[SIGGRAPH2009]Vol.07 プロダクションの技術公開も含め、CG開発環境が進化

HOME  >  SPECIAL  > [SIGGRAPH2009]Vol.07 プロダクションの技術公開も含め、CG開発環境が進化

Special

[SIGGRAPH2009]Vol.07 プロダクションの技術公開も含め、CG開発環境が進化

2009-08-17 掲載

[SIGGRAPH2009]Vol.07 プロダクションの技術公開も含め、CG開発環境が進化

SIGGRAPH 2009が閉幕して1週間余り。振り返れば、今年のSIGGRAPHは、どこを見回しても、立体視の話題には事欠かなかった。立体視映画のメイキングはもとより、ゲーム開発の世界、ハードウェアや表示装置にいたるまで、業界全体で立体視環境の躍進が見てとれた。米国の盛り上がりと日本の現状を踏まえると、立体視に対する温度差や時間差も感じるのだが、このCG業界、映像業界における立体視の盛り上がりは確実に日本にも押し寄せてくるであろうと考えられる。

また、今年の SIGGRAPH 2009における Emerging Technology部門での日本勢の活躍も目立った出来事であった。SIGGRAPHのEmerging Technologyで展示された日本初の作品のいくつかは、10月22〜24日の3日間、お台場の科学未来館で開催される第17回 国際学生対応バーチャルリアリティコンテスト(IVRC2009)で観ることができる。毎年、IVRCで初披露された作品が、翌年のSIGGRAPHで展示されることも多い。最新技術展示に興味のある人は、IVRC2009も期待してほしい。

DSC00624.JPG SIGGRAPH会場入り口に描かれたチョークアート

CG開発者向けに豊富なExhibition TalkやBOFセッション

SIGGRAPHでは、研究分野の発表だけでなく、実際に現場で働いている技術者、開発者にとっても有益な発表やセッションも数多く開催される。今年の1つの特徴としては Exhibition Talk や BOF(Birds of a Feather) とよばれるセッションが数多く設けられていた。これは、出展企業が独自に詳しい技術内容に関して紹介するものだ。そのなかからいくつか紹介しておこう。

●Khronos Group/OpenGL 3.2

Khronos Groupは今回、広く使われているグラフィックスAPIである OpenGL の新バージョンOpenGL 3.2 をリリースした。Microsoft Direct3Dアプリケーションからの移植の容易さを向上させ、仕様のコア部分にジオメトリシェーダが含まれるようになった。OpenGL 3.Xから2つのプロファイルを持てるようになり、最新のグラフィックス環境を活用して旧来の使わない仕様を切り捨てる「コア・プロファイル」と、旧来の OpenGL アプリケーションの動作のための互換性を重視する「コンパチビリティ・プロファイル」を選択することができる。OpenGL 3.Xの浸透とともに、古い仕様、古いハードウェア依存だったAPIなどが緩やかに切り捨てられ、より新しく効率の良いOpenGL環境へと移行していくものと思われる。

組み込み向けのOpenGL ES は、iPhone、Android携帯電話、Palm Pre、PlayStation 3、Symbian携帯電話など、数多くのデバイスに組み込まれて世の中に広がっていることがアナウンスされた。今後は、デスクトップグラフィックス向けのOpenCLなどもモバイル環境に浸透してくると話していた。

●Khronos Group/OpenCL

OpenCLは、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)を汎用的な計算に使うためのC言語ベースの言語とその仕組みだ。すでにAppleが、次期MacOS XであるSnow LeopardにOpenCL環境を組み込むことをアナウンスしている。OpenCLの言語仕様は、C言語(C99)の仕様拡張として定義されるため、C言語プログラマーにとっては親しみ易いプログラミング言語となるだろう。 GPUを最大限に活用する環境としては、NVIDIAのCUDAが現在広く使われているが、OpenCLの場合、ベンダーに依存しない、オープンで無料で使える環境・仕様であることが大きな違いだ。そのためNVIDIAは、CUDA環境で動作するOpenCL互換環境も発表している。OpenCL の登場により、CPU/GPUの垣根無く、ハードウェア環境を最大限に生かしたアプリケーション開発が容易に可能となるため、開発者にとって歓迎されている。

