[映像新時代2010]03: 普及フェーズに入ったステレオスコピック3D
2010-01-20 掲載
またやってきたステレオスコピック3D
2009年春、映像業界関係者は「またステレオかよ」と思ったに違いない。10年に1度くらい、何度も繰り返されてきた3D立体視ブーム。「またかよ」と思わせつつ、そのブームは長続きすることなく波が引いていった。今回もきっとそうなるだろうと見ていた関係者も少なくないだろう。しかし、今回のステレオスコピック3D(S3D)の波は、これまでとはちょっと異なり、着実に稔りの時期を迎えそうだ。というのも、今回はかつてない追い風が吹いているからだ。その追い風とは、
- ファイルベース制作移行段階であること
- デジタル上映移行期であること
- ホーム3Dシアター環境の登場
──というものだ。
RED ONEの登場は、これまで限られた映画製作者が使うことしかできなかった35mm ARRIフィルム撮影に迫る画質を、インディペンデントフィルム関係者が4K解像度を手にする機会を提供した。ローバジェット製作で、16mmフィルムやHDカメラレコーダーで撮るしかなかった分野に、4K解像度が選択肢として加わったことを意味した。とはいえ、そんなにすぐに4K解像度のタイトルが増えるわけではないかった。4K制作に使用可能なマシン環境は、誰もが気軽に行えるほど敷居は低くない。RED ONEを使用するメリットは、35mmシネレンズを活用して、RED ONEのもう1つの特徴であるバリアブルフレームレート収録と2K収録を活用したHDタイトルの画質向上の方が大きかったとも言える。
RED ONEの登場とともに評価が見直されたものに、プログレッシブ収録がある。インタレ-スのテレビ番組の制作に、プログレッシブの生々しさやパラパラ感は必要ないと思われてきたが、液晶ディスプレイやWeb動画にマッチしやすいプログレッシブ映像ということもあり、マスター素材としてプログレッシブを利用するケースも増えてきた。2K解像度の4:4:4映像を取り扱うために必要な伝送規格として登場したのが3Gbps SDI環境だ。3Gbps SDI環境であれば、1080/60pも問題なく扱える。これがS3D制作にとっても追い風となった。1080/60iを使用して収録するならば、左右両目の映像を取り扱えることになるからだ。ファイルベース制作移行のための既存制作環境が、S3D制作にもマッチすることになったのである。
S3Dの普及は、タイトルホルダーやシアターにとってもメリットがあった。タイトルホルダーにとっては、試写会直後に再撮による海賊版が流通してしまうということが回避できるということだ。シアターにとっても、HDプロジェクターを2台スタックに変更することで低導入予算・低運用コストでS3D上映に対応でき、通常上映よりも付加価値を付けた料金設定ができるというわけだ。もちろん、ソニーのSXRDプロジェクター+デジタルシネマアダプターの組み合わせのように、1台で4K上映とS3Dに対応するという方法もある。デジタル上映環境構築に弾みがつき始めている。
S3D制作への関心は、シアターだけが高まっているわけではない。Inter BEE 2009ではソニーがS3Dライブスイッチングソリューションもデモを行ったほか、SIGGRAPH ASIA 2009でナックイメージングテクノロジーがS3Dバーチャルセットをデモするなど、映画、ライブ、番組のS3D収録環境が整った。まさにS3Dフルデジタル制作によるS3Dが本格普及の黎明期を迎えたというのが、2009年であったといえるだろう。
ホーム3Dシアター環境がついに登場
さて、2010年はどうか──。いよいよS3D制作元年を迎えることになるのではないか。Blu-ray Disc Assciation(BDA、米カリフォルニア州)が2009年も終わりに近づいた12月17日(現地時間)に、Blu-ray 3Dの仕様を最終決定した。H.264 AVCコーデックを拡大したMVC(Multiview Video Codec)を策定。左右の映像に1080pを使用しつつ、2Dコンテンツの50%にオーバーヘッドで圧縮する方法を採用している。既存のBlu-ray Discプレーヤーでも再生できるような後方互換性をもたせているため、1枚のディスクでS3Dにも従来の2Dにも両方対応できることがポイントだ。家電各社はCEATEC JAPAN 2009で各社が家庭向け3D視聴環境を提案していたが、この最終決定をもって、今春から製品化への道を進み出す。
