日本経済新聞社の8月26日付の報道によると、パナソニックとソニーは8K映像伝送を受信可能なテレビ向けの技術開発を共同で手掛け、2020年を目標にそれぞれ製品化、発売することを明らかにした。

事実、日本のテレビメーカーは韓国および中国勢にシェアを奪われている。現在、世界家電メーカーでLCDテレビ売上トップ10のうち、日本メーカーはソニーのみとなっている。対して韓国メーカーはサムソン、LG電子の2社、そして中国勢は4社が占めている。この現状を見据え、政府の支援も得ながらオールジャパンの体制を整え、日本の技術主導権を取り戻し、市場での生き残りを目指すという。

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2016年第二四半期までの出荷台数(WitsView調べ)。ディスプレイリサーチIHSによると、サムスンは売上高上位トップで業界の48%をシェアする。続いてLG電子が28.4%、ハイセンスが15%、TCLは13.5%、Skyworthは12%、6位のソニーは11.5%

ソニーとパナソニックは、最先端の技術水準を確保した高付加価値製品に注力し、開発した技術を使って独自のデザイン、テレビ機能を搭載して2020年に発売する予定である。またテレビ製品のほかにも、両社の持つデジタルカメラ製品にも採用する予定だ。なお、ソニーは先行して今月初め、2020年に8Kテレビを市場に投入することを明らかにしていた。同プロジェクトには8K技術の先端を行くNHKが、データ圧縮技術や音響技術の規格策定を行い、データ処理用半導体開発に、富士通とパナソニックのLSI部門が融合したソシオネクスト社が加担する。さらに各部品の開発についてもコスト分担を目的に、ほかの国内企業にも参加を呼び掛けるとしている。

NHKによる8K試験放送は8月1日から開始された。NHKは全国のNHK放送局にシャープ社製の8Kテレビを配備し一般に公開したが、同テレビは試験放送用で一般家庭向けに市販されているものではない。2018年の8K実用放送が開始されるまでに一般家庭用8Kテレビやチューナーなどが市場に出てくるはずだが、メーカー側としては、技術策定がないところで先行して開発しても製品化できず、収益に結びつかない。今は4Kテレビの需要が上向きを見せている。この動向と並行して8Kテレビの開発を進めていくなか、日本に留まらない8K方式の策定が急がれる。

ちなみにパナソニックとソニーの8Kテレビ技術共同開発の報道があった日に、NHKと8Kカメラを共同開発している池上通信機社の株が動意を見せた。今後の市場成長期待が高まる格好となり、期待感が波及したもよう。

(山下香欧)