●SONY ImageWorks/オープンソースプロジェクト

CGプロダクションはこれまで、自社内で開発した技術は貴重なノウハウとしてクローズドなものとして運用し、外部に公開することはなかった。サポートの手間や、バージョンアップや不具合修正などの手間がかかるため、公開するメリットが薄かったからだ。

ところが最近、DigitalDomainのコンポジットソフトウェアNUKEが一般に商品として販売開始されたり、ILMの拡張画像フォーマットOpenEXRが公開されたり、開発した技術を一般に解放するものが目立ってくるようになった。しかし、学生時代からこれらのオープンな技術に親しんだ優秀な人材を確保したり、サードパーティ製の優秀なツールが誕生するのを歓迎する意味でも、最近は様々な技術がオープンになってきている。

開発技術の公開として大きな出来事の1つに、SONY Pictures ImageWorks のオープンソースプロジェクトがある。まだ発表されたばかりなので、今後の詳しい展開は不明だが、OSL(Open Shading Language)というシェーディング言語、FIELD3Dというボクセルデータを扱うためのライブラリ、MayaReticuleというカメラマスキング用のMayaプラグインなど、SONY ImageWorks社内のワークフローで使われているさまざまな技術・ツールが公開されていくようだ。

●Intel/Intel Media SDK

ビデオのエンコード/デコードはとても計算負荷のかかる作業だ。高速なマルチコアCPUや、特別なハードウェアチップが搭載されていたとしても、そのCPUやハードウェアに最適化したコードや実装方法が必要になるなど、開発者にとっては容易な環境と言えるものではなかった。Intelが公開したIntel Media SDKは、それらの混沌とした環境を統合するために開発されており、開発者はハードウェア環境の違いを考慮しなくても最適な方法で利用することができるようにするものだ。

●NVIDIA/OptiX、SceniX、CompleX

DSC01288.JPG DSC01281.JPG

グラフィックスカードベンダーのNVIDIAは、一番の話題となったレイトレーシング用APIのOptiXのほか、以前のSceneGraph APIをレイトレーシング用に進化させたシーンマネジメント用APIのSceniXや、以前NVScaleと呼んでいた大量のデータを効率よく扱うためのシーンスケーリング用APIのCompleXを発表し、デモを行った。

●ATI (AMD) / ATI Stream SDK v2.0 beta

CPUベンダーAMDの子会社であるATI Technologiesは、OpenCLのx86系CPU向けのドライバが含まれるパブリックベータとしてATI Stream SDK v2.0 betaを発表した。今後数カ月以内にGPU用OpenCLドライバが含まれるものもリリースするとのことだ。


[ Category : SPECIAL ]
[ DATE : 2009-08-17 ]
[ TAG : SIGGRAPH 2009 SIGGRAPH2009レポート ]

この記事に関連する記事一覧

[SIGGRAPH2009]Vol.06 小粒ながらも本気度の高かったExhibition

[SIGGRAPH2009]Vol.06 小粒ながらも本気度の高かったExhibition

Googleブース。Google EarthやWeb上の三次元表示技術O3Dの展示が行われ、リクルーティングなども実施された。Pixar Animation Studioのブース、 .... 続きを読む

[SIGGRAPH2009]Vol.05 ボランティア参加が次世代のクリエイターをも生み出す

[SIGGRAPH2009]Vol.05 ボランティア参加が次世代のクリエイターをも生み出す

米ルイジアナ州ニューオリンズで、8月3日から7日まで5日間にわたって開催されたSIGGRAPH 2009から帰ってきた。ニューオリンズでは、1996年と2000年と過去2回、SIG .... 続きを読む

[SIGGRAPH2009]Vol.04 ゲームから立体視まで、実践的な制作手法の発表が相次ぐ

[SIGGRAPH2009]Vol.04 ゲームから立体視まで、実践的な制作手法の発表が相次ぐ

日本のビデオゲーム業界で注目されている海外のカンファレンスには、3月に行われているGDC(Game Deveropers Conference)と8月に行われるSIGGRAPHがあ .... 続きを読む