1月7~10日に行われた米ラスベガスで開催された2010 International CESでは、数々のS3D対応製品が発表されていたようだ。どうやらS3Dは、制作環境が充実する前に、コンシューマ製品の第1世代が出揃ってしまう事態になりそうだ。S3D対応のBlu-ray録再機やハイビジョンテレビが登場したとしても、S3Dコンテンツが提供されないのでは絵に描いた餅になってしまう。S3D制作環境の充実、制作ワークフローの確立も急務となってきた。
[ Category : SPECIAL ]
[ DATE : 2010-01-20 ]
[ TAG : Stereoscopic 3D(3D映像) 映像新時代2010 ]
この記事に関連する記事一覧
|
|
[Stereoscopic 3D 第3章]Vol.03 3D作品の納品・上映について(フィニッシュ編)株式会社マリモレコーズ 江夏由洋(FILTER KYODAI) 3D最大の壁「上映」とそれ超えるための3つのハードル 3DA1で撮影した左右の映像を編集している様子。左右映像と音声 .... 続きを読む |
|
|
[Stereoscopic 3D 第3章]Vol.02 今3D撮影素材を編集するには?CineForm Neo3D(編集編)株式会社マリモレコーズ 江夏由洋(FILTER KYODAI) 編集時にはCineForm Neo3Dを利用 Ki ProストレージモジュールSSD 250GB。Firewire8 .... 続きを読む |
|
|
[Stereoscopic 3D 第3章]Vol.01 3DカメラAG-3DA1とKiProで実現する3D撮影の押さえどころ(撮影編)株式会社マリモレコーズ 江夏由洋(FILTER KYODAI) 史上初、業務用二眼カメラの登場 3D撮影の大きな話題のPanasonic AG-3DA1。誰でも「簡単に」3D映像 .... 続きを読む |
|
|
[Stereoscopic 3D 第3章]Vol.00 今ここにある3D制作のすべて作る楽しみを知る時が来た! 2010年は言うまでもなく3D元年である。劇場映画に始まりお茶の間までに3Dがやってきた。これまでの3D映像が「見て楽しむもの」から「作って楽しむもの」 .... 続きを読む |
|
|
[Stereoscopic 3D 第2章]06: 画像処理の延長線で生まれた朋栄のS3D関連製品「当社では画像処理関連の技術を持っているのですが、ステレオスコピック3D(S3D)関連の取り組みは、もともとは画像処理の延長線上の機能として生まれてきたんです」 こう話すのは、朋栄 .... 続きを読む |
|
|
[Stereoscopic 3D 第2章]05: 良質のコンテンツを増やせ!ソニーが取り組むS3Dソニーはこれまで、4Kデジタルシネマプロジェクターと、RealDとの協業で3Dプロジェクションレンズユニットなど、映画市場における上映環境の充実を図ってきた。昨年末のInter B .... 続きを読む |
|
|
[Stereoscopic 3D 第2章]04: 悩む前にやってみるS3Dストップモーション「ステレオスコピック3D(S3D)活用事例取材の記事もいいけど、初めてS3Dをやってみようという人が実際にどんなことに直面するのか、とにかく何かを作ってみるという実験企画記事も欲し .... 続きを読む |
|
|
[Stereoscopic 3D 第2章]03: フジテレビがアリス東京ドーム公演を3D放送フジテレビNEXTが、アリスの東京ドーム公演をステレオスコピック3D(S3D)収録し、4月23日19時から「3D アリス~東京ドーム『明日への讃歌』」として3D放送した。この番組が .... 続きを読む |
|
|
[Stereoscopic 3D 第2章]02: S3Dの基礎知識2~3Dリグの使い分けステレオスコピック3D(S3D)撮影をするためには、2台のカメラをセットする必要があるが、その方法や機材にはいくつかの種類がある。こうした撮影システムは、現場でどのように運用され、 .... 続きを読む |
|
|
[Stereoscopic 3D 第2章]01: S3Dの基礎知識1~立体視の仕組み(1)立体視の仕組み 四角いキューブを手前から奥に3個並べて見ると、左目と右目では見え方が異なる 現在制作されているステレオスコピック3D(S3D)コンテンツは、右目と左目の位置が .... 続きを読む |
- [Stereoscopic 3D 第2章]00: 3つの重要ポイント~柔軟、短時間の設置、S3D演出家の登場 (2010-05-19)
- [映像新時代2010]04: 活用範囲が拡大するデジタルサイネージ (2010-01-20)
