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アニメーション映画『モンスターVSエイリアン』に登場するキャラクター
(左から)ミッシング・リンク、スーザン、ボブ、ムシザウルス、コックローチ博士
(Left to right) These Monsters-The Missing Link (WILL ARNETT), Ginormica (REESE WITHERSPOON), B.O.B. (SETH ROGEN), Insectosaurus and Dr. Cockroach, Ph.D. (HUGH LAURIE)-are defenders of the planet in DreamWorks Animation’s “Monsters vs. Aliens.” DreamWorks Animation SKG Presents “Monsters vs. Aliens,” a Paramount Pictures release-and DreamWorks Animation’s first InTru(tm) 3D Movie, wholly conceived, developed and authored in 3D-featuring the voices of Reese Witherspoon, Seth Rogen, Hugh Laurie, Will Arnett, Kiefer Sutherland, Rainn Wilson, Paul Rudd and Stephen Colbert. The film is directed by Rob Letterman (“Shark Tale”) and Conrad Vernon (“Shrek 2”). The story is by Rob Letterman & Conrad Vernon. The screenplay is by Maya Forbes & Wally Wolodarsky and Rob Letterman and Jonathan Aibel & Glenn Berger. It is produced by Lisa Stewart (“Almost Famous”) and co-produced by Jill Hopper Desmarchelier and Latifa Ouaou. “Monsters vs. Aliens” has been rated “PG” for sci-fi action, some crude humor and mild language by the MPAA. (本分内挿絵も)



結婚式当日に飛来してきた隕石に当たってしまったことが原因で、突然15m以上の身長に成長してしまったスーザン。そのスーザンが、地球に侵略してきたエイリアンから、奇妙なモンスター達と力を合わせて世界を救う──。

DreamWorks Animation SKG(以下、ドリームワークス・アニメーション)が制作したアニメーション映画『モンスターVSエイリアン』パラマウント ピクチャーズ ジャパン配給)が7月11日に公開された。この作品は、ドリームワークスが初めて、ステレオスコピック3Dとして制作した作品だ。ここでは、ステレオスコピック制作の一部を紹介しよう。

Mayaの3Dビューアでスケール感を確認しながら作業

『モンスターVSエイリアン』の制作にあたり、キャラクターのアクションをステレオスコピックで表現するために、アカデミー賞にノミネートされた『カンフーパンダ』(2008年)からアクションが豊富なシーンを使ってステレオスコピック化して3Dスキルを磨いたという。ステレオスコピック・スーパーバイザーのフィル・マクナリー氏は言う。

「『カンフーパンダ』のドローイングボードに戻って、3Dでオーサライズされるとどう見えるかと、最初から作り直しました。完成したものと、以前の作品を比較することによって、『モンスターVSエイリアン』の制作にどのようにとりかかるかを検討しました。立体視の作品を制作するには、3次元空間での物体の見え方を制作に把握する必要があります。例えば、35mmレンズを使用する場合、キャラクターを立体的かつリアルに見せるために奥行きを深くすることがありますが、このような極端な奥行きは人間の目には非常に不快に感じることがあります。観客が不快に感じない範囲で、キャラクターが行動するための空間を与える必要がありました」

『モンスターVSエイリアン』では,キャラクターのスケール感をどう表現するかも重要だったとマクナリー氏は話した。

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隕石に当たって巨大化してしまった主人公のスーザン

「身長15mという巨大な女性スーザンに、100mを越える昆虫も出てきます。他のキャラクターはごく普通のサイズだとすれば、背後に巨大なキャラクターのあるカットは、コンポジット作業がとても大変です。しかし、最終的に3Dにしたことで、ちょうど良い遠近感を得ることができました。例えば、巨大なスーザンと等身大のボーイフレンドが出てくるシーンでは、スーザンを奥に、ボーイフレンドを観客のすぐ手前まで出すような効果を、ステレオスコピック技術で与えています。3Dが、シーンの出来事を誇張して表現できる好例ですね」

ドリームワークス・アニメーションが独自に開発したソフトウェアを大部分に使い、いくつかの重要な領域の制作パイプラインにAutodesk Mayaが使われました。例えば、シーン内で距離を測り、その距離をピクセルセパレーションに変換するツールをMaya内で開発して利用するとともに、Maya 2009に搭載された3Dビューアを活用することで、シーンの立体視効果を作っていった。

映画全体のライティング設定にLustreを活用

効果的なライティングプロセスにおいて、Autodesk Lustreは非常に重要なファクターである。プロダクションデザイナーを務めたデビット・ジェームス氏は、カメラ、アクション、ライトが重要だと考えている。

「私たちのパイプラインでは、ライティングを行う前に映像を効率的に撮影します。自分たちがやりたいことをしっかり理解するために、セットプランニングや他の準備作業をとても丁寧に行います。ライティング作業は、創造的で、技術的であり、反復の多いプロセスに驚くほどに関与しています。そのため、ライティングチームを非常に多く編成する必要がありました。そのチームは、デジタル照明の技師であるとともに、ハイエンドのコンポジターやテクニカルディレクターである必要もあります」

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スライム状のプニョプニョした身体を持つモンスターのボブ

『モンスターVSエイリアン』の制作では、タイトなスケジュールの中で、多くのライティングチームが反復作業を続けたことから、シーンやキャラクターによりライティングが異なってしまうことは避けられなかったという。例えば、映画に登場するモンスターキャラクターであるボブは、ティールブルーカラーのスライム状のプニョプニョした身体であるため、その形状を表現するためには、7~8つの独立したレンダリングレイヤーが必要になったという。

こうした複数のレンダリングレイヤーをもったシーンのライティングには、Autodesk Lustreを活用している。ジェームス氏は、何かを際立たせるために各エレメントを切り離せることが重要だと話す。

「Lustreの4つのチャンネルを使用して、キャラクター、背景、マットペイント、ビジュアルエフェクトに分けて作業を行いました。これにより、単にルミナンスやカラーのキーを操作するだけでなく、シャドウを追加したり、カラーコレクションをしたり、奥行きや空気感の演出を加えることがしやすくなりました。すべてを1つのマットで作業することも、アニメーションの全シーケンスを一度にリアルタイムに作業することもできます。ステレオスコピック制作では、シーケンスに沿ってショットごとに背景やキャラクターの不一致を見つけることが特に重要ですが、Lustreは、不一致を見つけるだけでなく、すぐに修正できるので助かりました」

立体的に極端な奥行きを持ち、ハイコントラストなショットで、左右のビューポートがお互いの領域に光を漏らしてしまうような場合はコーストが生じることもある。こうしたゴーストが発生しやすいショットにおいては、Lustreで補助的なマットを追加してゴーストを軽減させることも行っている。

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ドリームワークス・アニメーションは、今後制作するアニメーション作品は全てステレオスコピック3Dコンテンツとして制作していくそうで、現在、『How to Train Your Dragon』と『Shrek Forever After』を制作中だ。ステレオスコピック制作は、これまでの実写とは異なるカメラワークやライティングへの配慮が必要だ。ドリームワークスは、ステレオスコピック3D作品へと移行することにより、ステレオスコピックアニメーション制作技術ノウハウがさらに蓄積していくことになるだろう。