2009年の三脚のトレンドは?

Vinten、sachtler、国内では平和精機工業がNABを皮切りに新たなラインアップを発表した。三脚はカメラの進化とともに変化を遂げるものだが、今回はそれだけではないような気がする。というのも中国などからの新興勢力の台頭が顕著になっているのだ。すでにNABなどでは、いくつかのメーカーが出展をしており、価格の安さからそれなりのシェアをあげつつある。今回のInterBEEでもかなり大きなブースを出したところもあり、NABだけでなく品質にうるさいといわれる日本に本格進出してきたということは、それだけの自信があるというか勝算があるからといえるだろう。

ただ、こうした新興勢力の製品を見るとどこかで見たようなデザインであったりすることが多く。そうした現状を先陣のメーカーが黙認しているということは、ほとんどの特許が切れており、抑え切れない現状がそこにあるのだろう。ちなみに数年前にステディカムの特許が切れてから様々な後発メーカーが同様な製品を次々と開発し、現在もその状況は続いていることを見てもお分かりいただけるだろう。

さて、先陣メーカーはこうした後発のメーカーと差別化を図るためにも新たなラインナップの投入という戦略に出てきたという側面も見逃せない。三脚は、人間が直接手を触れて操作する部分であり、業務用となると故障や修理などアフターサービスなど、実際の運用上無視できないファクターがあり、Vinten、sachtler、平和精機工業などはすでに長年の実績と技術の蓄積があり、そういった面でも安心感がある。

Vintenは、LFドラッグ方式のVision3、6、8、11の4機種を約10年ぶりにモデルチェンジしたほか、新たに Vision AS(AS= Advanced system)シリーズとして、Vision 3AS、Vision 5AS、Vision 8AS、Vision 10ASの4機種を発表した。一方sachtlerは、FSB8、DV10SBおよびシネ7+7HDの3機種を発表している。これに伴い75mm径フルーイドヘッドDV6SB、DV8SBおよびDV8/100SBの生産を終了とした。MILLERは、フィルムカメラ時代から16mmカメラ用の小型な三脚を中心に開発していたが、より重量級のカメラに対応したarrow70や小型ビデオカメラ用にCompass15/20を発表。平和精機工業は、操作フィーリングや耐寒性に大きな影響を及ぼすグリースから新たに開発したRSシリーズで迎え撃つ。まだ、RS-450とRS350の2機種しかなくシリーズというには少々寂しい気もするが、来年にも引き続きRSシリーズの新製品を発表する用意があるなど長期戦の構えである。

txt:稲田出 構成:編集部

PRONEWS AWARD 2009三脚部門ノミネート製品

  • MILLER Compassシリーズ(Compass20)
  • Sachtler FSBシリーズ(FSB8)
  • Vinten Vision AS シリーズ(Vision10AS)
  • 平和精機工業RSシリーズ(Libec RS-350)

ノミネート基準と講評

「小型ビデオカメラ用の三脚は以前から各社が発売していて、すでに出揃った感があったけどまたぞろでてきたね」

「以前は、小型ビデオカメラってサブカメラ的な位置付けだったけど本格的な制作にも使われるようになってきたから、それに伴って三脚も性能的にも機能的にも本格的な製品が求められてきたんじゃないかな」

「そうだね、カウンターバランスとか以前の製品には装備されていなかったり、装備されていても2段くらいしかなかったりしたね」

「小型ビデオカメラって標準カメラより価格が安いでしょ、三脚もそれにあわせた価格設定を考えると仕方なかった面もあるよね。それにメインに使うカメラじゃなかったから、三脚もそれなりでよかったって考えもあったと思うよ」

「新シリーズのラインナップが各社から出てきたのは、小型ビデオカメラって質量が軽いけど、だからといって今までの三脚の耐過重量を減らして簡単にローコスト化に持っていけないという事情もありそう」

「だから新たに設計し直してローコスト化したってわけかな。それはそれで、コストが掛かりそうな気もするけど」

「Sachtler 、VintenだけじゃなくってManfrottoやGitzoもVitec Groupになってるよね。NABなんか1ブースで共同出展になってる。設計Vinten、製造Manfrottoって噂を聞いたことがあるけどグループ内の再編成でコストダウンを図ったのかもしれない。修理なんかも一本化して」

「それってある意味お買い得って気もするけど、製造が別の国になったりして品質面で問題ないのかな」

「それはないと思うけど、平和精機なんかは以前からずっと国内生産してるよね。日本で使うということを考えたら製造も修理も国内ってことで、安心できるかもしれない」

「いずれにしても小型ビデオカメラの性能や機能が向上したことで、三脚もそれにともなって進化したってことかな。重量級のカメラに対応した製品もいくつかでできたけど、これはどういう事かな。このレンジの製品って今までもあったでしょう」

「これはRED ONEの影響でしょう。シネ用の三脚でこのクラスのカメラに対応する製品が少なかったからだと思う」

「それは重量的にも価格的にもってことだよね」

「小型ビデオカメラと全く同じ構図というわけだ」

「三脚って電気部品で構成された製品と違って鉄の塊みたいなものでしょ。簡単に量産したりコストダウンって難しいと思うけど、どうやっているんだろう」

「さっきも話にでたけどVitec Groupみたいに、得意な部分を活かして再編成する。製造や設計、資材調達とかワールドワイドで考えられるからすごいよね」

「それはそれで、ロスもあるような気もするけど、平和精機はどうしてるんだろうね」

「主力製品であるLibecシリーズを順次新しいシリーズに置き換える戦略だね。製造コストを徹底的に見直してると思う」

「それだけじゃなくて、販売台数も今まで以上に見込んでいると思うよ。あの機能性能であの価格だったらかなりいけるとおもうね」

PRONRES AWARD 2009三脚部門受賞製品発表

三脚部門
ゴールド賞
RSシリーズ(Libec RS-350)

平和精機工業

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外観デザインが一新されただけでなく、新設計のトルクシステムを採用することで、パン・ティルトともにフリーおよび3段階の切り替を実現したほか、無段階カウンターバランスにより、重量バランスを細かく設定できるようになっている。また、操作フィーリングや耐寒性能に大きな影響を及ぼすグリースも今回の新シリーズ用に新たなものを採用している。これにより、パン操作の初動の動き出しやストップ時の画像の戻り、いわゆるバックラッシュを大幅に低減ししている。こうした妥協のない機能性能を実現しながらRS-450が19万円台(RS-450:194,250円、RS-450M:199,500円)、RS-350が15万円台(RS-350:157,500円)という極めてコストパフォーマンスの高い製品となっている。

三脚部門
シルバー賞
Vision AS シリーズ(Vision10AS)

Vinten

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Vision 10ASは、ワンタッチで着脱可能なスライドプレート、サイドロードシステムを採用することで、バッテリーやビューファインダー、液晶プロンプターなどの交換が頻繁に行われる、ニュース取材やプロの放送番組制作をするのに最適なヘッド。また、LED照明の水準器やフリクションの最適化を行うことで、安定したカメラワークを可能としているほか、カウンターバランスの調節は、従来と配置が異なり、指掛かりの良い形状とすることで、調節がしやすくなっている。Vision AS(AS= Advanced system)シリーズには、Vision 3AS、Vision 5AS、Vision 8AS、Vision 10ASの4機種があり、いずれも小型ビデオカメラに最適な仕様となっている。

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