米Huluは、次世代メディアフォーマットを定義し開発する非営利団体「Alliance for Open Media(AOM)」に加盟したことを発表した。AOMは2015年にAmazon、Cisco、Google、Intel、Microsoft、Mozilla、Netflixといったインターネットに精通した大手7社が共同で設立した、互換性が高く超高精細にも対応可能な、特許フリーの新コーデックの開発に取り組んでいる団体である。Huluを含め現在29社がメンバーになっている。

AOMの最初のビデオ圧縮規格であるAOMedia Video 1(AV1)は、HEVC/H.265およびVP9よりも優れた圧縮効率を目指した、相互運用可能なオープンソースのビデオフォーマット。高額な特許ライセンスのHEVCとは対照的に、ロイヤリティフリー(特許)ライセンスを用いる。

今年1月に開催されたLinux.conf.au 2017 (LCA2017)での講演「Progress in the Alliance for Open Media」より。昨年末から徐々にビットレート削減の進展がみられる。目標はH.265の30%減

AV1はCiscoのThor、Mozillaが支持するDaala、Googleの最新コーデックとなるはずだったVP10の仕様を組み込んで開発されており(GoogleはVP10リリースをキャンセルしている)、これらに対応する多くのブラウザそしてGoogleの動画コンテナフォーマットWebM形式において音声フォーマットOpusと一緒に使用可能となっている。

アライアンスが焦点をおいている1つは、適度に高速なコンピュータ上のブラウザで4K/60fpsを再生する機能をターゲットにした、UHDビデオの品質である。ベースバージョンのコーデックは10/12ビットのエンコーディング、およびBT.2020カラースペースをサポートする。さらにもう1つの焦点は、アライアンスメンバーのGoogleとMozillaがサポートするWebRTC(Web Real-Time Communication)の適応と、MicrosoftのSkypeのようなアプリケーションを提供することである。

現状におけるビデオストリーミングは、総インターネットトラフィックの大部分を占めている。圧縮率が数パーセント向上するだけでも、ネットワーク全体のトラフィックへの貢献および、アプリケーションのユーザーエクスペリエンスに大きな影響を与えると言える。

AV1とOpusは、低スループットの接続でも良い品質のビデオを提供でき、高スループット接続では以前よりも優れた品質のビデオストリーミングが可能になるという、接続速度の変化に応じて拡張性を備えているかに着目し、特にセルラーネットワーク上での使用を考慮して設計されている。アライアンスの一員であるAmazon、Hulu、Netflixが競い合っている高品質なUHDビデオを、WebMコンテナに組み込んで最新のディスプレイ技術を持つモバイルデバイスで視聴可能となる期待感がある。

AV1リファレンスコーデックのバージョン0.1.0は、2016年4月に公開された。2017年2月の時点では、メンバー企業が提供する45の試験的コーディングツールで最終バージョンのフィックスを行っているという。アライアンスメンバーにはAMD、ARM、Broadcom、Chips&Media、Intel、Nvidia、ソシオネクストなどのプロセッサー/半導体の開発社から、Google、Microsoft、Mozillaのブラウザ開発社、そしてストリーミングやビデオ会議サービス(Adobe、Amazon、BBC R&D、Cisco、Netflix、YouTube)が揃う。

ビットストリームの規格が固まり次第、例えばGoogle傘下のYouTubeでは、6ヶ月以内に高画質の動画から迅速なAV1への移行を行うことを明らかにしており、ハードウェアデコーダは12ヶ月以内に準備が整うと見込まれている。AV1が期待通り展開すれば、イベントのライブキャスティング、WebRTCによるビデオチャットの改善、ローカルストレージ用の小型ファイル化、ビデオストリーミングの低ビット・高品質化など、ネットワーク、クラウドメディアに大きく貢献できそうだ。

ソフトウェアベースの映像処理技術を持つElecardによる、AV1リファレンスコーデックの最新のパフォーマンス結果では、開発されたコーデックAV1が現在、HEVCとの性能において同等であるという結果を証明している。

(ザッカメッカ)