[VFX 2009]02:MV/フィルム撮影、ファイルベース収録を作品で使い分ける
2009-09-30 掲載
MVやTV番組のタイトルパック、STATION IDなどを演出するディレクターの中には、自ら CGや合成、モーション・グラフィックス、編集を手がける人材が多くいる。現在活躍中の映像ディレクター東弘明氏もその1人だが、マッチムーブソフトウェアboujouを使用したワークスタイルが話題を呼び、他のディレクターとは一線を画した個性的な絵作りで異彩を放っている。
もともと、「撮影した実写素材を自分の思い描いた画に近づける補間役として、自然とVFXを使用するようになった」という東氏。人物素材とCGの背景を単に合成しただけの作品は少なく、最近は、ロケで撮影された実写データの良さを損なわずに、自然かつ高い精度で合成素材へ馴染ませていく手法を得意としている。合成後の完成図を描いた上で、カメラワークや照明、セットの背景、質感などを緻密に計算した撮影設計こそが作品の重要な肝を握っている。
今回紹介する2つの作品はいずれもSPACE SHOWER TVの開局20周年を記念するSTATION IDだ。『持田かおりとチェブラーシカ』は芝生の上でチェブラーシカとピクニックをする持田かおりがアカペラで歌いだす、ガーリーな世界観の作品だ。人とチェブラーシカが競演するのは、なんと今回が初の試みとなる。『Goddess of Music』は、マンションの一室で眠る女の子のもとに音楽の神が降臨! 部屋中にある様々な物体が揺れたり動いたり浮いたりする、大騒動が巻き起こる。
それでは、VFXならではの特性がふんだんに活かされた両作品のワークフローを紹介していこう。
16mmフィルムの温かみを生かした作品作り
| SPACE SHOWER TV開局20周年記念STATION ID『持田かおりとチェブラーシカ』(東氏のWebサイトより) |
『持田かおりとチェブラーシカ』は、すでに決まっていた「チェブラーシカ」「持田かおり」「公園でピクニック」という3つのキーワードをいかに面白く切り取るかという点が企画の出発点だった。「CGキャラクターを使用した合成の醍醐味は、もっともらしくキャラクターを実存させるための演出にある」という東氏は、カメラの前にはいないはずのキャラが現実の人やものと交わることを想定しながらコンテを作成。デジタルでクリアな画作りよりも、エッジの柔らかい、温かみのある画にする意図から、撮影機材は16mmフィルムをチョイスした。
撮影は、東京・武蔵野を流れる野川のほとりにある野川公園で、朝の10時よりコンテ通りに日中に撮影した。スケジュール通りの順撮りは、スムーズな進行はもちろんのこと、展開や状況を事前に十分把握したアーティストから最良の表情を引き出せるところが最大のメリット。現場では、チェブラーシカの実物大のぬいぐるみを使用し、持田氏の視点の方向や高さを調整していったが、順撮りの狙いが効き、持ち出しの優しい表情とリラックスした歌声の収録に成功。チェブラーシカの自然なアクションの演出を考慮した上でのカメラワークやタイミングなど、合成素材との整合性を保ちながら撮影していく繊細な作業も功を奏し、2人の親密な関係さえ感じさせる映像に仕上がった。
公園の芝生にはレールがひけなかったため、カメラマンがステディカムを持ってタイヤドリーに乗るという荒技も使ったという。
実際の合成・CG制作では、まず16mmフィルムからテレシネした実写素材を、2d3製マッチムーブソフトウェアboujouを使用してカメラのモーションを3ds MAX上に生成した。ピクニック・グッズが倒れるシーンでは、動きのタイミングに合わせてチェブラーシカの歩幅を決め、同時に生成したカメラフレーム内で魅力的に見える動きを演出していく。この部分の制作で、東氏が「その腕に助けられました」と信頼を寄せたのが、CGスーパーバイザーの武田貴之氏(現finitto)だ。武田氏が、チェブラーシカをCG化するにあたり、クライアントからは毛の質感や表情、動き方など、繊細な要求が相次いだという。最終的に、16mmフィルムルックとなじませるべくCGにもフィルムノイズを載せ、合成作品でありながらも暖かいトーンのある作品へと演出した。
[ Category : SPECIAL ]
[ DATE : 2009-09-30 ]
[ TAG : After Effects boujou VFX 2009 ]
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