[SIGGRAPH2009]Vol.03 立体視がクロースアップされた映像作品の数々

[SIGGRAPH2009]Vol.03 立体視がクロースアップされた映像作品の数々

SIGGRAPH 2009が8月3〜7日の5日間、米ニューオリンズで開催された。SIGGRAPHでは展示会も行われているが、本分はコンピュータグラフィックス(CG)の学会である。グ .... 続きを読む

[SIGGRAPH2009]Vol.02 日本から数多くの出展があるEmerging Technology

[SIGGRAPH2009]Vol.02 日本から数多くの出展があるEmerging Technology

ニューオリンズでSIGGRAPHが行われるのは、1996年、2000年に引き続き今年で3回目になる。ニューオリンズ・コンベンションセンンターはミシシッピー川沿い位置しており、ウナギ .... 続きを読む

[SIGGRAPH2009]Vol.01 ゲーム開発基礎技術の発表が充実したSIGGRAPH

[SIGGRAPH2009]Vol.01 ゲーム開発基礎技術の発表が充実したSIGGRAPH

米ルイジアナ州ニューオリンズのニューオリンズ・コンベンションセンターで、世界最大のコンピュータグラフィックスの学会・展示会であるSIGGRAPH 2009(主催:ACM)が、200 .... 続きを読む