- [映像新時代2010]02: 重要性を増すテープレス同時収録 (2010-01-20)
- [映像新時代2010]01: ノンドロップフレームが新技術の扉を開く (2010-01-20)
USTREAM生放送番組
|
PRONEWS Lounge テーマに沿ったゲストを招き、対談・ディスカッションなどを特設会場より生放送。過去放送分も視聴できます。 |
特集記事
|
CES 2012レポート 世界最大級の家電見本市CES2012の現場から、PRONEWSならではの切り口でレポートをお届け。 |
|
|
PRONEWS AWARD 2011 2011年を振り返りつつ、2012年へ向けて各分野の商品・サービスを絞り込み総括する。 |
|
|
Inter BEE 2011スペシャルレポート 千葉幕張メッセにて開催されるInterBEE2011。PRONEWSでは今年もInterBEEのオフィシャルメディアパートナーとして、様々なコンテンツをお届け! |
|
|
Inter BEE 2011の歩き方 最小限の力で最大の効果が得られるInterBEE2011のおすすめの歩き方を、目的に合わせたコースごとに紹介する。 |
|
|
CEATEC JAPAN 2011 10月4日(火)から10月8日(土)まで幕張メッセにて開催される最先端IT・エレクトロニクス総合展 "CEATEC JAPAN 2011"をプロの視点からレポートする。 |
|
|
Movie Maker's GIG in Europe オランダ・アムステルダムで開催されたIBC2011レポートを中心に、新たに湧き起こって来た映像技術における次世代の新テーマなど、現場から伝わって来たその温度感をレポートする。 |
|
|
PRONEWS課題図書 2011年の夏の終わりに、あらためて「映像」に関わるものとして「映像」について考え、新解釈を探る事にした。 |
|
|
SIGGRAPH2011 CGの祭典「SIGGRAPH」が8月7日から11日の5日間、カナダ・バンクーバーで開催された。受賞作品を映像と共に紹介する。 |
|
|
Stereoscopic 3D 第4章 1年ぶりの3D特集。この間に3Dを取り巻く状況はどのように変化しただろうか?押さえておくべき3Dの基礎を考えつつ、2011年の3Dを再考してみる。 |
|
|
Movie Maker's GIG in Hollywood セッション(GIG)感覚で映画が創れる時代の潮流をハリウッドではどう捉えているのか?CineGearExpoの情報もお伝えしつつ、次世代のプロ映像制作者像を追い求める。 |
|
|
Master Mind Camera 2011 今必要な理想のカメラを追求しつつ、カメラを使う人と機能から紐解いていく。 |
|
|
NAB2011 スペシャルレポート 4月11日から米ラスベガスにて開催された世界最大の放送機器展「2011 NAB Show(NAB2011)」。毎年恒例のレポート特集を現地よりお届け。 |
|
|
USTREAM最終案内+ 奇しくも、今回の震災でのライブメディアが活躍する事になった。3.11以後USTREAMをはじめとするライブメディア/ソーシャルメディアのあり方を今一度取り上げてみたい。 |
|
|
ファイルベース新時代 ファイルベースの進化は、VTRの進歩とともに現在に繋がってくる。1950年代に開発されたVTRを起点にその流れを簡単にさかのぼってみよう。 |
|
|
Into the Lens 『CP+』における取材を通じて、2011年のプロ映像界におけるレンズの世界最新事情や表現者たちの最新機材での挑戦を追う。 |
|
|
CES 2011レポート 世界最大級の家電見本市CES2011の現場から、PRONEWSならではの切り口でレポートをお届け。 |
|
PRONEWS AWARD 2010 2010年を振り返りつつ、2011年へ向けて各分野の商品・サービスを絞り込み総括する。 |
|
|
Inter BEE 2010スペシャルレポート 千葉幕張メッセにて開催されたInterBEE2010のレポート記事や動画を掲載。 |
|
|
Inter BEE 2010の歩き方 目的に合わせたInterBEE2010の歩き方を紹介する。 |
|
|
映像品質検証 -VQC- デジタル映像全盛の今、問われる映像品質検証の現状とは? |
|
|
DSMC/DSLR 2010 #2 現場感覚におけるDSLRの現状の捉えられ方を取材してみた。 |
|
|
Stereoscopic 3D 第3章 ステレオスコピック3Dの具体的な制作方法を考えていく。 |
|
|
Ustream最終案内 Ustreamの世界の可能性を実際に現場で活躍する人々から探ってみた。 |
