北米市場、欧州市場で磨かれたサイネージシステムInfoChannelを開発してきた米SCALA。現在、アメリカ、イギリス、ノルウェー、オランダ、フランス、カナダ、香港、インド、日本に事業所をもって販売している。そのInfoChannelは、配信システムなどが異なるバージョン3とバージョン5で併売してきたが、今年からバージョン3を廃止、バージョン5に一本化するとともに「Scala」と商品名も改めた。このScalaを使用してコンテンツ開発を行い、デジタルサイネージ環境を提供している代理店の1つにエヌジーシーがある。今回お話をうかがったエヌジーシー開発室の飛田幹司氏は、SCARAがScalaを開発したきっかけを次のように振り返った。

「SCALAは、ノルウェーで1987年にDigital Vision ASとして設立された会社です。当初はAMIGAプラットフォームでソフトウェアを開発していました。当時Macintosh環境ではHyper Cardというスクリプトベースのツールがありましたが、それに似たツールをAMIGA環境で作っていたのです。1988年に出された初めての製品がInfoChannelです。その後、1992年に米国ペンシルバニアに移転。1996年にAMIGAからWindowsプラットフォームへと移植し、現在のPowerPointのように使用されるまでになりました。画面上にボタンなどを配置するデザイン性とインタラクティブ性を持っていたことで、米国のあるホテルが予約システムを電話会社の協力を得ながら構築したのが契機になり、ネットワークや電話線のインフラを使用してマルチメディアコンテンツを配信するシステムへと進化しました。infoChannelが、プッシュ型のコンテンツ表示に特化したデジタルサイネージの原型とも言える姿に変わったのはこの時です。1980年代から開発が始まったと考えると、もっとも歴史のあるサイネージシステムと言えるのではないでしょうか」

Scalaのサイネージソリューションは、大きく3つのソフトウェアで成り立っている。コンテンツを管理・配信するサーバアプリケーションのSCALA Content Manager、画面に表示する素材を組み合わせてオーサリングするPCソフトウェアSCALA Designer、ディスプレイの表示を受け持つPCクライアントソフトウェアのSCALA Playerの3つだ。海外製品とはいえ、ユーザーの要望に合わせて開発してきた歴史が長いソフトウェアでもあり、日本語化カスタマイズはなされている。

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SCALA Content Managerは、PCからブラウザを使用してサーバーにログインしてコンテンツの管理、配信時の暗号化、スケジューリングなどを行う。特別な技術を使用せずに、Webベースの技術で管理・運用ができる。画面レイアウトやプレイリスト作成、配信スケジュール管理などでは、操作しやすいGUI(グラフィカル・ユーザー・インタフェース)を採用しており、初心者でも状態を稼働状態を把握しやすくしていることが特徴だ。また、配信するSCALA Playerのライセンス管理も行っており、単に表示端末のSCALA Playerを増やしただけでは表示できないように、セキュリティ面にも配慮している。SCALA Playerのグループ設定もできるので、表示したい施設ごとや、フロアごとといった設定も可能だ。さらに表示フレームの分割領域を無制限に設定でき、その領域ごとに再生スケジュールを組むことも可能にすることで、表示の自由度を高めている。

SCALA Designerは専用のオーサリングソフトウェア。テキストの画面上の配置や修正、テロップの速度調整、素材のトリミングやリサイズ、トランジション処理、インタラクティブコンテンツ制作などが可能。オーサリングした素材は、SCALAスクリプトとして書き出される。制作自体は、PowerPoint感覚で使用できるようになっており、Photoshopのレイヤー構造も、付属するサードパーティ製のPhotoshopプラグインを使用することで、レイヤーごとに素材分割されて使用できるようになる。

「SCALA Content Managerでは画面のフレーム分割の設定やユーザー管理をするにとどめ、SCALA Designerで素材のオーサリングをするというワークフローにしたことで、デザイナーは煩わしい画面管理をしなくて済むようになります。店舗などでフロアマネージャーがテキストだけを差し替えたい、画像だけを差し替えたいというような場合がありますが、SCALA Designerで差し替え可能な部分を設定しておくことで、フロアマネージャーがSCALA Content ManagerにWebブラウザからログインして必要な領域だけを変更することが可能になるんです。こうした業務の運用の仕組みを作れるということですね」(飛田氏)

SCALA Content Managerで広告用の領域を設定し、広告代理店用のユーザー設定をしておくことで、他の領域に影響を与えずに運用・管理を行ったり、広告代理店が独自にSCALA Designerを使って広告領域のコンテンツ制作をするということも可能になるわけだ。

変型パネルサイズ向けのサイネージシステム構築も可能

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Scalaを使用してショッピングセンター近鉄Hoop 阿倍野店のデジタルサイネージシステムは、エヌジーシーがシステム構築をして納入した

Scalaを使用してショッピングセンター近鉄Hoop 阿倍野店のデジタルサイネージシステムは、エヌジーシーがシステム構築をして納入した

現在、米国内で使用されているScalaでは、SCALA Content Managerに繋がったSCALA Playerが最多で5,000台という実績もあるという。国内での導入事例としては、SCALAが大手量販店の街頭ビジョンや店内サイネージ、コンビニエンスストア内サイネージなどに納入した実績がある。エヌジーシーによる納入実績としては、映像制作などの付加価値を付けたうえで展開をしていることもあり、導入案件は公開できないものがほとんどだという。飛田氏は「ある新都市交通システム内で、4つのパネルを横並びに配置して4096×768ピクセルという変型ディスプレイを設置し、列車の運行情報などを表示するシステムを構築したことがあります」と話した。