スーパーボウルの放送権はキー局の間で持ち回りとなるが、記念すべき50回目の今年はCBSが担当し、刷新したCBS Sportsのロゴと共に、550名という今までにない人員数を現地に派遣して盛大なイベントに臨んだ。

CBSは常に新しい放送撮影技術を取り入れてきている。今回の目玉はEyeVisionの復活だろう。同局は2001年のフロリダ・タンパで行われたスーパーボウル開催時に、初めてEyeVisionと名付けたマルチカメラ3Dリプレイシステムを採用した。今回は、Replay Technologiesのマルチカメラからのソースをつなぎ合わせてリアルタイムに3Dグラフィックを生成するFreeD技術を、36台の5Kカメラ(JAI製)と組み合わせた、いわゆる360°インスタントリプレイを編み出した。

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JAI 5Kカメラ。Intel Blogより引用

息をのむシーンを全方位でインスタントリプレイするVRライクなシステムである。リプレイ時にはどのアングルでもフリーズでき、ぐるりと一回りして観ることができる上、そのアングルからまた再生することができる。FreeDのネーミング通りfree-dimensionalでVR効果を得られる。

今年1月の49er対Rams戦にてテストされたFreeD技術。ロンドンオリンピックやUSオープン(テニス)でも採用されている

国内最大級のスポーツ観戦となったリーバイススタジアム(カリフォルニア・サンフランシスコ)のレベル500/600のデッキ周辺にカメラを設置し、25ヤードラインとゴールライン間のレッドゾーンに二手に分かれて(18台ずつ)、約18°間隔で焦点を合わせた。従来のFreeDで設置する台数よりも8台多い。

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© The Chronicle

カメラのシンクロ制御は、NHKが持つブレットカムに似たカメラロボットシステムだ。全5Kカメラはリモートで同期制御されソースはファイバーで集約されたIntelのHPCシステム(ZXeon E5-26XXサーバー)で、ニアリアルタイムにボクセルに変換される。リプレイは約60秒程度でレンダリングされた3D素材(ボクセル)フォーマットから生成される。

さらに、ブルーペインをボーダーに置いてグラフィックス壁を作り、たとえば選手がボーダーを超えた時点でエフェクトを発生させることもできる。

この360°インスタントリプレイはオンエア以外にも、スタジアムのDaktronics社製ビックボードスクリーンにも映し出され、観戦者も楽しむことができたという。

また、今回カメラは100台以上が会場で使われたが、そのうち70台はこの試合専用として投入されたという。さらに、ソニーの次期8倍速の4Kハイスピードカメラのプロトタイプが試験的に導入された。ポストシーズンの際から実証されてきており、ズーム機能を使っても非常にシャープなスロー映像を映し出す。ポストシーズンで起用した際は、他のカメラからは決定づけられなかった審判の判断時に役立ったという。

(山下香欧)