、スペースX、プレイボーイ、スナップチャットなどのメディアエンターテインメント、ハイテク企業に出資している。

RealDは昨今にみられる3D上映館の動員数および3D映画作品の減少で事業成績が悪化。今年の第2四半期(6月~9月)では総収入が年間19.5%減の3850万ドルで、790万ドルの損失を計上している。 2015年では、12月に上映する「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を含め、年末までに15作品が3Dで制作、映画館で上映される。2013年では35作品だったのが2014年では19作品と、年々ハイブリッドで制作する映画作品数が少なくなっているのは明らかだ。

2003年に設立したRealDは、2005年公開の「チキン・リトル」でシネマ産業に3D技術を投入し、2009年の「アバター」で3Dブームを再到来させた。RealDのプラットフォームは現在、世界の劇場にある27300スクリーンに導入され、世界で最も普及している3Dシステムとして認識されている。

昨年にはRealD株を10%保有しているStarboard Venturesから、6億ドルで全株を引き取る申し出があった。しかしRealDはこのオファーを拒否し、財務アドバイザーのモーリス・アンド・カンパニーと共に、戦略的選択肢として会社売却のほか合併の可能性を検討していた。

(山下香欧)