Blackmagic Designの発表によると、マシュー・ローセン監督による「Quezon’s Game(原題)」が、Blackmagic Designカメラで撮影され、DaVinci Resolve Studioで編集およびカラーグレーディングされたという。

マシュー・ローセン氏が撮影、監督し、ABS-CBN Film Productionsがプロデュースした同作は、フィリピン大統領、マニュエル・L・ケソンの人生と、ナチスドイツから逃れたユダヤ難民を保護するための彼の奮闘を描く。同作は、世界中で数多くの賞を受賞。ヒューストン国際映画祭では4つの賞を受賞し、カナダのシネマワールド映画祭では、カラリスト、トニ・ゴズム氏のカラー・トリートメント賞を含む12の賞を受賞している。

「Quezon’s Game」の撮影にあたり、ローセン氏はメインカメラおよびアクションカメラとして、複数のBlackmagic Designカメラを使用。Blackmagic Designカメラは小型サイズでフィルムライクな高品質イメージを得られるため、ローセン氏はどのような場所でも撮影が可能だったという。ローセン氏は次のようにコメントしている。

この作品は「カサブランカ」や「市民ケーン」、あるいは同じ年代設定の映画たちと同じようなルックにしたかったんです。しかし、メインストリームの観客をターゲットとした作品を白黒で撮るという選択肢には、限界があると思いました。このような経緯で「Quezon’s Game」の最終的ルックが決まったと言えますね。

屋内ショットの多くは、高コントラストの白黒フィルムのルックにしました。DaVinci Resolveでサチュレーションを下げましたが、鮮やかな色を使わずにできるだけモノクロに近くするという方向性により、これがさらに強調されました。セットの多くは森やオフホワイなどのアースカラーです。白黒ではありませんが、古い映画を見ているような感覚ですね。

Blackmagic Designカメラは驚くほど軽量でコンパクトです。撮影のほどんとは、フィリピンのバターンにあるラス・カサス・デ・アクザールというリゾート地で行いました。道を封鎖しない、観光客の邪魔になるようなことはしない、という条件で撮影許可が下りました。撮影に使った部屋はとても狭かったのですが、Blackmagic Cinema Cameraを壁ギリギリまで寄せることで、限られた中で最大限の奥行きを得ました。

「Quezon’s Game」は、1930年代後半から40年代にかけてのフィリピンを舞台に、作品全体を通して濃厚なドラマとアクションシーンが交錯する。

私がこのカメラを愛用する2つの大きなファクターは、サイズとイメージです。どちらのファクターも、私が求めるルックには欠かせません。小型であるため希望のアングルを簡単に撮影でき、そしてフィルムライクなルックを得られます。

バイクにマウントして移動ショットを撮影する際、このカメラは非常に便利でしたね。非常に軽量でコンパクトなので、アクションカメラに最適です。そして他のショットも同じカメラで撮影しているため、アクションシーンと完璧にマッチします。

同作のグレーディングは、マニラに拠点を置くKinetekのカラリスト、トニ・ゴズム氏が担当。同氏は、これまでにも長編映画、テレビ番組、世界的ブランドのCMなどを数多く手掛けてきた。

ゴズム氏は「Quezon’s Game」のルックとフィールに関して次のようにコメントしている。

「カサブランカ」のような雰囲気を持ちつつ、完全な白黒にはしないことが目標だったので 色味を少し残しています。特に野外のシーンでは熱帯特有の活気と生き生きした雰囲気を出したかったんです。

映画が白黒ではないことを強調するため、ゴズム氏はDavinci Resolveを使って各シーンで特定のエレメントを切り離し、その部分だけサチュレーションを上げた。この例が、作品の中でもキーとなる、ジャズクラブでのナチス親衛隊士官の発砲シーンである。ゴズム氏はDavinci Resolveを使い、作品の雰囲気を壊さずにハーケンクロイツを強調したという。

Davinci Resolveのおかげで、作業時間をかなり節約できました。この作品は会話シーンが多く、基本的にカメラは2人の登場人物の間を行き来します。これらのショットはほぼすべて同じグレーディングを適用していますが、複数のクリップを選択してワンクリックで適用できるのは非常に便利ですね。また、全体のシーケンスのルックを急遽少しだけ変更することになったのですが、それにはトラックをグレーディングできる機能が役立ちました。クリップごとに適用して調整する必要はありませんでした。

また、世界公開に向けての準備にもDaVinci Resolveが使用された。

柔軟性と機能においてDavinci Resolveに勝るものはありません。作品のグレーディングには8日間を費やしました。世界中の劇場、テレビ、OTTを扱う場合、納品の要件を満たすことはとにかく大変です。Davinci Resolveでは、字幕、クローズドキャプション、アスペクトレシオ、ビットレート、フィニッシングに必要なツールが揃っており、簡単に作業できます。効率的に納品基準を満たすことができました。