独立行政法人の情報通信研究機構(NICT)は2016年2月5日から開催されている「さっぽろ雪まつり」の8K/4K映像を用いて、8Kライブ映像の超広帯域リアルタイム暗号化配信を世界で初めて成功させた。

NICTでは、研究開発用テストベッドネットワーク「JGN-X」を用いて、8K/4K超高画質映像配信において各方面の技術検証を行っている。昨年は、さっぽろ雪まつりの模様を8K非圧縮映像として、長距離マルチキャスト伝送と100G伝送の高精細・選択的モニタリングの実験を成功させた。

今回は、8K超高画質映像のライブ配信で定まっていない盗難防止のセキュリティに着目し、産学官関係組織46団体と連携して実証実験を実施した。JGN-Xの国内100Gbps基幹回線に加え、国立情報学研究所が構築・運用する学術情報ネットワークSINET5を加え、北海道から沖縄へと日本列島を縦断する100Gbps回線の広域ネットワークを構築、札幌と大阪の両拠点から、8Kカメラによるリアルタイム中継伝送を行った。

暗号化技術にはIPsecを採用し、広域ネットワーク上で8K非圧縮ライブ映像(24Gbps)をリアルタイムに暗号化・復号化し、安全に配信できる仕組みを構築した。さっぽろ雪まつり会場で撮影される8K映像データをすべて暗号化して大阪の一般公開会場(グランフロント大阪内のナレッジキャピタル/The Lab.)まで送信し、会場内で復号化して中継映像を広域に安全に配信できることを実証した。グランフロント大阪内の一般公開会場では、シャープ社製85型8Kディスプレイにて実験映像(8K/60fps)を表示した。

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今回構築した試験用ネットワーク上に、NECのSDN対応製品「UNIVERGE PFシリーズ」のSDN対応コントローラ・スイッチや各種のネットワーク装置を2拠点(札幌、大阪)に設置。並列に構築した実装方式の切替時には個々の機器での煩雑な設定変更が必要だが、NICTが研究開発・運用を進めてきたSDNテストベッド「RISE」の技術を活かし、機器の通信経路変更を遠隔から一括で制御することにより、短時間での切替えが可能になった

また、神奈川工科大学(KAIT)もSINET5に100Gbpsの広帯域アクセス回線で接続を行い、8K/4K蓄積配信サーバの拠点として、8K収録素材から編集した4K解像度の映像を札幌、大阪、沖縄にマルチキャスト配信した。本実証実験の一部は、JSPS科研費26330121の助成および平成27年度の総務省SCOPE委託研究の支援を受けて行っているという。

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KAITでは、1台で4K60p(12Gbps)を蓄積・配信できる性能を有するNTT-ITの「viaPlatz XMSサーバ」を2台、および入出力装置として「viaPlatz 4Kメディアゲートウェイ」を4台使って、8K超高精細素材の蓄積・配信を実現している

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さらにNICTはタイの研究機関と協力し、JGN-Xバンコクアクセスポイントを経由して日本・タイ間で相互に4K圧縮映像を配信する国際伝送実験も行っている

(山下香欧)