|
|
Digital Cinematography 2010 Cine Gear EXPOの様子などから、これからのハリウッド映像制作の方向性を紹介する。 |
|
|
Stereoscopic 3D 第2章 関心が高まっているステレオスコピック3Dコンテンツの制作について整理していく。 |
|
|
DSMC・DSLR 2010 CP+のレポートを中心に、2010年のDSMC/DSLRの動向について考察していく。 |
|
|
ファイルベース収録カメラ最新案内 ファイルベース収録カメラを選択するための基準や基礎知識等を、レビューを交えて考察する。 |
|
|
Transcode ファイルベース・ワークフローの普及と共によく目にするようになったトランスコードについて整理する。 |
|
|
映像新時代2010 2010年の映像制作の潮流を様々な方面から予想していく。 |
|
|
稲田出のトレンド100選 InterBEE2009で見た2010年注目100アイテムを紹介。 |
|
|
PRONEWS AWARD 2009 2009年を振り返りつつ、2010年へ向けて各分野の商品・サービスを絞り込み総括する。 |
|
|
Inter BEE 2009スペシャルレポート 千葉幕張メッセにて開催されたInterBEE2009のレポート記事やブース動画を掲載。 |
|
|
Inter BEE 2009の歩き方 目的に合わせたInterBEE2009の歩き方を紹介する。 |
|
|
最新映像制作ワークフロー VFX 2009 最新映像制作ワークフローの中から、制作効率を改善していくヒントを探す。 |
|
|
オンボードライト特集 Light House 新時代を予感させるLEDを中心にオンボードライトを解剖する。 |
|
|
立体視映像特集 Stereoscopic 3D 再び脚光を浴び始めているステレオスコピック3D制作に焦点を当てる。 |
|
|
REDワークフロー特集 RED flow Now RED ONEの最新ワークフローを考える。 |
|
|
4Kデジタルシネマ特集 4K Ready! RED ONEの登場で一気に注目されつつある4K映像とは? | |
|
デジタルサイネージ特集デジタルサイネージ2009 急速な広がりを見せるサイネージメディアを紹介する。 |
|
|
ワークフローの鍵を握るMXF MXFファイルを活用する現場を取材し、制作ワークフロー全体に広がるMXFを紹介する。 |
|
|
フルデジタル制作移行、その課題と展望 フルデジタル制作環境に向けて乗り越えなければならない課題と、その先の可能性を紹介する。 |
|
|
2008年総括:これからの映像業界 2008年の売れ筋を見ながら、人気機材の動向を振り返ってみる。 |
|
|
次世代収録環境へのアプローチ 2008年のカメラ環境を踏まえ、次世代環境に必要なものを考える。 |
展示会レポート
- CES 2012
- Inter BEE 2011
- CEATEC JAPAN 2011
- IBC2011
- SIGGRAPH2011
- デジタルサイネージジャパン2011
- IMC TOKYO 2011
- Cine Gear EXPO 2011
- NAB2011
- CES 2011
- Inter BEE 2010
- CEATEC JAPAN 2010
- IBC2010
- CEDEC2010
- SIGGRAPH2010
- ケーブルテレビショー2010
- IMC TOKYO 2010
- デジタルサイネージジャパン2010
- Cine Gear EXPO 2010
- NAB2010
- Inter BEE 2009
- CEATEC JAPAN 2009
- CEDEC2009
- SIGGRAPH2009
- ケーブルテレビショー2009
- デジタルサイネージジャパン2009
- IMC TOKYO 2009
- Cine Gear EXPO 2009
- NAB2009
- Inter BEE 2008
- CEATEC JAPAN 2008
- SIGGRAPH2008
- ケーブルテレビショー2008
- IMC TOKYO 2008
- NAB2008
- PIE2008
- Inter BEE 2007
- CEATEC JAPAN 2007
- BroadcastAsia2007
- ケーブルテレビショー2007
- NAB 2007
- Inter BEE 2006
- CEATEC JAPAN 2006
- SIGGRAPH2006
- NAB2006