USTREAM生放送番組

PRONEWS Lounge
テーマに沿ったゲストを招き、対談・ディスカッションなどを特設会場より生放送。過去放送分も視聴できます。

特集記事

CES 2012レポート
世界最大級の家電見本市CES2012の現場から、PRONEWSならではの切り口でレポートをお届け。
PRONEWS AWARD 2011
2011年を振り返りつつ、2012年へ向けて各分野の商品・サービスを絞り込み総括する。
Inter BEE 2011 スペシャルレポート Inter BEE 2011スペシャルレポート
千葉幕張メッセにて開催されるInterBEE2011。PRONEWSでは今年もInterBEEのオフィシャルメディアパートナーとして、様々なコンテンツをお届け!
Inter BEE 2011の歩き方 Inter BEE 2011の歩き方
最小限の力で最大の効果が得られるInterBEE2011のおすすめの歩き方を、目的に合わせたコースごとに紹介する。
CEATEC JAPAN 2011 CEATEC JAPAN 2011
10月4日(火)から10月8日(土)まで幕張メッセにて開催される最先端IT・エレクトロニクス総合展 "CEATEC JAPAN 2011"をプロの視点からレポートする。
Movie Maker's GIG in Europe Movie Maker's GIG in Europe
オランダ・アムステルダムで開催されたIBC2011レポートを中心に、新たに湧き起こって来た映像技術における次世代の新テーマなど、現場から伝わって来たその温度感をレポートする。
PRONEWS課題図書 PRONEWS課題図書
2011年の夏の終わりに、あらためて「映像」に関わるものとして「映像」について考え、新解釈を探る事にした。
SIGGRAPH2011 SIGGRAPH2011
CGの祭典「SIGGRAPH」が8月7日から11日の5日間、カナダ・バンクーバーで開催された。受賞作品を映像と共に紹介する。
Stereoscopic 3D 第4章 Stereoscopic 3D 第4章
1年ぶりの3D特集。この間に3Dを取り巻く状況はどのように変化しただろうか?押さえておくべき3Dの基礎を考えつつ、2011年の3Dを再考してみる。
Movie Maker's GIG in Hollywood Movie Maker's GIG in Hollywood
セッション(GIG)感覚で映画が創れる時代の潮流をハリウッドではどう捉えているのか?CineGearExpoの情報もお伝えしつつ、次世代のプロ映像制作者像を追い求める。
Master Mind Camera 2011 Master Mind Camera 2011
今必要な理想のカメラを追求しつつ、カメラを使う人と機能から紐解いていく。
NAB2011 NAB2011 スペシャルレポート
4月11日から米ラスベガスにて開催された世界最大の放送機器展「2011 NAB Show(NAB2011)」。毎年恒例のレポート特集を現地よりお届け。
USTREAM最終案内+ USTREAM最終案内+
奇しくも、今回の震災でのライブメディアが活躍する事になった。3.11以後USTREAMをはじめとするライブメディア/ソーシャルメディアのあり方を今一度取り上げてみたい。
ファイルベース新時代 ファイルベース新時代
ファイルベースの進化は、VTRの進歩とともに現在に繋がってくる。1950年代に開発されたVTRを起点にその流れを簡単にさかのぼってみよう。
Into the Lens
『CP+』における取材を通じて、2011年のプロ映像界におけるレンズの世界最新事情や表現者たちの最新機材での挑戦を追う。
CES 2011レポート
世界最大級の家電見本市CES2011の現場から、PRONEWSならではの切り口でレポートをお届け。
PRONEWS AWARD 2010
2010年を振り返りつつ、2011年へ向けて各分野の商品・サービスを絞り込み総括する。
Inter BEE 2010スペシャルレポート
千葉幕張メッセにて開催されたInterBEE2010のレポート記事や動画を掲載。
Inter BEE 2010の歩き方
目的に合わせたInterBEE2010の歩き方を紹介する。
映像品質検証 -VQC-
デジタル映像全盛の今、問われる映像品質検証の現状とは?
DSMC/DSLR 2010 #2
現場感覚におけるDSLRの現状の捉えられ方を取材してみた。
Stereoscopic 3D 第3章
ステレオスコピック3Dの具体的な制作方法を考えていく。
Ustream最終案内
Ustreamの世界の可能性を実際に現場で活躍する人々から探ってみた。
Digital Cinematography 2010
Cine Gear EXPOの様子などから、これからのハリウッド映像制作の方向性を紹介する。
Stereoscopic 3D 第2章
関心が高まっているステレオスコピック3Dコンテンツの制作について整理していく。
DSMC・DSLR 2010
CP+のレポートを中心に、2010年のDSMC/DSLRの動向について考察していく。
ファイルベース収録カメラ最新案内
ファイルベース収録カメラを選択するための基準や基礎知識等を、レビューを交えて考察する。
Transcode
ファイルベース・ワークフローの普及と共によく目にするようになったトランスコードについて整理する。
映像新時代2010
2010年の映像制作の潮流を様々な方面から予想していく。
稲田出のトレンド100選
InterBEE2009で見た2010年注目100アイテムを紹介。
PRONEWS AWARD 2009
2009年を振り返りつつ、2010年へ向けて各分野の商品・サービスを絞り込み総括する。
Inter BEE 2009スペシャルレポート
千葉幕張メッセにて開催されたInterBEE2009のレポート記事やブース動画を掲載。
Inter BEE 2009の歩き方
目的に合わせたInterBEE2009の歩き方を紹介する。
最新映像制作ワークフロー VFX 2009
最新映像制作ワークフローの中から、制作効率を改善していくヒントを探す。
オンボードライト特集 Light House
新時代を予感させるLEDを中心にオンボードライトを解剖する。
立体視映像特集 Stereoscopic 3D
再び脚光を浴び始めているステレオスコピック3D制作に焦点を当てる。
REDワークフロー特集 RED flow Now
RED ONEの最新ワークフローを考える。
4Kデジタルシネマ特集 4K Ready!
RED ONEの登場で一気に注目されつつある4K映像とは?
デジタルサイネージ特集デジタルサイネージ2009
急速な広がりを見せるサイネージメディアを紹介する。
ワークフローの鍵を握るMXF
MXFファイルを活用する現場を取材し、制作ワークフロー全体に広がるMXFを紹介する。
フルデジタル制作移行、その課題と展望
フルデジタル制作環境に向けて乗り越えなければならない課題と、その先の可能性を紹介する。
2008年総括:これからの映像業界
2008年の売れ筋を見ながら、人気機材の動向を振り返ってみる。
次世代収録環境へのアプローチ
2008年のカメラ環境を踏まえ、次世代環境に必要なものを考える。

HOME  >  SPECIAL  >  [SIGGRAPH2009]Vol.07 プロダクションの技術公開も含め、CG開発環境が進化