米国ではAdobe Premiere Pro、Apple Final Cut Proに次いで第3位のシェアを誇るSONY Creative SoftwareVegas Pro 9。しかし、残念ながら日本では知名度、シェア共に高いとは言えない。プロ用のソフトではないと思っている人も多いと聞く。だが、最近になって、トムソン・カノープスEDIUSと共にVegas Proが話題にあがる事が頻繁にある。その最大の理由は、編集時の「軽さ」だ。特に報道や婚礼会場のリアルタイム編集といったスピードが要求される現場では、Premiere ProやFinal Cut Proでは対応できず、もはや必須アイテムだと言っても過言ではないだろう。

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編集時の軽さがもたらす快適性

元々Final Cut Proユーザーである私も,Vegas Proを実際使ってみるまでは、編集スピードはファイルの大きさとCPUの性能に依存するものだとばかり思っていた。もちろん、それは原因の一部ではあるが、ソフトウェアの設計次第でそれは劇的に変わるということを思い知らされた。

EDIUSが優れた独自コーデックと機能を絞り込む事によって、軽さを実現させているのに対し、Vegas Proは合成や音声編集などもこなせるワークステーションでありながら、編集プレビュー時に細やかにフレームレートを自動コントロールする方法で事前変換やレンダリングすることなく軽快な編集を実現しているというように、それぞれの設計哲学には大きな違いがある。いずれにしてもVegas ProとEDIUSの軽さは、Premiere ProやFinal Cut Proのそれとは異次元と言ってもいい。

今回は、その基本性能が、スピーディーな編集が要求される現場だけではなく、RED ONEの巨大なデータやAVCHDなどの高品質・高圧縮素材に対してどれ程機能するものなのかを検証してみた。

R3Dにエフェクトを追加しても止まらずにプレビュー

Vegas Proは、今回のバージョンアップでVer.9となり、RED ONEのR3Dファイルのネイティブ編集に対応した。他にも対応をうたっているソフトウェアは存在するが、「読み込める」だけでは意味がない。その後どういうレベルで編集、加工が可能かが重要だ。4K解像度を扱うR3Dファイルのネイティブとなると期待と共に不安を禁じえない。しかし、Vegas Proの実力は、EDIUSでさえまともに扱えないAVCHDファイルを事も無げにネイティブで編集できるものだ。期待が勝る。今回使用したマシンとデータの詳細を挙げておこう。

     CPU : 2.93GHz Intel Core 2 Duo/RAM 3.00GB (ノートPC)
     Graphics : NVIDIA GeForce 9800M GS
     OS : Microsoft Windows XP Service Pack 3
     R3Dデータ : 4096×2098 24p

プロジェクトのサイズはもちろん4096×2098 24pだ。プレビューは1/4に設定した。素材をエクスプローラーからダイレクトにタイムラインにドラッグするのに引っかかりはほぼなく、まずは普通に再生してみた。Vegas Proの特徴として、ファイルやエフェクトの重さに応じてフレームレートコントロールが機敏に動き、その時に秒あたり何フレームで再生しているかを表示してくれる。当然その数字は機敏にコロコロ変わっていくが、音が途切れることはない。つまり、フレーム数はおちても、途中で止まることはなくリアルタイムでのプレビューをキープしてくれる。これが快適さを生み出している。

R3Dデータの再生だが、初めこそ10フレーム/秒前後のフレームレートではあったが、ちゃんとリアルタイムで再生でき、何度か再生を繰り返す内に限りなくフルフレーム(24fps)に近づいてくる。おそらくプレビュー用のtempファイルを自動的に作り出しているのだろう。ここまででも驚きに値するが、再生ができたというだけでは編集にならない。

どんどん追い込んでみようと思い、2つの素材にディゾルブをかけ、その前後でループさせ、さらにループ再生しながらディゾルブを微調整してみた。その結果は、ディゾルブに差し掛かった途端にフレームレートは5フレーム/秒前後に落ちてしまった。これでは、スムースにディゾルブのカーブを確認することはできない。しかし、これも再生を繰り返している間にだんだんフレームレートが上がっていくので、最後には20フレームを超えるスムースさを取り戻す。

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さらに、両方の素材にエフェクトをかけてみるとどうなるんだろうと、恐る恐るやってみたが、なんと再生フレームレートに大した変化はなかった。スムースにとまではいかないが、動きのあるエフェクトでもある程度の効果は確認できる。更に過酷な条件として、このディゾルブの上にAVCHDの素材をスーパーインポーズさせてみた。それでも状況は変わることがなかった。

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多少フレームレートはおちても、リアルタイムをキープしてくれるという事が、編集内容によっては大変助かると思う。Vegas Proの特徴は中間コーデックを使わず、素材をダイレクトに非破壊編集し、リアルタイムにプレビューすることだ。このデメリットとして、最終確認のレンダリングに相当の時間を要する。編集前や編集中の時間や快適さはFinal Cut Proの比ではない。これはREDユーザーにとっては決定的なソリューションになりうる物だと確信できる。「REDで撮ったところで編集が重くてしにくいんじゃ仕方ない」と諦めていた人にとっても、朗報と言えるのではないだろうか。

(ふるいち やすし)